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本の話をしよう|2023.2

1年、また1年と過ぎるたびに、時間の流れるスピードが速くなっているように錯覚する。日数も少ないせいか、2月は余計にその錯覚がひどく感じられる。だから更新も怠っていた、っていうのはいわゆる言い訳というやつですねハイすみません。そういうわけで、もう残り数日となってしまった、2月に読んだ本の話をしよう。



大好きな『虹いろ図書館』シリーズの4作目、『司書先輩と見習いのぼく』を読んだ。前回で終わりなのかな〜と思っていたので、続きを本屋で発見した時はテンションが爆上がりした!

2ヶ月も前に発売されていたとは……

今回の主人公は、図書館職員になったばかりの頃のイヌガミさん。右も左もわからない社会人一年目の姿に、自分もこうだったよなあと懐かしさを馳せた。これまでは子供目線でストーリーが進んでいたけれど、イヌガミさんの目線になってお仕事小説感が一気に増し、図書館で働いているような気持ちになってうれしかった。
子供たちに寄り添う今のイヌガミさんの姿勢を垣間見ることができたから、まだまだシリーズが続いて欲しい。



最近は専ら、寺地はるなさんブーム。2月だけで寺地さんの本を3冊読んだ。

まずは、『わたしの良い子』。

ずっと読みたかった本。表紙がかわいい

出奔した妹の子供と一緒に暮らすことになった主人公。子育て真っ最中のわたしには、柔らかいクッションのようで優しい、だけど少しちくりと痛い面もある物語だった。
無事に産まれて、元気に育っている。それだけで十分なはずなのに、いつのまにかどこかで他の子と比較してしまっている。母ではなくとも、同じように悩んだり心配する主人公に思いっきり感情移入してしまった。少し淡白かな?と思いつつも、適度な正しさと優しさで接する姿は見習いたい。サンタクロースの話がすごく良かった。将来子にサンタクロースの話を聞かれたら真似しようと思う。笑
子供を置いて出て行ってしまうなんて……と、一見無責任で酷い母親(これも作中で二人が散々振り回された、世間体とか当たり前という偏った見方なんだろうな……) の妹だけど、彼女にも少なからず共感してしまう。24時間一緒に居られることは、幸せであり辛くもあるから。「母親に向いてないことはわかってるけど」の台詞が突き刺さったし、そんな妹への主人公の言葉は、わたしの心をもすこし軽くしてくれた。
子育てには正解がない。だからこそ悩んだり不安になったりするのだけど、そこだけを深掘りし続けてしまうのは良くない、自分にとっても子供にとっても。わたしは深掘りし過ぎているのかもしれないな、と考えてみたりした。


2冊目は、『タイムマシンに乗れないぼくたち』。

「もう1冊借りよ〜」って、直感で手に取った

孤独感や生きづらさを抱える人が主人公の、7つの短編集。1日1〜2章ずつサラリと読むことができて、あっというまに読了。
居心地の悪さや寂しさ、生きづらさはおそらく誰しもが一度は感じたことがあると思う。だからこそ読んでいて少し辛かった。けれど、読み終わるとちゃんと心がすっと軽くなる。特に『深く息を吸って、』は何度も「同じだ……」と苦しくなったけれど、たぶん同じだったからこそ、救われたような気持ちも大きかったのだろうな。
寺地さん、長編しか読んだことがなかったけれど短編も良かった!物足りなさもなく、読後感が良い。


そして、『川のほとりに立つ者は』。本屋大賞のノミネート作品。

カバーを外しても素敵な緑色だった

コロナ禍で距離を置いていた恋人が突然、怪我をして意識を失った。回復を待つあいだ、主人公は自分の知らなかった恋人の姿を知ることになる、というストーリー。ベースは恋愛なのだけれど、人が無意識に持つ偏見、自分の物差しだけでいかに物事を見ているかを改めて考えさせられた。
読みながら、以前勤めていた職場に、品川さんに似た感じの先輩がいたのを思い出した(その人が特別何か診断されていたとかは、聞いたことがなかったけれど)。忘れっぽいのか、同じことを何度も聞かれることが多くて、心の中で「また?」と思っていた。自分だって完璧ではないのに、わたしは内心呆れていたのだと、今になってわかる。自分の物差しだけでその人のことを見ていたのだ、猛烈に恥ずかしくなった。だけどもしもその「忘れっぽい」のが何らかの支障によるものだとわかっていたとして、それまでと同じように接するかと考えると、そうではなくなってしまうように思える。自閉スペクトラム症、ADHD、HSP、場面寡黙……名前がついて救われる人がいる一方で、誰からも色眼鏡で見られているような気持ちになる人もいるであろうことに、これまで気がつかなかったことも恥ずかしい。
主人公と同様、誰しもが救われるラストを予想していたから、それこそ手を振り払われたかのような読後であった。痛いところを突かれた……「綺麗事ばかり言うな」という声が聞こえるようだ。


