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『おかえりモネ』第7回 バブルを生きた父は娘がわからない

 モネは森林組合の試験を受けています。モネは自分は賢いというアピールをする性格ではありません。むしろおずおずとしていて、全問正解と聞いて驚くほど。

若者目線のグッズを作れ!

 サヤカは正式採用と言い切り、グッズを作れと言い出します。嫌だな、なんだこの生々しさは! 東北あるあるだべ。かつて観光地の土産物といえば、地名ロゴだけ変えて同じ工場で作っているようなものが定番でした。今はご当地ハイチュウとか、ポテチとか。宮城なら伊達政宗グッズは定番だべな。んだけんど、やっぱり個性も欲しいし。ネットで話題になって欲しいし。
 登米のような自然豊かな観光地って、ヨーロピアンリゾートも目指しますし。まあ、そこは若者の感性で何かして欲しいということでしょう。

平成のウザい父登場

 が、ここで!
「困ります!」
 父・耕治登場。西島秀俊さんといい、内野聖陽さんといい、もともと美形なだけでなくて、なんかプラスアルファが滲んじゃって。でも、夏木マリさんが伊達政宗じみたかっこよさがあるのに対し、本作の男性はちょっと情けないところがありますよね。あえて崩せるところが強いなと。
 父が職場に来たことに対し、モネはすっと顔が曇る。事前告知したら断るからいきなり来そうです。清原果耶さんの生々しい嫌がる顔がいいなぁ。思えば朝ドラはお父さん層を甘やかしすぎだったかもしれない。『おちょやん』テルヲのように全力で反発したくなる父ではなく、「なんかこう、ウザい」となる。そんな現代の父です。
 そんな娘の気持ちを一番わかっているという熱苦しい主張に、サヤカはきっぱりと愚かしいと言い切ります。強えドラマだ。しかも泊まっていくつもりだと見抜くサヤカです。
 なんという等身大のおっさんだ。

 父と娘は、やりたいことを問いかけます。父としては娘が音楽をどう思っているか知りたい。この口ぶりからすると、父の勧めや思いもあって娘が音楽を始めたんでしょうね。それをやめられちゃって悲しい。そういうキモうざい父の執着を感じる。妹はそういうノリを突っぱねているのでしょう。
 娘は知りたい。父が漁師にならなかった理由を。父はバブル最終盤で就職できました。『半分、青い。』の鈴愛たちより少し上ですかね。それで仙台の大学を出て、もう漁師なんかやってられないと思った。
 バブルの時代でも下り坂。モテない。ダサい。危ない。3Kを嫌う当時の若者らしい価値観です。父はそのころの思いがあるけど、娘はピンとこない。
 でも、祖父母の時代は漁師モテモテだったとモネは指摘します。

平成の漁師はかっこいいよ

 だって、下の娘は漁師の亮にときめいていますよ。いい感じ、としか言いようがない。でもふわふわして、もどかしいようで、自分たちすら気持ちがはっきりしない。そういう時間そのものを大事にしたいような。控えめで淡くてとてもよい時間がある。
「りょーちん、さん」
「りょーちんでいいよ」
 そんなやりとりだけでもグッとくる。
 しかも、亮はいい子だ。ワイルドな漁師でもなく、ちょっと船に乗りたくないとさらっと言えてしまう。
 すごいドラマだ……親子世代の細かい断絶を丁寧に描いてゆく。
 それにモネたち世代からすれば、むしろ漁師が一周回ってカッコいいと伝わってくるんですよね。地元で地道に生きていくことに意義を見出している、そんな堅実な若者の姿が見えてきます。
 NHKもわかっちゃいるんでしょう。本物の若者世代を狙わないと先がないと。

 一方で、耕治は漁師は危なかった、友達の父も死んだとかなんとか、ウダウダ言っている。そして音楽のことをまた聞いてくる。モネは高校音楽科落ちた時点で気持ちが離れていると言い出す。父としては音楽をフックに取り戻したかったんですかね。

 好きなことを見出したい、でも見出せない。そんな娘と、銀行員になった父。世代感ギャップがそこにはあるのでした。
 それとうっすらとある、東北人がなんとな〜くそれこそ江戸時代くらいから感じている、もやもやした仙台人らしさと言いますか。仙台出身の菅原文太さんご自身がそこをうまくまとめていますので、興味あれば彼の発言でも参照してくださいね。今更ドンゴリ、とまでは言わねけんじょも。

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