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アイシングで疲労蓄積の軽減を。

練習メニューなどトレーニング方法をトップ選手や著名な指導者が発信しているのを見かけるようになりましたが、「〇〇の可動域を広げるストレッチ」など運動前のストレッチがほとんどで運動後に取り入れてほしいセルフケアの情報が少ないように感じるし、SNSをチェックしているとトレーニング報告は多く見かけます。
僕が確認をしていないだけかもしれませんが、セルフケアを促したり実践しているような情報がトレーニング方法に比べると圧倒的に少ないように感じますね。

「自己ベストを更新したい!」と考えたり、「今よりも走れるようになりたい!」と願うのであれば、強度の高いトレーニングのことばかりを考えずに早めの疲労回復を考えてセルフケアを取り入れてみてはいかがでしょうか。

ストレッチは一般的な方法として取り入れられることが多いですし、言葉で伝えたとしても「腕や脚の角度」や「力の加減」によっては「狙った場所のストレッチにならない」という可能性もあるので、柔軟性がなくてストレッチが苦手という人にもできるアイシングをお勧めします。

アイシングは「身体のどこかが痛い」というときだけではなく、疲労を感じているときに実践しても効果はありますし、熱中症や肉離れ、日焼けなど多くの症例に対応できるのでセルフケアとして高い効果を期待することができますよ。

アイシングって?

アイシングは氷や水などを用いて身体を局所的に冷却することを指します。

アイシングは負傷・疾病に対する応急処置(負傷時に行うべき4つの応急処置法RICEの一つ)のことで、運動時の負傷の防止や筋肉痛・疲労蓄積の軽減、止血などを目的として行われます。
さらには運動時に筋肉の温度を運動に適した程度に保たせたり、適度な運動や温熱療法と組み合わせることで治療効果を得ることもできます。

ランニングをすることによって上昇した筋温を平常時の温度に素早く戻し、微細な組織ダメージの修復を早めることを目的とする筋疲労の回復法です。

※ RICEの法則
Rは「Rest(安静)」
Iは「Icing(冷却)」
Cは「Compression(圧迫)」
Eは「Elevation(挙上)」
(医学的な根拠から傷害を負った際にはできる限り患部の炎症や出血を抑えるための方法で、病院などの医療機関で診断を受けるまではRICEに則った措置を執る事が推奨されています)

トップクラスのスポーツ選手になるほどフィジカルトレーニングや競技の後のアイシングは常識とされていたり、身体のどこかに慢性的な痛みや故障を抱えていることが多いので痛みの緩和や故障の悪化の防止のためにも行われています。

一般スポーツとして楽しんでいる人の中にもアイシングを取り入れている人はいますが、痛みがある場合にしかアイシングを行わない人がいたり、「冷やすだけでいい」と教えられてアイシングの正しい方法(処置)を知らない人もいるので、アイシングの方法などを覚えておきましょう。

※アイシングは痛みがあるから行うものではなく、季節は問わず、トレーニング後に実践していきましょう

処置の方法

氷や保冷剤、冷湿布、コールドスプレーなどを使用することが多く、それらが手元にない場合や遠征先などで確保ができない場合にはシャワーなど流水にさらすという方法があり、近頃は瞬間冷却材(外装を叩くと冷えるもの)を使用することもあります。

これらのうち、筋肉などの深部まで冷却するという目的を達成するためには氷が最も優れています。
(後述のアイシングの効果で説明します)

氷を使用する場合には氷嚢に氷を入れる方法やビニール袋の中に氷を入れてから空気を抜いてアイスバッグ(アイスパック)を作る方法、他にはバケツの中に氷と水を入れる方法があります。

氷嚢やアイスバッグを作るのに十分な量の氷がない場合は氷を直接肌へ当てて動かす方法(アイスマッサージ)があり、この方法はアイスバッグを当てにくい場所のアイシングや局所的なアイシングに適しているので、氷を動かすために凍傷を起こしにくいという利点もあります。
また、包帯や専用のサポーターを使用して氷嚢やアイスバッグを固定する方法もあります。

