ガブテックとかいう前に

こんにちは。バルたんです。

前回のエントリーからさらに緊急事態宣言が出されてそれが延長される見通しになるなど、1ヶ月前には想像できなかったほど日常の風景が変わってしまった感がありますが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

新規の感染者数は減少傾向にありますが、ここで気を緩めると元の木阿弥になりかねないので、もう少しの間はこのインドア生活を満喫しましょう。

さて、感染者数ということでは、

日本はウィルス検査の実施数が少なすぎる とか
路上で倒れた人が死後に陽性だったことが判明した とか
新型コロナと自己診断して保健所に相談したが検査してもらえなかった とか

そもそも発表される数字をを信じていいのかという議論も引き続いているようです。

これは日本に限った話ではないようで、Financial TImesが2020年の死者数を2015~19年の死者数の推移と比較した分析を発表しています。

Global coronavirus death toll could be 60% higher than reported
(日経の翻訳記事は[FT]新型コロナの死者数、公表数の6割増か:FT推計ですが、なぜ元のグラフが翻訳されていないです)

これを見ると、イタリアの震源地となったロンバルディア州では、過去平均を約13,000人上回っていて(+155%)、新型コロナ関連の死者の公表値4,348人の約3倍です。
例年との単純平均からの差異というのは乱暴な比較であって、年によってある程度のバラツキはあるわけですし、他の要因による増減も考えられるので、新型コロナで13,000人死んでいる、とは言えないわけですが、一方でこれだけ大幅に増えているのは、集計に漏れている感染者がいるからだろうという推測は成り立ちます。

で、日本のデータで同じことをしようかと厚生労働省のサイトにデータを取りに行ったのですが、そこで愕然とする事態に直面しました。

人口動態統計月報(概数)
●月毎の概数です。調査月の約5ヶ月後に公表しています。

約5ヶ月後って…。
いま手に入る最新のデータは、新型コロナウィルスの症例が武漢で発生したのが12月なので、それ以前ということになりますね。
試算以前の問題で、何もできない…。

それにしても、概数の集計でこれだけかかるというのはどういうことなのでしょう??
転入、転出、出生、死亡、婚姻、離婚、いずれの情報も役所に届け出が必要な事項なので、処理件数をカウントするだけなら月次のバッチ処理でできる内容なので、何ヶ月もかかる処理ではないはずです。
死因については、手書きの死亡診断書を入力する、という作業が必要でしょうからそれなりに時間がかかるとしても、
毎日発生する業務なので、2ヶ月分も3ヶ月分も溜めているということはないはずです。
各自治体から上がってきた情報を集計して整形して公表する、という工程に関しては、ほぼ全て自動化可能です。

ということで、そこまで気合を入れなくても翌々月には集計できていると思うのですが、いかがでしょう。

それよりも、5ヶ月もデータが手に入らないでも何も困っていない、という行政の仕事の進め方が気になります。
さすがに内部では翌月にデータ集計が終わっているけれども、国民への公表は4ヶ月熟成させてから、ということはないと思うので、霞ヶ関でも5ヶ月遅れのデータを使っていると思うのですが、
そもそもデータに基づいた意思決定とか、情報の鮮度の重要性とか、民間では当たり前に意識されていること行政では全く認識されていない、のだとしたら恐ろしいことです。

流行りの○○techの中にはGovtechという行政のデジタル化による革新のジャンルもあるのですが、
残念ながら当の行政側にニーズがないのであれば、日本で流行らないのも宜なるかな、という感じです。

まぁ、そもそも「税務調査にお土産は必要か?」なんて議論が普通にされていたりもするようなので、まずは利用者を含めた行政に関わる人たちの意識改革が必要なのではないでしょうか。

と、考察してみると、行政のデジタルトランスフォーメーションは道のりが長いですね。一人の国民としてできることは少ないですが、何ができるか考えたいと思います。


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