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知識ゼロからのNASサーバー構築

共用ストレージが欲しいという漠然とした考えで、知識もない人が導入前検討からNASを構築、導入していったお話です。


NASサーバーを構築するまで

PCが複数台あるとファイル管理が面倒

PCが複数台あるとファイルを共用するときに、面倒な事が起きませんか?
自身が感じる面倒な事は、

  • ローカルにファイルを置くと、そのファイルを使用したいときにそのPCを起動しないといけない  >> ちょっと確認したいだけなのに手間

  • USBメモリー等でコピーを作成して使うと、最終的にどれが最新かわからなくなる >> タイムスタンプでどれが最新か確認する手間

  • USBメモリー等にコピーしたつもりが、いざ使用時にコピーできていなかったりする >> 自分が悪い

  • 音楽などのメディアファイルをどれかのローカルに依存したくない >>聞きたい時に機器を選ばずに使いたい

等の理由で結構ストレスを感じたりします。特に音楽系のメディアファイルは、次の項目で紹介するnasneで便利さを感じたので、ローカルに置きたくないと思いました。ということで、自分のNASに求める使い勝手はというと

  • ファイル類を一括格納できて、機器を選ばすにアクセスできること

  • メディアファイルの格納場所として、メディアサーバー替わりになること

  • ファイル類のバックアップがとれること >> ストレージ故障リスク対策

  • 機器の入替を頻繁に行いたくないので、拡張性があり、そこそこの性能であること >> 将来像が不明なので、ある程度、機器の余裕を持ちたい

  • サポート期間が長く見込めること >> 製品のライフサイクルに依存したくない

  • 導入価格が安いこと >> 重要

以上で、これが自分の要求仕様になります。

nasneって以外と便利

PS3を購入した時にtorneとnasneも併せて購入しました。その時は、HDDレコーダー代わりに使用していました。PS3も2台あり、同一ネットワーク上に機器配置していたので、例えば、録画した番組をリビングの機器や寝室の機器から視聴可能です。今でも購入可能ですね。

取りためた番組をどこから(といっても対応機器があること前提)でも視聴することができるのは、かなり便利です。

しかし、PCネットワークに組み込むには、容量自体が少なく(500GBモデル)、ストレージ追加もUSB接続で1ポートのみということを考えるとこのままでよいのではないかと考えました。

ただ、nasneのような共用ドライブがあれば、自分の求める使い勝手が実現できるのではないかと思い、色々と試行錯誤してみることにするのです。

ネットワークドライブを試す

そういえば、無線ルーターにUSB接続でストレージを繋いで、ネットワークドライブが構築できることを思い出し、外付HDDを繋いでみることにした。実際に使用してみると、いくつか問題が発生しました。

  • PC起動時にネットワークドライブが認識されないときがある

  • そもそも無線ルーター外からネットワークドライブにアクセスできない

  • 通信の問題で書込みに失敗するときがある

  • 追加できるストレージは、USB接続1ポート分のみ

まあ、おまけみたいなものだから、仕方がないといえば仕方ないですが、自分の望む運用には、向きませんでした。

Time Capsuleを試す

AppleのTime Capsuleも家にありましたので、試してみることに。
下調べの段階で、活用することを断念しました。

  • NASとしては、使えそうだが、容量が少ない。HDD交換が面倒。

  • ファームウェア提供が終了している (サポート終了)

  • 拡張性が乏しい (USB接続の1ポートのみ)

試す前の下調べで要求仕様に届かないことがわかり、やはり、NAS機能は、おまけみたいなものだと悟りました。


NASを導入したい

色々と手持ち機材で試そうとしましたが、どれも要求仕様を満たすものはなく、機器を追加する方向性しかなくなりました。

製品を買うことを前提に検討する

まずは、NAS機器についてを調べてみることにしました。
手っ取り早くNAS専用製品を購入する前提で調べることに。
HDDは、手持ちがあるので、ドライブ有無を問わないことにします。

高っ。そこそこのPCが買えるお値段。HDDなし。まあHDDは、手持ちがあるからよいとしても、HDD 4台までと初期投資の敷居が高い…。

値段でいくと、予算は、これくらい。ネットワークHDD? これは、試したので無いかなと。容量2TBも心もとない…。

お手頃だけど、メモリ1GBで大丈夫なのだろうか。過去にPCでメモリーの少ない搭載機種を選択して、散々失敗しているので不安…

結論として

やはり、市販のNASキットは、HDD 4台までが主流で拡張性が厳しいなと感じましたし、拡張性が高いものは、価格も高い。あとは、オリジナルソフトなので、製品のライフサイクルでサポートが長く見込めないところも不安要素です。そうそうNASキットを入替することもしたくないので。

と結局、自分の欲しいスペックと予算が製品価格に見合わない事がわかりました。

さらに調べていくと自身でもNASサーバーを作成、構築できることが判明。しかも費用をかけずに。これは、チャレンジしてみるしかないと。


お金をかけずにNASを自作する

自作NASに必要なソフトを確認する

NASを構築するにあたってNASソフトが必要になります。Windowsでも構築可能ですが、Windows 11のサポート外になった部品を流用するつもりでしたので、Windowsのサポート期間が大きなネックになります。

