ChatGPTのマーケティング活用:疑似インタビュー相手として
OpenAIが高性能なAIチャットである「ChatGPT」を公開したのが11月30日なので、1か月半くらい経ちました。公開当初からその性能の高さから注目を浴び、様々な活用事例が公開されています。
マーケティング活用のアイデアとして、あれこれ試してみました。
前回記事「ユーザーインタビュー」はこちらです。
今回は、同じくユーザーインタビューですが、インタビュー相手としてChatGPTが使えないかチャレンジします。
何をしたいのか
前回の記事でも書いたとおり、ユーザーインタビューにはある程度コストがかかります。仮にAIがインタビュアーを代行してくれるにしても、ユーザーをリクルーティングし、ある程度の謝礼を支払う必要があります。
そこで、今回はインタビュー対象者のペルソナをChatGPTに移植し、ペルソナになりきって答えてもらうことで、コストをゼロにしようという目論見です。
発想の起点は、もう4年ほど前の社内ブレストの中で出した「AI100人の村」というアイデアです。AI100人に商品やマーケティングのアイデアを投げかけることで実際の市場反応を予測できるのでは、というものでした。
うまく行けば「ChatGPT100人にインタビューしてみました!」ができるかもです。
①自分のペルソナを移植する
移植するペルソナは、ひとまず自分にします。入力も検証も楽なので。
このくらいの情報から、ある程度生活パターンを推測できるものでしょうか。
ではさっそく聞いていきます。
インタビュー第1回
うーん、なんとも言えない微妙な結果に。
では、属性から情報の類推ができるのかを試してみます。
途中から、「情報がありませんので、推測することはできません。」を連発する結果になりました。まあ確かに、わかんないと思いますが、これを類推していくことがインサイトの要とも言えますね。
インタビュー第2回
とりあえず、同じプロンプトでもう1回やってみます。
今度のバーチャル私は妄想力がたくましく、妻が大学教授になっています(本当はパン屋です)。
どうやら、Seed(初期乱数)によって妄想力に差が出るようです。いろいろ聞いていきましょう。
今までの実験で、ChatGPTは抽象的な議論のほうが得意だと感じたので、そちらを掘り下げていきます。
なんかきれいな目のジャイアンみたいな人が出てきました。
もう一つ聞いてみます。
またお前か。
少し具体化して掘り下げていきます。マーケティングリサーチにおいても、抽象的な質問から価値観や潜在的な課題を掘り下げていくことはよくあります。
またお(略
なんか正解っぽいのが出てきた。
一つ一つはありきたりなインサイトですが、抜け漏れをなくし、初期仮説にするところまでは使えそうな感じです。
なんか正解が出てきた!(実際都心の小さい家に住んでいます)
え、気持ち悪い!(実際Pixel7を使っています)
気持ち悪い!!(Win愛用者です)
良いSeedを引けば、ある程度の精度で周辺情報の類推はできるようです。
ただ、理由の部分が結構漠然としている(精度が低い&一般論に終始している)ので、あまり深堀りはできないように感じました。実務においては、「なぜwindowsにしているのか」「なぜAndroidにしているのか」を掘っていくのが重要であるため、まだそこまで有用ではないなと感じます。
「最初にChatGPTに聞いてみて、何が意思決定の要素になっているのかの仮説を立てるためのアイデアを出す」くらいには使えるかもしれません。
②父のペルソナを移植する
私のペルソナはある程度移植できていることがわかりました。次は別の人物でトライします。父です。
私事ですが昨年12月に父は他界しました。まだ四十九日も終わっていません。なのでChatGPTに父を降ろしている状況です。四十九日のときに怒られるかもしれません。
できるだけダメな側面を見たいので、性格のところに嘘も交えてネガティブな言葉を書いてみました。
本当は父はめちゃくちゃいい人でした。お父さん、ごめんなさい。
インタビューする
まずは軽い質問から。
父はいい子ぶってきました。
うーん、よい子が行き過ぎて、これはダメです。
返答はうまくロールプレイできていないですし、実際はiPhoneユーザーでした。
少し抽象的な質問にします。
父だと思うと非常にエモいです。エモさを通り越して怖いです。
ついでに禁断の領域に踏み込みます。
安易に故人を降ろしてはいけません。
ですが、ある程度、高齢者のインサイトを把握する手助けにはなるかな……といった印象です。
今回は父という身近な人物でしたが、自分から距離がある人(海外の人や障碍者の方など)をペルソナとする場合は有用かもしれません。
③いくつかのペルソナに同じ質問をしてみる。
ペルソナを降ろしてインタビューするのは、可能なときもありますが、うまくいかないときもあります。
ChatGPTがどの程度ユーザーインサイトを理解できているのかを、「いくつかのペルソナに対して、同じ質問をする」というテストをしてみたいと思います。
題材は「スマホがiPhoneかAndroidか」に絞って、こんな感じでいくつかやってみました。
iPhone=高性能で高価、Android=安価、という単純な構造になっているのが(Androidユーザーとしては)少し気になります。
少しだけパラメータをいじってみました。都心を地方にし、趣味もお金がかからないものに変更してみました。すると、
やっぱりな。
ちなみに英語でもやってみたのですが、結果はほとんど同じでした。
まとめ
というわけで、ある程度ペルソナが移植できることがわかってきました。
そのほかにわかったこととしては、
Seedによって、妄想力に差が出る。
妄想力が強い子を引けば、結構インタビューができる。
ただ、インタビューにて最も重要な「理由の掘り下げ」が弱いので、実際役立つかというと微妙。
価値観の項目や、ステレオタイプに近い項目は合ってきやすい。
実際のユーザーインタビューとして使うより、価値観の可能性の範囲を探る、壁打ち相手として使っていくくらいか。
自分と距離が遠く、想像できない人に対するインサイトを膨らますうえでは有用かもしれない。
ただChatGPTのリスク回避嗜好のせいか、「よい子」に転びやすい。
推定手段が比較的ステレオタイプになっており、まったく新しいインサイトを得るところまでは至らない。
まとめると、この用途ではまだまだ途上というところ。具体的な掘り下げというよりは、インサイトを補強する/抜け漏れを防ぐという意味で有効なように感じます。ただ、Seedを変えて何度も試してみないと、狙うような効果は得られないかもしれません。
マーケティングの最初に仮説を立てるために、想定ペルソナへカジュアルにインタビューすることがありますが、その前段階で、ChatGPTに聞いてみて、インタビュー項目を設計するというのは良いアプローチですね。
ただ、実際に過去に行われた意識調査のデータなどを食わせていくことができれば、より生々しいインタビューができるようになるかもしれません。
今日はここまでです。
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