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【何かと話題のNFTやメタバースについて:NFTバブル】

最近、投資家の方からNFTやメタバースに関して意見を求められることが多くなってきました。未来のテクノロジーと社会思想というより、現状では投機案件の側面が強く、あまり興味もなかったNFTとメタバースですが、日本では数少ないメタバース事業の立ち上げに携わった経験もあり、その辺について私見ですが書いてみたいと思います。

NFTについては、90年代から本場NYのストリートでグラフィティーを描き続けているshiroさんがCryptovoxels(クリプトボクセルズ)というメタバースでNFT作品を販売したことで興味を持ちました。デジタルアートでなく、フィジカルな作品をメタバースで販売するって良いな、、というところからバブルだと感じていたNFTにちょっとだけ興味を持ち始めました。

shiroさんの作品をNFT化するにあたり日本のクリプトアーティストコミュニティ”NFT & CRYPTO ART JAPAN”を運営している浅田 真理さんがサポートしていて、浅田さんとは7年ほど前、逗子のメディアアートフェスで知り合いになったのですが、浅田さんの誘いで横浜で開催された先端的なアートを集めた企画展「グレートリセット・スモールリブート ~その後をつくる創造力」のトークセッションにスタートバーン株式会社のCEO 施井氏他と登壇しました。この企画展のタイトルやコンセプトはとても魅力的ですよね。
NFT作品についての話が中心でしたが、そこで、自分が話したのはアートは文明が始まった縄文時代からテクノロジーと同様に人間が追い求めてきた事で、人間自身がオンラインで生きるメタバースや経済がオンライン化するNFTそして、AIが思考する時代にでアートとテクノロジーとの対話はこれからもっと重要になる、、、
みたいなことを話したかと思います。いずれにしてもNFTに対する注目度の高さを感じます。

海外のオークションサイトでNFTのデジタルアートが「75億円」や、日本でも「小3生、NFTアートで4000万円ゲット」(スッキリ/日本テレビ)など話題ですが、

2021年になって急速に規模が拡大しています。これは初期の購入者だけでなく転売が動き始めているということでもあります。だたし、CryptpunksBored Ape Yacht Clubなどのいわゆる高騰した作品によって底上げ生まれている市場であることを前提に見る必要があります。

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21年8月過去最高の34億ドルの後、78%減少。その後、1月9日には、1日あたりの取引高としては過去最大の2億6100万ドルを記録。「Bored Ape Yacht Club(ボアード エイプ ヨット クラブ)」の価格高騰が原因となりOpenSeaの取引高の約10%を占めているが平均して1日当たり1億ドルを超える取引が続いている。

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まず、NFTの特徴として、、
1、唯一性を証明できる
2、改ざんできない
3、データの作成者/所有者を記録できる
4、転売時に作家に対してロイヤリティーが支払われる

今までのデジタル作品は、簡単にコピーできてしまうので1点モノの芸術作品としての価値がなかったのですが、唯一性を証明できるという点でピカソの絵画同様に1点モノにできるのが特徴です。また、既存の芸術作品は一度購入者の手に渡りオークションに出されると作者には支払いが発生しないのに対しNFTはブロックチェーンで管理されているため購入者がより高い値段で他者に転売した際に、手数料を作者に発生させることが可能です。

でも、ここで誤解している人も多いと思います。

1、NFTトークンの所有権を証明するものであって、紐づいたアート作品の自体の所有権や著作権を証明するものではない。
2、 NFTはDRM(著作権保護技術)ではなく、アート作品のコピーを防ぐ技術ではない。また、改ざんできないのはブロックチェーンで作品自体ではない。
4、NFTマーケットプレイス以外での転売にはロイヤリティはつかない。

このページのトップ画像ですがBeepleという人のNFT作品でクリスティーズで75億円で落札され話題になった作品ですが、どこにも証明はありませんし、スクリーンショットで、はい、終了。

