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南国の引っ越し業者がとっても自由だったお話

駐在先の南国から日本に本帰国するときのお話。

オーナー側の勝手な都合で引越し開始日が1日早まる、という前代未聞の事態に巻き込まれてしまったが、なんとか無事に搬出、なんとかその後のクリーニングを済ませることができた。

まず引越し業者が私に挨拶をしてくれた。
「よろしくお願いします。持っていくものと置いていくもの、捨てるものを分けておいてください。不要なものがあれば捨てる前に我々に伝えてください。もらって帰ります」と。 

おぉ、斬新。そういう文化なのか。

引越し業者は現地の人達で、思ったよりも手際良く作業をしてくれていた。もちろんお皿も一つ一つ丁寧に包んでくれている。
口をモグモグ動かしながら。 

ん?モグモグ??なんでや???

ふと傍らを見ると戸棚に入っていたお菓子を勝手に食べながら作業をしている。まぁ、食品は持って帰れないし、どうせ処分するなら食べてもらってもいいか、とも思う。

この国に来て随分人間としてのキャパシティが大きくなったように思う。

そんなことを思っていると別の部屋から大音量の音楽と熱唱している声が聞こえてきた。
モノが減り、音が反響する部屋でエコーを聞かせて気持ちよく歌いながら作業をしているらしい。

それで作業効率がアップするならそれも良かろう。 

そんなことを思いながら不要な衣類を仕分けていると、前述のモグモグの彼が「それ欲しい」と不要になった夫のジーンズを指名してきた。

「サイズが合うならどうぞ」と言うと彼は試着を始め、「ちょうどだからもらっていく」と嬉しそうに仕事に戻ってくれた。

機嫌よく仕事をしてくれるなら、仕事中のお菓子も試着も許そうではないか。

文化の違いに戸惑いながらもなんとなく体とアタマが順応してきたので、気をきかせて使い切れなかった食料を「良かったら持って帰るか?」と聞いてみたが「ハラルの記載がないので我々は食べられない」と丁重にお断りされた。

そして、「休憩なので冷蔵庫の中の飲み物もらっていきます」という彼らに「どうぞどうぞ」と勝手にさせていたら冷蔵庫に残っていたビールもなくなっていた。

・・・。
彼らの戒律の基準がわからない。
私が常識だと思っていたものにも自信がなくなってきた。

まぁ、仕事さえきちんとやってくれていたらそれでいいか。と思えるようになったのはいいことなのかどうなのか。

そして合計3日間、自由な彼らと過ごすことになるのだが、なぜか彼らの中で私はバハサ(インドネシア語)が話せることになっており、3日目の朝彼らはご機嫌で「Selamat Pagi!」と挨拶しながらやって来た。

断っておくがこの2日間、私は一切インドネシアな雰囲気を醸し出したことはない。確かに英語には自信がないが、私の英語はバハサに聞こえる訛りなのだろうか。

帰国を目前にしてそんな疑惑が芽生え、少し困惑している。

 

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