『なれのはて』

『なれのはて』加藤シゲアキ

わたしの大好きなアイドルであり、作家、加藤シゲアキさんの新作長編『なれのはて』。加藤さんの言葉は繊細で、全体として見てもとても緻密。
ファンであるわたしが読んだ感想。

まず、読む前も読んだ後も、一貫して加藤さんの覚悟とキャリアを感じた。過去と現在を行き来するという点では構成は加藤さんの処女作の『ピンクとグレー』にも似ているところがある。しかし、それとは全く視点や書き方が違ったため比較して読むのも面白かったし、登場人物は多いがその人たちすべてが最終的に繋がっていくところにとてもドキドキした。

また、読んで良かった、と思うと同時に、もっと多くの人に届けたいと感じる一冊だった。
わたしはこの本を読むまで土崎空襲というものを知らなかった。きっと自分と近しい年齢の人は知らなかった人、今でも知らない人が多いように思う。だからこそ、戦争という忘れてはいけない、繰り返してはいけないものの記憶が上手く引き継がれていない現代に恐怖を覚え、多くの人が読むべき、否、読まねばならない作品だと心から思った。

そして、読んでいて身近に感じやすく心苦しいのは、やはり恋愛のシーン。恋愛というものは、今でもこの世に、(多くの人にとって)当たり前に存在しているもの。それ故に、わたしと両手で数える程しか年齢の違わない人が思うようにその気持ちすらも持つことが出来ない時代に、苦しさを感じた。

そんな世界を、生まれていなかった時代をこんなに丁寧な言葉で表現する加藤さんは、ほんとうにすごい人なのだと改めて感じた。

ここからは、直木賞のことについて。

いちばん悔しいのは加藤さんだということは分かっているのでわたしがどうこう言うわけでも無いしその資格は無いと分かっているのだけど、正直今回はほんとうに受賞出来ると思っていたところがあって。というのも、『なれのはて』は加藤さんの中で最も壮大で、重たいテーマを扱うから、と細部まで拘られ、読みやすいものだと思っているから。
それを思うとやっぱり悔しくて悔しくて、そっかあ、って言葉と同時に涙が止まらなくなって。
それでも、加藤さんの投稿を見たら自然と笑顔になった。この人はいつだって前を向いている。加藤さん自身が一番悔しい思いをしているはずなのに、ファンを笑わせようと投稿してくれている。またその事実に涙が止まらなくなったりして、笑って、泣いて(笑)
ファンのために面白いことをしようと待ち会をインスタライブで配信してくれたこと。ファンにスーツやネクタイを選ばせてくれたこと。誰よりも前向きに、SNSに投稿をしてくれたこと。そのどれもが加藤さんの優しさで、ほんとうに大好き。

2024年1月17日。わたしの、加藤担の宝物の一日になったはず。こんなに貴重な経験をさせてくれた加藤さんに改めてありがとうだし、ほんとうにノミネートおめでとう!
そして、改めて、『なれのはて』がもっと多くの人々に届きますよう、願いを込めて。

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