たけしが引き起こす心の移ろい のぞき見体験note
「恋愛小説みたいだね」
そう言われたときはビックリした。
僕が伝えたかったのは、重度知的障害を持っているたけしを通して、僕という一人の人間の内部で起こる生々しい葛藤の様子。その葛藤に、このnoteを通してよく向き合うことで、自分の心のなにがしかの部分が成長して、それが見世物にもなると思っていた。
しかし、結果はどうだろうか。アニメの主人公のようなトントン拍子の直線的な成長はなく、たけしとより良い関係性を育むことばかり考えたボーイズラブをお届けすることになってしまった。笑
そんな僕の50日間を公開できればと思います。
今回の劇場
僕が今回過ごしたのは「たけし文化センター連尺町」(通称:たけぶん)と呼ばれる秘境の地。この複合ビルの中には、重度の知的障害など、さまざまな障害のある人が過ごす障害者施設「アルス・ノヴァ」と(僕が数えた限り)15種くらいも音楽機器のある音楽スタジオ、そして僕の生活空間となったシェアハウス・ゲストハウスなどが併設されている。「アルス・ノヴァ」はアートや音楽を取り入れていたサービスを提供していて、日中は声と音がよく聞こえとても賑やかだ。そんな場所なのだが、ここは浜松駅か徒歩10分程度の「まちなか」に存在している。
ここのシェアハウスは、2019年に始まり今年で4年目となる。運営している主体は認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ。理事長・久保田翠さんの息子たけし君(24)の親元を離れた自立生活の実験場としてシェアハウスは始まったのだという。現在では、たけし君の他に障害のある2名が、親元を離れ「自立」のためにヘルパーの介助を受けながら暮らしている。その2人から受けた影響も強く、是非noteで紹介をしたかったが、今回は、たけし君との思い出に焦点を絞らせてもらえればと思う。
そんなシェアハウスには、観光客が泊まることができるゲストハウスが併設されている。リビングやキッチンは共有で、自分の部屋から一歩出れば、いつも賑やかな日常が出迎えてくれる。そこでは、ヘルパーとは違い、「支援する/される」だけではない未開拓な関係性が待っていた。僕はここに50日間シェアメイトとして泊まることになった。
今回の登場人物
久保田壮(たけし)
僕の片想いの相手。1996年生まれで現在26歳の長男。現在、週5でシェアハウスを利用している。
重度知的障害を持っていて、障害区分は最も重度の「区分6」。食事、排泄、移動など、日常的な行為に全面的な介助が必要としている。自分の大便で遊ぶ「便こね」などの強度行動障害があり、トレードマークであるつなぎ服は、便こねをとどまらせるために家族が悩んだ末に使われ始めたんだとか。
好きなものは、音楽と石遊び。よくシェアハウスでは、童謡やビートルズや石の音が聞こえている。石遊びとは、タッパーなどのお椀の形のものに石を入れてカチャカチャと鳴らす活動。幼い頃から現在まで、一日も欠かすことなくやり続けているらしい。
強烈なキャラ。
中原誠大(まさひろ)
ぼく。1993年生まれ。現在28歳で、たけしには先輩風に接している。
4年半東京の会社に勤めた後、「自分が純粋にやりたいことを全力やってみよう!」と一念発起し、退職して2022年8月に浜松に移住。「パーマカルチャー」と呼ばれる、簡単に言うと「持続可能な暮らし方」を切り口に、植物や昆虫、人間などのありとあらゆる命が助け合い、活かし合うような繋がりのある世界をつくる生活を始めている。(拠点はここです) 10月1日からパーマカルチャーな暮らしのできるシェアハウスを住みながら作り始める。それまでの間、ご縁でレッツを紹介してもらうことになり、ここに住み始めることになった。
ただ、たまたま「障害」にも元から興味があったこともあり、レッツにもハマってつい時間を取られてしまっている。大学生の時は、作業所でボランティアをしたこともあったし、新卒で入社した会社は社員の「ありのまま」を大切にする文化のある会社だった。ここは、たけしのようにスタッフもゆったりと過ごしていて、僕も気楽に過ごせている。
僕もキャラは濃いと言われるんだけど、たけしと並ぶと霞むなぁ。。。
のぞき見することで得られるもの
たけしとの向き合い方
たけしとの付き合い方について、自分の試行錯誤と無為無策の様子を時系列に書いてきた。ここに来てどうすればいいのかわからず困った人が、僕の困っている様子を知るだけでも、「自分だけではない」と安心できるんじゃないかと思う。また、たけしの気持ちの見立て方について、スタッフさんたちに聞いたり、自分で考えたりした内容を共有している。それは、たけしと心地のいい関係を築く上で少し参考になると思う。
モヤモヤと向き合い方
シェアハウスの入り口の横にこんなポスターが貼ってある。
ポスターの言う通り、ここにいるとたくさんのモヤモヤが生まれる。僕にとってモヤモヤとは、新しい世界への扉であり、その扉の向こうにあるものは自分の望む穏やかな世界でもあり、逃したらもったいないものである。だから、無理をする必要はないと思うが、ここに訪れる方はぜひモヤモヤと向き合ってみて欲しいと思っている。
このnoteでは、いくつかの内省の技術や理論を参考にしつつ、モヤモヤと向き合ってみた。内省の仕方がわからないという人にとって、気づきを得るための補助線になれば幸いである。
各noteの紹介
以上が、この「たけしが引き起こす心の移ろい のぞき見体験note」の概要だ。1日目、7日目、14日目、21日目、1か月目、50日目と、50日間を6つに分けて心の声を切り取った。「移ろい」を見てほしいので、できれば1日目から読んでほしいです。前置きが長くなりましたが、これからどうぞよろしくお願いいたします。
【1日目】「動じず、好きなことを純粋にする」たけし先輩
たけしに強烈にモヤモヤして、自分の過去に潜ってみました。
【7日目】 甘えさせ上手なたけし先輩
公平性を見出して、少しモヤモヤが小さくなりました。
【14日目】 「たけし」をなかなか受け入れられない
モヤモヤを受け入れられないことに対して向き合いました。
【21日目】 慣れ始めて変化するたけし像
慣れてモヤモヤがぐんと小さくなったことに対して疑問を感じました。
【1ヵ月目】 モヤモヤを消さずに残しておく
モヤモヤの一部を敢えて残す考え方を選択してみました。
【50日目】 背中で語る「そのままでいい」と「そのままではダメ」
たけしを通して考えた公にしづらい内容を公開しました。
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