さらには、偽物NFTが出回っているという問題。
唯一性を証明できるというのは物理的に複製できないという意味ではありません。つまり、なりすまし詐欺はとても簡単に成立するということなんです。無断で盗用する人にとっては格好の漁場ということになります。わかってない人が多いので釣り放題。なりすましに対して適切な法的罰則がまだ適応されていない様です。

NFTは現行法令上の概念にはないため、法改正が行われない限り規制や罰則は現行法の何に値するかという対応になるそうです。つまり、取引の安全性は現行法では守ることが難しく、法改正にあたっても金融庁、経産省、法務省他、各監督官庁をまたがるため統一見解が生まれにくいと思われます。また、世界に流通しているため国内だけでは規制できないという問題もあります。さらに金融庁が公表した仮想通貨関係の事務ガイドライン改正案では「テロ資金供与やマネー・ローンダリング等に利用されるリスクのほか、適切な監査が実施できないなど業務の適正かつ確実な遂行の確保が困難となる可能性が高いと考えられる」とされています。

つまり、不安定な市場に対する先行優位の儲け話の様に思われても仕方がない、そして同時に無法地帯で、一攫千金狙える的な要素もあります。そこが面白みでもありますが、悪質な人にとってはうま味にもなり、何もわからず飛び込んでしまうのは注意が必要です。

問題はいくつもあるけど、75億!とかメルカリLINEGMOがマーケットプレイスに参入と聞いて、よくわからないけど「儲かる」と思ってるだけで、そっちが優先するあまり作品としての本質的な価値が置き去りになっている点が一番気になります。しっかりしたコンテクスト(文脈)を持った作家の作品以降、マーケットプレイスに乗っている作品は<儲かるから>の作品ではないのか?もちろんお金は大事、でも、お金が目的の作品って価値があるのか?つまり、現状では資本主義の餌になっているといっても良いと思います。ブロックチェーンやNFTの思想には共感しますが、現状では思想と現実の乖離が感じられます。

NFT作品に数千万円払うのに、仮にそれがリアルな1点ものだったらどうでしょう?数千万払いますか?それって、NFTだから価値があって作品自体の価値ではないですよね?つまり、NFTというシステムにお金が発生していて、作品の価値よりシステムの投機性が注目されバブルになっている。ということではないか?

アーティストは嬉しいはずです。自分の作品が高値で評価されたのだから。。。ちょっと待って。作品が自体が評価されたのですか?NFTだからではないですか?それ嬉しいかな?

例えば、こんな例があります。

東証一部上場のGMOインターネットグループが運営するNFTマーケットプレイス「Adam」で坂本龍一さんの楽曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」を595音に分割してNFTにして1音10,000 円で1次販売。2次販売では高騰し再販価格1000万円になっています。

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NFTで1万円で買った1音を1000万円で転売しようが買った人の自由です。買われる事がなくても自分にとって芸術的価値があるという表明にも取れますが「価値」と「意味」あるいは「文脈」は見る人が決めるのでNFTバブル=単なる投機の様にも見えても仕方ありません。だって、投機と見てる人がお金出してるんだから。
※投資=未来の可能性に対する意味と価値、投機=短期的な利益を生む相場。

売上のロイヤリティー分配は
坂本龍一 50%
株式会社幻冬舎 25%
エイベックス・エンタテインメント株式会社 25%

坂本氏の売上はマネジメント手数料を引いた本人受領分の全額を、以下の団体へ等しい料率で寄付するそうです。

・国境なき医師団
・ペシャワール会
・グリーンピース ジャパン

坂本さんの1音を1万円で買うことに個人的には芸術的価値を見出せない。しっかり音楽として聞いた方が感動するのは間違いない。それが100%チャリティーなら別として、たった1音が1万円から数千万となるのはNFTバブルに乗っかった儲け話つまり投機としか思えないんですよ。

最低でも595万円の売上と、すでに多くの転売が始まっていて、その転売ロイヤリティーを含めるとかなりの額になります。単純にGMOはプロモーションとして利用し、幻冬社、エイベックスは25%づつの利益となる。この構造はアートプロジェクトなのか投機案件なのか。。。

