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秋の香りと、哀悼

あっというまに10月到来。正直なところ、お盆を過ぎたあたりからスーパーの一角にハロウィンパッケージのお菓子がずらりと並びはじめていたから、9月をすっ飛ばしてとっくに10月になっていた気分ではある。しかし、今年も残り3ヶ月をきった、と考えると恐ろしい。

9月をすっ飛ばした気分だったのには、もうひとつ理由がある。

お彼岸を過ぎてようやく暑さが和らいだ頃、祖母が亡くなった。
父方母方ともに健在な祖父母のなかでも、いちばん長生きするだろうな、と思っていた祖母だった。
先月のはじめに、体調を崩した、自力で起き上がることが難しい、と聞いていた。だけどこれまでに何度かそういうことがあっても、少し休んだら回復してまた元気! っていう流れがあったから、きっとよくなるだろう、と思っていた。たぶん、同居している家族もそうだったと思う。
思いのほか症状が重くて、高齢ゆえできることも限られていて。あまりにも早すぎる展開に追いつかないうちに、お別れをすることになってしまった。

いろんなことを終えて、ようやく少しだけ落ち着いたような気がする。だけどまだ、実感がわかない。次に帰省した時も、「あれ? ばあちゃんは? あ、自分の部屋にいるの?」って聞いてしまいそう。そのくらい、あの家に祖母がいないのが考えられない。同じことを母も言っていた。
それでもいつか、慣れていってしまうのだろうな、とも思う。

帰りがけ、実家にある大きな金木犀が咲き始めていたことに気がついた。季節が夏から秋へと、確実に進んでいたことにも気がついた。
金木犀の香りはどこか懐かしく、タイムカプセルのようにいろんな出来事を思い起こさせる。これから先は、祖母とのお別れも思い出すのか、と思ったら、一気に寂しくなった。

寂しいけれど、わたしはわたしを生きていくしかない。


構成だけ考えて、手つかずになっていた物語がある。
それは、だいぶ前にはなるのだけれど、祖母から言われたことばにショックを受けたことがきっかけで生まれたストーリーだった。その時は、思いのほか心に深く突き刺さった棘を昇華したくて考えただけだった。
それを、哀悼の気持ちも込めて、書き上げようと思った。今ならきっと、あの時の祖母の気持ちも理解できる。言いたくて言ったことばではなかったはずだ。物語の中でだけでも、わたしの気持ちを伝えよう。そんなふうに言われて悲しかったよ、ショックだったよ。だけどきっと、同じように悲しかったよね、ごめんね。そんなふうに、お互いに許し合いたい。

書き上げたら、勝手にエピソード使ってごめんね、って伝えよう。たぶん、そんなこともあったねぇ、って笑ってくれると思う。怒られるのは嫌だから、気持ち多めに脚色しておこう。


そんな10月のはじまり。今年もあと3ヶ月をきった。
いつだって今がいちばん若い時。後悔しないように、ゆっくりでもいいから進んでいこう。