コールドスプレーは氷よりもアイシング効果は低く、一時的に痛みを緩和させるのに役立つので運動中に身体を冷やす際に用いられることが多くあります。

保冷材(主に食品用保冷材)は温度が低くなり過ぎるため、タオルやガーゼなどを当てて使用することがほとんどなので冷却能力は氷より劣ることになります。
(後述の注意点でも説明します)

冷湿布は一般的に皮膚の表面温度を約2℃下げる効果を持っていたり、その効果は2~4時間も持続可能ではありますが、深部を冷却する能力には欠けています。

アイシングを行う時間の目安は概ね10~30分程度。

※アイスバック(アイスパック)の作り方
平らな場所へビニール袋の口を開いた状態で置き、ビニール袋の底へ家庭用冷蔵庫で製氷されたものを6個もしくは9個並べて平面部分を作って、中の空気を吸い込みながらビニール袋をねじって封をします。
(4個でも良いが冷却時間が短いのでお勧めできないし、平面部を作らないと氷の角が肌に当たって痛かったり十分な冷却能力を発揮できない可能性もあります)
平面部を肌へ当てて筋肉など疲労している患部を冷やすことができます。

注意点

▼ 凍傷
冷やし過ぎによる凍傷には気をつけるようにしましょう。

冷やし過ぎを引き起こす要因は「冷却時間」「冷却媒体の温度」「冷却媒体の種類」「患部への圧迫の度合い」があり、特に冷却媒体の温度は凍傷を起こしやすいので注意が必要です。

保冷材の中には摂氏0℃以下に冷えるものがあり、そのようなものを直接使用すると短時間のアイシングであっても凍傷を引き起こす危険があるので、使用時にはタオルやガーゼなどで保冷剤を巻くなどして工夫が必要になります。

また、前述のようにコールドスプレーは氷よりもアイシング効果が低いため、患部の深部を冷却しようと長時間・至近距離から吹き付けることになり、凍傷を引き起こす可能性が高くなるので注意をしましょう。

氷を使用する場合でも家庭用冷凍庫で作ったものや市販のものは摂氏0℃以下に冷却されている場合があるので、氷を使用する際は表面を軽く水に濡らして表面を溶かすか、水と混ぜて氷水にして対処したほうが良いかもしれません。

その他、アイシングをしたまま眠ってしまうと凍傷を引き起こす恐れがあるので注意してください。

アイシングを行う時間の目安は概ね10~30分程度です。

▼ 血液循環を促進する行為の禁止
アイシングは血行を抑えるための行為です。
そのため、アイシングの最中やアイシングをした後は血液の循環を促進する飲酒・入浴・過度の運動を行うことは厳禁なので注意が必要です!

アイシングの効果

運動後は筋肉の温度が上昇しているのでエネルギー消費が大きくなってしまい、そのことが原因で疲労の蓄積に繋がってしまう恐れがあります。そうならないためにもアイシングでエネルギー消費を抑えて、疲労の蓄積を抑える必要があります。
筋肉が損傷し、痛みを覚えるような場合には痛感神経をマヒさせることで筋肉痛を和らげ、筋肉が緊張している状態(コリや違和感、張り)を軽減させることも可能です。

また、特定のスポーツではパフォーマンスを向上させる目的でアイシングを行うことがあり、ランニングをしている人が無意識にやっている行動もアイシングの一種とされます。

それは「マラソン大会など走行中にエイドステーションで取った水を身体にかけること」で、身体に水をかけることによって身体中の温度を下げることができるので無意識のうちにアイシング効果を利用しているということになります。

筋肉にはパフォーマンスを発揮するのに適した温度があり、ランニング中は筋肉の温度が過度に上昇するので水をかけることによって過度に上昇した筋肉の温度を下げ、パフォーマンスが発揮しやすい状況を作り出していることになります。

