【「MFA is New MBA」（美術学修士は新しい 経営学修士）】
アート思考セミナーの受講生からMFA《Master of Fine Arts 修士（芸術）》を取ろうと思うが、どう思いますか？
という質問がありました。芸術的感性を生かして新たなビジネスを模索しようと、デザイン思考やアート思考をビジネスに取り入れる動きが世界的に広がっていて自分が非常勤講師をしていた京都芸術大学ではMFAを最短2年間で取得するカリキュラムが今までにない4.4倍という競争率だそうです。アメリカにおいてもMBA出願数が減少傾向にあり、アートスクールや美術系大学に多くのグローバル企業の幹部が送り込まれたり（英国の経済紙フィナンシャルタイムズ）。 給料も待遇も、MBAを持っているより、MFAを持っている人のほうが圧倒的に高くなる時代になっている。（「ビジネスの限界はアートで超えろ!」増村 岳史 著）そうです。
"MFA is New MBA"はアート思考のルーツとも言える2006年に出版された『ハイコンセプト』や『モチベーション3.0』の著者ダニエル・ピンクが書いた論文のタイトルです。
「ビジネスマンには機械にはない人間独自の能力が重要となる」、そして「その独自の能力とは創造性の他にないこと」2006年の時点で資本主義の限界やAIの進化を予言していたいかの様なテーマです。
さて、MFAは必要か？
答えは「あるに越したはない」です。MBA(経営学修士)でも、持っているからと言って優れた経営者になれるか？と言えば、そんな事はありません。社会的にはステイタスであることは間違いないでしょう。社会人になっても「学ぶ」ことはとても大切なことです。ただし、座学と実践は異なります。経営に関して、成長の時代は分析や戦略で成果を出す事はできました。しかし、今はコロナ禍で世界が大きく変わる「グレートリセット」と「正解が見えないVUCA※1（ブーカ）」の時代です。Googleの元CEO エリック・シュミットも「これまでの経営セオリーはこの世界では役に立たない」と言っています。そんな背景から分析や戦略を超えた直感や内発的な動機を経営戦略に求められるている、それがアート思考が注目されている理由のひとつです。
だとすれば、芸術史や鑑賞法を学んだだけで直感やイノベーションを生むアイデアが創発されるでしょうか？つまり、知識としてのMFAは教養や概念の客観的な入口に過ぎない。
それどころか、ビジネスシーンにおいてMBA以上の過大な期待に応えるMFAの能力を求められたとしたら、ビジネスに実装できるだろうか？MFAを学ぶことで革新的なイノベーションや新規事業を生み出せる才能が身につくのか？それは微妙ですよね。まず、MFAとビジネスに求められるアート思考は切り離して考えるべきと考えます。アート思考をビジネスに実装する上で必要な事はバイアス（既成概念や固定概念）に縛られず、内発的な創発力（直感）を実現するモチベーション（artist mind）です。これは、アーティストが持っている感性や姿勢と言えますが、実際にビジネスに実装するのは簡単なことではありません。特に思考停止してしまっている大手企業にとってはかなりの覚悟が必要です。
一方でスタートアップの起業家や創業者はこれに近い内発的なモチベーションを持っています。ただし、ビジネスに実装する上では、デザイン思考（共感）とロジカル思考（論理）も必要になってきます。
大切な事はMBAもMFAも同様に肩書きだけでは意味がないという事です。もちろん、教養として歴史や、芸術、文化を深く理解するにはとてもよい学びだと思いますが、概念や論理的思考だけでなく内発的で直感的な artist mindを身につけることがビジネスにおけるイノベーションの実践に求められるとしたら、教養だけでは歯が立ちません。
ビジネスで、特にアート思考が求めるようなMFAを期待する場合、MFAを入り口にして自分に内在するartist mindを呼び覚ますことです。ピカソは『子供は誰でも芸術家だ。問題は、大人になっても芸術家でいられるかどうかだ。』と言っています。
あなたはどれだけ子供の感性を取り戻すことができますか？
もし、座学だけでなくMFAの直感的思考と論理的思考のMBAの両方を身につけることができたら最強です。新しい価値を生み出すひらめきや直感はどうしたら身につくでしょう？先天的な才能だけでなく、発想力はアート思考の実践で開発することができます。
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※VUCA（ブーカ）とは、Volatility（変動性・不安定さ）、Uncertainty（不確実性・不確定さ）、Complexity（複雑性）、Ambiguity（曖昧性・不明確さ）という4つのキーワードの頭文字から取った言葉。
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