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2019年2月の記事一覧

「モザイクの空」解説

創作のアイデアはどこから来るのでしょう。
創作されているかた何人かに聞いたことがあります。みんな違う答えでした。きっと書く人により違うのでしょう。
ぼくの場合は、ほとんどの創作作品で、漠然とした「絵」が頭に浮かぶことが多いです。
特にこの作品の場合はそれが顕著で、エンディングのシーンでの、主人公の色とりどりの視界がまず頭に浮かび、そのあとに、そこにいたるまでの物語ができました。

100人共著シ

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モザイクの空(800字)

僕は河原にひとりで座っていた。周りには同じようにシートを敷いて場所取りをしている人達が、まばらに座ったり寝転んだりしている。
何年か振りに着た浴衣が気恥ずかしい。
この前着たのは小学校低学年の頃だ。僕が花火大会で初デートすると聞いた母の、張り切り顔が頭に浮かんだ。

母が買い物から帰ってきた。嬉しそうな笑顔で紙袋からなにか取り出した。
「ほら、これ。今日の花火大会に着ていき」
僕はソファで寝

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「マジョリティの心理」解説

この作品は、キャプロア出版刊週刊キャプロア出版第10号「秘密」編に掲載されました。

秘密ってなんなんでしょう。
秘密という体で、口に出しては言わないものの、そこそこみんな知ってることが多いような気がします。
このお話もそんな類いの話で、マジョリティになってしまいさえすれば、どんなことでもその世界では正しくなってしまうような気がします。
吸血鬼やゾンビに咬まれると、同族になって忌み嫌われるとい

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マジョリティの心理(1600字)

電話が鳴った。男が出ると警察からだった。電話は行方不明だった弟の死を告げた。
男は搬送先の病院に行く旨を受話器越しに伝え電話を切った。

深夜だ。道は空いていた。車で走りながら男は高校卒業と同時に家出した弟を思い出していた。10年前だ。そんな弟と地元で再会することになるとは。男の口からため息が出た。

翌日、男は弟が生前住んでいた部屋へ向かった。警察から聞いた住所は雑居ビルだった。
男は階段の

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「デブ オア ナッシング」解説

この作品はキャプロア出版刊週刊キャプロア出版第8号「デブ論」編に収録されました。

現在、キンドルで検索しても出てこないようなので、もしかしたらデブが引っかかって発禁にでもなったのでしょうか。

このテーマが決まったときのことです。ぼく自身、相当にデブの一員で、書いても自虐にしかならない作品を、書く気になれず、参加を見送る予定でした。
偶然にも、数日後、この号のリーダーとお会いし、このテー

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「オトメゴコロ」解説

2015年のバレンタイン時期に、SNSに投稿した前後編を改稿した作品です。

バレンタインには特にいい思い出はありません。よく話に聞くような告白ばなしも、周りでも聞いたことないです。
ところが、バレンタインの淡い恋のイメージは嫌いではありません。
自分でも不思議に思っていました。
考えてみると、誰かのために、想いを込めて作るなり買うなりしたなにかを贈るのって、もうそれだけで頰が緩むというか、こっ

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オトメゴコロ Boy's Side(2196字)

朝、ぼくはゆっくり歩いて学校に着いた。
足が重い。校門に立っている先生に挨拶をして校舎に入る。あくびをしながら下駄箱の前に立った。昨日図書室で借りた本が面白すぎ、深夜まで読んでしまった。まだ眠い。
下駄箱を開け上靴を取ろうとした。そこには、ハートの絵のピンク色の包み紙があった。
いっぺんで眠気まなこが覚めた。
心臓の鼓動が大きくなっているのを感じる。
下駄箱を閉じ、あわてて周りを見回す。誰もこっち

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「こじらせた男」解説

この作品は、キャプロア出版刊週刊キャプロア出版第7号「村上春樹編」に掲載された作品です。

ぼく自身の偏った趣味のせいか、今まで村上春樹は避けて通ってきました。日本で一番有名な作家、ノーベル賞に一番近い作家と、言われるようになってからも、いや言われるようになって余計にかもしれませんが、読みたくありませんでした。

ですので、週刊キャプロア出版のテーマが村上春樹になったと聞いて、今回は不参加

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