他にもウォーミングアップ前にアイシングを取り入れることで冷却した部位の筋温を短時間で上げることもできるとされています。
(冷却した部位の筋温を元に戻そうとする働きに運動をすることによって血流量が増加して筋温が上がる働きがプラスされる)

スポーツ時に多い症状にも応用できる

▼ 熱中症
アイシングと水分補給が必要!
軽度の場合は運動を中断して後頭部をアイシング。
中度の場合は涼しい場所へ移動させて楽な姿勢で安静にさせ、太い血管のある部位(首、脇の下、太ももの付け根)をアイシング。

▼ 肉離れ
周辺の筋肉全体が激しい痛みを伴う強い痙攣などを起こしている可能性が高いため、大きめのアイスバッグを使って肉離れを起こした部位を中心に患部全体を深部までアイシング。

▼ 日焼け
日焼けをして熱を持っている部位の熱が治まるまでアイシング。

他にも様々な症例に対応できますが、ランニング中に起こるものをピックアップしています。

氷が一番良いとされる理由は…

固体の氷が液体の水に変わるときに周りから熱を奪って周りの温度を下げるメカニズムを利用していて、摂氏0℃の氷は質量あたりの冷却能力(周囲から熱を奪う能力)が高く、冷却効率という点において最も優れています。

摂氏0℃の氷1gが摂氏0℃の水になるときに必要なエネルギー(融解熱)は、摂氏0℃以下の氷1gの温度を1℃上昇させるのに必要なエネルギーよりもはるかに高いためです。

温度の上昇に必要なエネルギーの大きさは周囲から熱を奪う能力の高さを意味するので、固体→固体より固体→液体のほうが冷却能力が高いということですね。

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いわた流アイシングのやり方

以前は氷嚢やビニール袋を使ってアイスバック(アイスパック)を作っていましたが、時間の経過を忘れてしまうことがあったり氷嚢では冷やせた気がしなかったので、最近は氷を直接肌へ当てて動かす方法(アイスマッサージ)をするために紙コップを使用しています。

特に愛用しているのは90ccの紙コップ。

90ccの紙コップを使う理由は氷が融けるまでの時間に20分ほど要するので、すべての氷が融けるとアイシングの目安とされる時間(10~30分)になります。

深部まで冷却するのに最も優れているとされる摂氏0℃の氷を肌に押し当ててアイスマッサージをするので、紙コップから出る氷の表面積もそこまで大きくないのでアイスバッグでは冷やすことが難しい部位を局所的に冷やすことができたり、紙コップを持っているので氷で手が冷えることも少なくなるというメリットがあるため、ゆっくりと動かしながら疲れた部位や気になる部位をマッサージすることができます。

保冷剤だと0℃以下で直接肌へ当てるには凍傷になる恐れがあるし、かといってタオルなどを巻いてアイシングをすると表面温度が0℃以上になりますし、シャワーや水風呂も代用できるけどタオルを巻いた保冷剤と同じように「冷やす温度」という点では氷より劣ってしまうので、「深部まで冷やす」という目的で氷より劣ってしまうのは考えものだから、貴重な時間を使って実践しているアイシングの効果を最大限に引き出すために氷を使っています。

(氷を用意できない場合は冷水でも構わないし、冷水では効果がないわけではない)

最後に

アイシングをすることでセルフケアをしたと思って気を抜かないこと!

疲れた身体へのケアをすることは身体を痛めないために必要なことだけど、これからの季節はエアコンを使用していることが多いので室温が低いこともあり、短めの丈のズボンなどを履いて足を無駄に冷やさないように注意しないといけません。
(エアコンがよく効いた部屋にいて、足がだるく感じたことのある人もいるはず!)

どんなことでも「これが大事!」と言われた後の過ごし方などが本当は大切なので、しっかりとセルフケアをした後の無自覚な身体の冷えに注意をしていきましょう。

いつも最後までお読みいただき、ありがとうございます。 サポートしていただいた資金は書籍化(電子書籍含む)へ向けた活動資金に充てたいと思います。今後も僕の想いをつらつらと文章へしていきますので、これからも応援をよろしくお願いいたします。