【創造性と脳の働き】
近畿大学医学部の脳科学者生塩研一氏の著書「究極脳のつくりかた」を読みながら脳の創造性と機能について考えていました。
例えば、将来の報酬に関わる「やるき中枢」である前帯状皮質の報酬系の機能。動物実験では、ご褒美が近づくほど前帯状皮質の活動は活発になり、ランダムに報酬が与えられると活動が変化しなくなるという研究結果からもわかる様に、やるき中枢を活発化させるためには期待感だけではなく目的(具体的な報酬)が必要だと言うことです。
これは個人にとどまらず、企業経営でいうパーパスやビジョンにもあてはまります。私たち(企業)は何故存在しているのか(存在意義)を明確にして、ビジョン、つまり企業が掲げる社会的意義、目標や、その達成のための道筋を明確化し共有することで組織のやる気が向上し生産性が上がるということです。方向を見失いそうなときメタ認知でパーパスを再確認しながら遂行することでブレのない事業展開をすることができます。
これはダニエル・ピンクの著書「モチベーション3.0」のモチベーション2.0で報酬による生産性です。望まれる通りに行動すれば見返りが与えられ、逆の場合には罰が与えられます。この思考によって資本主義経済、生産と消費のサイクルは加速し、生産性社会はピークを迎えます。やる気中枢によるモチベーション2.0のおかげで終戦後、日本はすごい勢いで高度成長します。その結果、安全で物質的に欲しいものがすぐに手に入り、衣食住に必要な多くのものが満たされた社会に到達します。
そして現在、これ以上の経済発展が見込めない状況に至ります。日本は人口の急激な減少期に入り、100年後の人口は今の3分の1(国立社会保障・人口問題研究所)というデータもあります。単純な話、生産者と消費者が激減していきます。単純に人口だけ見ても国内だけでは経済発展の見込みは薄いわけです。
生産性重視の報酬系社会が今後あまり期待できない時代になってきました。黙って指示に従って同じプロセスを繰り返せば価値になり続ける、頑張った分のご褒美と将来の安定が保証される、、、、そんな時代ではなくなっています。その手の「同じプロセスを繰り返す」仕事はほぼ機械やAIが代行していきます。当然、報酬がなければ生産性は落ちます。さらに成果を出すことへの必死さが視野を狭め、創造性を失わせる結果を招くとダニエル・ピンクは指摘します。
Z世代はすでに気がついています。終身雇用という概念はなくなり、高学歴=高収入という構造さえ高校生がSNSで数100万、数1000万円稼いだ時点で就職が正解か?という疑問すら浮かんできます。さらに、大きな家を手に入れ、外車を乗り回し、ロレックスの時計やビトンのバッグ持ちたいというと価値観は全て報酬であって、それらの報酬系に興味を示さなくなっているのがZ世代の特徴でもあります。つまり、近い将来、Z世代がこの価値観の中心になっていくということでもあります。
物質的に満たされ生産性重視の報酬系社会の限界が見えはじまた今、必要とされるモチベーションは何か?ダニエル・ピンクは、頑張れば与えられる報酬系のモチベーション2.0を「外発的動機付け」、それに対して「楽しいから頑張る」「世界の平和を守るために頑張る」「実力をつけたいから頑張る」つまり自分の内面から湧き出る衝動的な「内発的動機付」をモチベーション3.0としています。
脳の機能から見れば、
とあり、”しっかり取り組む”を自律的で創造的に取り組むと解釈すれば、モチベーション3.0「内発的動機付」は脳のより多くの領域を活性化して創造的で自律的に新しい価値を生み出すことができると解釈できます。
山口周氏は「これからは経済性ではなく、人間性に根ざして動く社会に転換し、「衝動」で人が自由に動けるような社会基盤が必要だ」といいます。この人間的な「衝動」こそ「内発的動機付」でAIには生み出すことができない創造的な脳だといえます。
脳の機能はまだまだ未開な領域もありますが、これからの社会に対して創造性と自律に向けた脳の機能を活性化させていく必要があることがわかると思います。
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