そこで出会ったのは、「True NAS」というソフトです。フリーでも使用可能なUnix系(Free BSD)システムのNASソフトです。この中の「True NAS CORE」を選択しています。

一応、Wikipediaのリンクも貼り付けておきます。

Wikipediaのシステム要件に「2コア以上のAMD64アーキテクチャCPU」と記載していますが、Intel CPUももちろん使用可能です。
詳しいハードウエア要件は、下記のオフィシャルサイトを参考に。

手持ち部品で構築可能か確認する

ハードウエア要件を確認して、使用していないPCパーツ類を確認したところ、構築できそうな感じでした。かき集めたPCパーツを紹介します。

CPUは、Intel Core i7 7700Kです。4コア8スレッドでまだまだ使えるCPUですが、Windows 11のサポート外になってしまいました。True NASでは、2コア以上が推奨CPUですが、コアが多ければ、並列暗号化や仮想化に適しているそうです。

CPUクーラーは、余っていた虎徹 Mark2を使いました。そんなにCPUも発熱しないので、リテールクーラーでも十分かと思います。

マザーボードは、ASROCK Z270 Taichiです。無線Wi-fiも搭載しているし(後で困ることになる)、ATXサイズでSATAポートも豊富です。(6ポート)
将来的にストレージを拡張するのであれば、SATAポートが豊富にあるものやPCIスロットが豊富なもの(SATAカード追加) を選んだ方がよいかもしれません。

メモリーも使用していない16GB×2の32GBです。必要スペックは、16GBですが、最適なパフォーマンスを得るためには、32GB以上を推奨しています。
たまたま32GBを搭載しましたが、メモリーは、余裕があったほうが良いと思います。(以外とキャッシュで使用します)

ブート用SSDは、Windowsで容量が少なくお役御免となったNVMeです。NVMeでなくとも容量が少ないSSDも使えます。(16GB以上あればOK) ただし、ブートデバイスとして、単独のブートデバイスを推奨しています。

容量が少ないので、USBメモリーでもいけるかもと思うかもしれませんが、USBメモリーによるブートは、推奨されていません。

ストレージは、RAID1構成にしたかったので、同一のものを2台づつ用意しました。というより、保管してあったHDDです。まずは、4TBのHDDです。

次に6TBのHDDです。セールの時にまとめ買いして放置しておいた物です。
この4台のHDDでRAID1構成として10TB分のストレージ容量を確保します。

PSUは、Fractal Designの650Wです。使用しなくなった電源ユニットですが、80 plus Gold電源でSATA電源供給端子がそれなりにあるので、十分かと思います。

PCケースは、Fractal Design Define R5です。Fractal Design Defineシリーズのデザインが好きという理由で保管していたケースです。
このケースは、ストレージベイがたくさんあり(最大8台)、静音性も高いので、NASには、もってこいのケースかもしれません。大きさを除けば。

グラボは、必須ではないです。余っていたのと使い道がなかったので、取り付けました。
試していませんが、内蔵グラフィックのあるCPUであれば、オンボードでも可能だと思います。(ない場合は、一時的に必要かもしれません)

後から必要になるネットワークカードですが、これも使用していないパーツの中に埋もれていました。幅広いOSに対応しており、もちろんLinuxも対応しています。

リストにすると、以下になります。

  • CPU : Intel Core i7 7700K

  • マザーボード : ASROCK Z270 Taichi

  • メモリー : Micron Ballistix DDR4 16GB×2 (32GB)

  • CPUクーラー : SCYTHE 虎徹 Mark2

  • ブート用SSD : ADATA SWORDFISH NVMe 250GB

  • NAS用ストレージ : Western Digital WD Blue 4TB×2, 6TB×2

  • 電源ユニット : Fractal Design Edison M 650W

  • PCケース : Fractal Design Define R5

  • グラフィックボード (必須ではない) : ZOTAC NVIDIA GeForce GT710

  • ネットワークカード : Intel Gigabit CT Desktop Adapter EXPI9301CT

構成は、完全に自作PCですね。

組立~問題発生

組立は、自作PCを組み立てたことがあれば、特に知識は、必要ないと思います。自作PCと同じです。当初は、マザーボードにあるLANを使うつもりでした。グラボも特に必要ないのですが、余っていたことと、起動時の画面を見れればよいかと思っていました。

ちなみにインストール方法や設定方法については、他の方がブログ等にアップされています。詳しく記載されていましたので、それを参考にされるとよいと思います。

組立が終わり、いざ起動すると、問題発生。
PCからNASにアクセスできないところか、NASがネットワーク上にいません。調べてみると、なんと、NASがネットワークを認識していません。

