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「自分がいない場で、自分について話されている会話」を聞く効果が発見されたエピソード

今後、いろんな人に話すであろうエピソードを「リフレクティング 会話についての会話という方法」で見つけたので、図解しておく。私が説明したいところ以外は極端に省略しているので、詳細は本を読んでほしい。

前提:「ミラノ派」のセラピーの方法

まず、あるセラピーの方法を説明する。二つの部屋があり、真ん中にマジックミラーがある。右の部屋から左の部屋は見ることができるし、音も聞こえる。左から右は見えないし、声も聞こえない。

左の部屋に治療対象の家族とセラピスト2名がいて、いろいろ話す。右の部屋には「観察者」がいて、その会話を聞いている。

その後、左の部屋のセラピストが右の部屋に移動して、観察者と一緒に相談する。

移動した2名は家族のところに戻り、コメントをしたり、処方をする。

これで終わり。

特徴:観察者が中立的にアドバイスできる

右の部屋の「観察者」は、家族の状況等を気にせずに客観的でいられて、それを元にアドバイスができる。

問題点1:右の部屋で介入方法の合意ができない

右の部屋で相談したとして、結論がでないときがあるらしい。みんな見解が違うとか。ありそう。

問題点2:右の部屋で話した結論が、左の部屋に戻ったときに実行できない

右の部屋で出た結論が、左の部屋に戻ったときに、「すぐにまた家族らの悲惨さの中に引き戻されてしまって」実行できないらしい。一部引用する。

一人の若い医師がある家族との面接をおこなっていた。あまりの長きにわたる悲惨な状況の中で、他のことが考えられなくなっているその家族に対し、何か楽観できるような質問をするようにと三度に渡り、ワンウェイ・ミラーの背後の別室で面接者に支持を与えたアンデルセンらは、面接室に戻った若い医師が、すぐにまた家族らの悲惨さの中に引き戻されてしまう様子に直面

「リフレクティング 会話についての会話という方法」P16

出てきたアイデア:治療対象の家族に隣の部屋のセラピストの会話を聞いてもらう

引用する。

「もし興味がおありなら」彼は言った。「あなたがた家族とドクター(柴田注:左の部屋にいるセラピストのうち1名)は、そのままこの部屋で座っていらっしゃってください。この部屋の明かりを落とし、私たちの部屋の明かりを点けます。そうすると、私たちは皆さんを見ることができ、私たちからは皆さんを見ることができなくなります。音声も切り替えられますので、皆さんには私たちの声が聞こえ、私たちには皆さんの声が聞こえなくなります。

「リフレクティング 会話についての会話という方法」P16

つまりこんな感じだ。左の部屋から右が見えて、声も聞こえる。セラピストのうち1名だけ異動して、右の部屋で話す。

その結果起きたことも引用する。

こうして明かりと音声を切り替えてのアンデルセンらによる「クライアント家族たちの会話」についての会話と、その様子の家族らによる観察が行われた。やがて、その会話が終わった後、再び明かりが切り替えられたミラーの向こうに現れた家族達の様子は、それまでとは大きく異なるものだった。家族たちの怒り、あるいは、退屈といった反応を覚悟していたアンデルセンらの予期に反して、彼らは、短い沈黙の後、互いに微笑みながら今後について楽観的に話し始めたのである。
これがその夜に生じたあっけないほどに劇的な出来事のエピソードだ。

「リフレクティング 会話についての会話という方法」P16-17

このアイデアがすごすぎる!

何が変わったのか?

本を読めばちゃんと書いてあるから、私なりの解釈でざっくりと書いていく。

家族側:セラピストらの結論の出ない議論をみて、自らヒントを読み取る

アドバイスや処方をされるより、自らヒントを読み取って対応出来たほうが、効果的な場合がありそう。

セラピスト側:「客観的で正しい観察者」という不愉快な専門家像を脱することができる

完璧ではない様子をセラピスト側も見せることができる。解決策をそのまま見せなくても、勝手に家族側が変化してくれる可能性があるし。

セラピストが家族に観察されるときの会話のポイント

ポイントがあるらしい。

1.断定的な話し方は避ける
「私は・・・と感じた」「ひょっとすると・・・かもしれない」と、唯一の正解ではなく、多様な選択の可能性を提示する。家族側にいろんな解釈の余地を残す。

2.家族について否定的なことは言わない
「家族がこんなことをしないなんて理解できない」ではなく、「もし家族がこんなふうにしたら、どんな風になっていくんだろう」と表現する。

3.家族と視線を合わせない
部屋が区切られていない場所で、セラピストの会話を見せる場合、家族の方に目を向けて話さず、セラピスト同士で向き合って話す。それによって、聞いてる人達を視線で縛ることをせず、「聞かなくていい自由」が確保される。

応用:「上司」と「部下」に置き換えられるだろうか?

上司が右の部屋であーだこーだ話している姿を部下が左の部屋で見ることで、何かおきるだろうか。

・・・と、いろいろ応用できそうだ。

「会話についての会話」は、2on2という方法にまとまっている

具体的な方法は、この本を読めばもっといろいろ書いてあるはずだ(すみません、まだ私は読んでません)。2on2という「対話」についての本だ。

今回は以上です!

追記:オープンダイアログを教えてもらった

私はオープンダイアローグに興味があり勉強していますが、この方法とどんな差が出るのかにも興味が湧きました。

コメントより

知らなかったのでひとつだけ記事をみた。

今回紹介したかったエピソードは「変化前」と「変化後」の両方の比較の部分だ。「変化後」とオープンダイアログは似てるかもしれない。でも、変化前との比較の部分に一番情報が詰まっている気がして、その変化の話を伝えたかったと気づいた。

コメントありがとうございました!

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