結局のところアートが株とか投資、つまり資本主義の餌になっているという事なのではないかと思うのです。ポスト資本主義、それこそ脱成長に共感する自分としては資本主義へのレイドバックテクノロジーの様な気もします。

もうひとつ気になるのがNFTはブロックチェーン技術を活用しているため、膨大なエネルギーを消費すると言われています。イーロン・マスクが「ビットコインのマイニング(採掘)と取引のために化石燃料、特に石炭の利用が急増する状況を懸念している」という理由でビットコイン決済によるテスラ車の購入を停止を表明、ツイート後にビットコインは約2000ドル下落しました。

また、BTSの所属事務所がNFT事業に進出するにあたり一部のBTSファンが「環境親和を強調してきたBTSの考えとも合わない」と反対しています。https://news.yahoo.co.jp/articles/9bff73d2fb3392c7cbfd649dfe92cbdaf56c1fc2

こういった背景もあってか坂本龍一氏のプロジェクトはさすがです。この環境問題に対し

「今回のプロジェクトのプロセスで排出する/したと推定されるCO2は、1次販売終了後に速やかに算出し、more trees および ブルードットグリーン株式会社が手がけるプロジェクトによって相殺(オフセット)します」

としています。これは芸術活動に伴う環境問題への配慮とも言えますが、坂本氏のマネージメント、幻冬社、エイベックスの利益のために微々たるものとはいえCO2が排出されたことには違いないわけです。実際はこのプロジェクトのCO2排出量がいかなるものかはわかりませんが、それだけ気にするなら企画自体を「問う」必要もあるのかと思います。(まさにこれが「SDGsは大衆のアヘンだ」by 斎藤幸平につながりますね)

ブロックチェーンの思想的背景は国家や企業の中央集権や既得権益による権威主義から脱却して、個人主体のつながりによる分散型の信用システムを実現するテクノロジーであることが思想的な背景だと思っています。この思想自体、ポスト資本主義とテクノロジーの重要な関係だと思っていたのですがNFTバブルは見事にアートも引き込んでザ資本主義してますね。

この本質的な期待値(思想)をNFTアートに置き換えると作品の本当の価値と評価を信用によるシステムを通じて芸術家へのインセンティブに還元できる可能性はあるとおもいますが、まだまだ時間がかかりそうです。

Facebookは今後メタバース関連事業の開発に1万人雇用することを発表し、すでにメタバース領域に年間約1兆円を投じていいます。

リンク先でメタバース×NFTあるいは仮想通貨でオンライン社会への移行が加速する可能性について書きました。将来的には閲覧する、または交流するSNSとしてのwebブラウザの世界から、オンラインで生活するメタバースに移行することは間違いないでしょう。

また、Twitterもビットコインによる仮想通貨チップ機能を開始し、NFT作品をプロフィール写真にする機能を検討しています。プロフィール編集で仮想通貨ウォレットを連動させると、NFTのマーケットプレイス「OpenSea」のコレクションからNFT作品を購入しプロフィール画面に画像が本物であるバッジ付きで公開することができます。

Twitter社のCEOジャック・ドーシー氏はTwitterのサービスが開始された時の最初のツイート「私のTwitterを設定したところ」をNFTとして公開したところ291万5835ドル(約3億1640万円)で落札されるなど、NFTに積極的です。潜在的にSNSからメタバースやネット経済への移行が始まっているという見方もできなくはない。

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現段階においてはFacebookやTwitterなど大手SNSの参画や TikTokやDisneyもテスト運用にあってNFTバブルです。作品の本質的価値以上にNFT自体のシステムにお金が流れる投機案件を中心にした先物買い市場が先行していると同時に法整備や税制など不明瞭で得をする人もいれば大損する人もいます。

100歩譲ってこのNFTバブル現象自体、つまり作品の本質自体を問うという文脈自体がアート作品である。。。というのはアリだと思いますが、そういう思想の作品をNFT化している人がどれだけいるでしょう?

NFTバブルはアートの本質とは何か?ブロックチェーンの根本的な思想としての並列分散型の経済や社会とは何か?を問い直す良い機会だと思っています。


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