寺地さんの書く物語が、今のわたしにはすごく刺さる。『どうしてわたしはあの子じゃないの』とか、『大人は泣かないと思っていた』とか、タイトルからすでに、心を鷲掴みにしてくる。
前述2冊は未読だし、この2月にも新作『白ゆき紅ばら』が出たみたいだから、まだまだ寺地さんワールドを楽しみたい。



買うのを迷っていた『マイクロスパイ・アンサンブル』を図書館で発見したのですぐさま借りた。

TOMOVSKYさんの装画、良き

福島県の猪苗代湖を舞台に、あっちの世界とこっちの世界が交錯する、現代版おとぎ話。元々は音楽とアートのイベント「オハラ☆ブレイク」で配布されていたショートストーリー。それもあってサラリと読めてしまう、しかしながら伊坂さんワールド全開な愛おしい物語だった。
同じく伊坂さんの『ペッパーズ・ゴースト』や『マリアビートル』のようなハラハラ感は控えめだけれど、読み終わる頃には気持ちがふわりと軽くなる。何気なく過ぎていく毎日のなかでも、自分の行動が思いがけず誰かを救っているのかもしれない、なんて思えたり。The ピーズの好きな曲の歌詞が出てくるもんだから、さらにハッピー。
そして何を隠そう、わたしは福島県出身かつ前は郡山に住んでいた(しかしながらオハラ☆ブレイクは未参加……)ので、終始ニヤニヤでした。門倉課長と松嶋くんが入った駅構内の喫茶店は新幹線のホームに近いド●ールがモデルかな、とか余計なことまで考えた。笑

そもそもなぜ買うのを散々迷っていたかというと、この本表紙が3パターンあって、折角なら福島県書店限定の、夕焼けバージョンの表紙のやつが欲しい!と思っていたからである。まだ県民だったら即買いだったのに〜ッ!笑
しかし3パターンとは粋だなぁ。3つが揃ったら何かが起こるのかもしれない……なんちゃって。



文庫化された時から読みたいけどしんどくなりそうだからなーどうしようかなーとずっと迷っていた『傲慢と善良』をようやく購入。案の定しんどかったけれど笑、ページを捲る手が止まらずあっという間に読了した。

ページ数も内容も結構なボリューム
(読んでいるうちに気にならなくなる)

姿を消した婚約者を探しているうちに、彼女の「過去」と向き合うことになる……という、ミステリー要素を含んだ恋愛小説。だけど、恋愛に限らず、己の人間性を見つめ直させるような物語だった。
主人公だけでなく、登場人物たちの思い込みの強さや価値観に、嫌悪感というか怖さのようなものを感じて、読むたびに心がすり減っていった……それは少なからず自分に重なるところがあって、ゆえに自分の中にある傲慢さとも向き合うことになったから、だと思う。もう……もうそのへんで……勘弁してください…………と何度思ったことか。笑
ピンとこない、の正体は、その人が自分につけている値段。この言葉にハッとさせられる。人に限らず、何かを選択する時、無意識のうちにそうしてしまっているよな……と。
それから、主人公の女友達が苦手なタイプだ…とつい思ってしまったけれど、婚約者についても、「嘘か妄想か、本当だとしてもだいぶ盛った話じゃない?」と割と序盤で思ってしまった自分は、他人の内面につけ込んだり攻撃したりしないだけで実は彼女たちと同じなのかもしれない……とも思ってしまって、そのことにもショックを受けた。
ここまで感想を書いて、改めて思う。ああ、なんて傲慢なんだ、と。



今月も本に生かされた日々でした。勿論息をするように本を買ってます。積読は増えていく一方です。あい変わらずですね。

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