コンソール画面見ると、マザーボードのLAN自体のドライバーが当たっていないようで、ネットワークエラー(ネットワークが見当たらない)を起こしていました。(ちょうど余っていたグラボをつけておいてよかった)

トラブルシューティング

対策を調べていく中で、他の自作NASを拝見すると、ネットワークカードを追加している事例が多いことに気が付きました。最初は、転送速度を気にしているからと思っていましたが、LANチップによっては、Linux用ドライバーが無いケースもあることがわかりました。Intelチップ信じてた…

知識0の人がLinux系のトラブルにあたるとここで萎えてしまうところです。
ググってみてもトラブルシューティングがあまり事例がないので、基本的にトラブルが少なそうですが、こういう引きが強いのかも。

とはいえ、ドライバーを探したり、当てたりするのは、Linuxだし、ちょっと面倒だし、手っ取り早く、ネットワークカードの追加が必要だな…

手持ちパーツをよく調べてみると、運よくネットワークカードがありました。今となっては、あまり使用しないもので、記憶から消し去ってました。

後から調べてわかるのですが、このカード、色々なOSに対応していてLinuxでもサポートされているものでした。安さにこだわるとLinuxに対応していないカードもありますので、よく調べてから購入するとよいと思います。

そんなこんなでネットワークカードを追加して、NASを起動すると、今度は、きちんとネットワーク上にNASが出てきました。

無事起動~かかった費用は?

無事に起動し、設定が済んだところでNASを構築するために、いくらかかったのかを振り返ると、NAS用に新たに購入した部品は、ありませんでした。
全て手持ちで賄ったため、費用0円でNASを構築することができました。
(手持ち部品にするために使った費用は、別です)

自作NAS PC (側板を外した状態)

ただ、CPUにCore i7 7700Kだったり、マザーボードもASROCK Z270 TaichiだったりとWindows 10環境なら、まだまだ使用できるパーツ類です。
グラボを良いものに変えれば、ゲーミングPCとして使えたかもしれません。

自作NAS PC内部。ゲーミングPCではないので、光る要素は、なし (汚いけど)

そう考え、仮に部品を全て購入した場合、高いと感じていたNAS専用機をはるかに超える金額になり、豪華なNASだなと感じました。
そうこうしているうちにNASを導入して1年くらいが経過しました。


現在まで使ってみた感想

NASの管理は、Web UIでブラウザ上で全てできます。NASからでなく、ネットワーク接続されているPCから操作可能です。アップデートも含め、全てこの画面から行います。詳細の設定には、知識が必要ですが、最低限の設定は、この画面で直感的にわかるのが良いと感じています。

True NASの管理画面 (ダッシュボード)

消費電力や動作音について

24時間稼動させたままにするので、電気代を気にする方もいると思います。この構成で、アイドル時は、57~65W/hくらいの消費電力です。起動時でも~85W/hくらいです。発熱も当然高くなく、ある程度の通気と有線LANが確保できれば設置場所もゲーミングPCのように選ばないと思います。

動作音ですが、アイドル時は、ほとんど気になりません。アクセス時には、HDD動作音が微かに聞こえるレベルで、よく使うファイルは、キャッシュされるせいか、HDD動作音もほぼしません。個人的には、全く気にならないレベルです。

NASを導入してからの変化

NASを導入してから、ローカルにファイルを保存することがなくなりました。PCに取り付けしていたストレージ類もWindowsでいえば、Cドライブ以外不要になりました。(Cドライブも1TBあれば、十分すぎるくらい)

また、この状況から不要になったストレージをNASに回したいところですが、どれも容量が異なっているところが残念なところです。
そもそも、現在の構成である10TBも使い切れていませんが。

その他良かった点について

その他良かった点として、PCのOSを選ばすに全てのPCからアクセスできることと、これは自身の通信環境に依存しますが、読み書きでエラーが起きないことをあげます。

現在、Windows, MACとNASに接続しており、最近、Ubuntuも触りだしたので、UbuntuもNASに接続しています。設定手順もほぼ同一ですし、特にOS特有の何かをしないと接続できないという訳でもないので、ファイルの共有を簡単にすることができます。

不満な点については、自分の要求仕様を満たしているので、これといって見当たりません。強いて言えば、自身のNAS知識のなさですかね。

NASの知識については、まだまだ途上ですので、色々と触りながら理解していけたら良いなと思っています。

最後に。NASに関しての知識がゼロから始めたNASの構築でしたが、意外と自作PC組立程度の知識があれば、構築できるものだなと思いました。
現在でもNASの知識に進歩は、ありませんが、使い勝手の良さに恩恵を受けています。

一見、ハードルが高そうに見えますが、そんなことはなく、古いPCを活用したいな考えているのであれば、USB接続の外付HDDにも対応していますので、このような形でなくともチャレンジしてみるのも良いかもしれません。

PCスキルからNAS導入プランについて記事にしました。↓

様々なNASのメリット、デメリットについて記事しました。↓

自作する時にこだわりたいPCケースについて記事しました。↓

True NAS のハードウエア要件について記事しました。↓


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