自分の哲学カフェのルール変遷をまとめてみた
以前、哲学カフェについての紹介記事を書きました。哲学カフェは全国で様々なスタイルで開催されており、ルールもそれぞれの場によって特色があります。
自分の場合、哲学カフェを開催していくなかでルールや冒頭の説明が少しずつ変わっていきました。今回はその変遷と、せっかくなので現在の説明を掲載しておきたいと思います。
現在(2023年)の冒頭説明
まず、現在はどのような説明をしているのかを先にご紹介します。
ふだんはスケッチブックに項目を箇条書きして参加者に説明していますが、口頭で説明している内容も文字にしてみました。
お読みいただくとわかると思いますが、私自身はあまり「ルール」という表現をしておらず、どちらかというと「心構え」という表現を好んで使っています。なんとなく「ルール」というと参加者の行動を具体的に縛るようなもの、例えば「一人1回は絶対に発言する」のような項目を想像してしまうんですよね。そのため最近はあまりルールという表現を使っていないのですが、この辺は主催者によっても考え方が分かれるところだと思います。
過去のルールの変遷
過去、どのようなルールや説明を採用していたかについても簡単にまとめてみました。
2011年〜
哲学カフェを始めたばかりの頃は以下のような説明をしていました。
■冒頭の説明
哲学カフェは、普段はあまり考えない話題について、じっくり考え、対話を深める場所です。特別な哲学の知識は必要ありません。
■哲学カフェのルール
発言するかしないかは自由。
途中参加・退出も自由。
年齢、職業等は明かす必要はない。
ひとの発言は最後まで聴く。
信条を一方的に押しつけない。
自分の言葉で話すよう心がける。
2014年〜
滋賀や京都で哲学カフェを定期開催するようになって、説明も少しずつ変わっていきます。ルールに加えてアドバイスという言葉を使うようになりました。
■冒頭の説明
哲学カフェは、カフェなどの人の集まる場で、テーマを決めてみんなでじっくりと考える場です。哲学カフェは「ともに考える場」です。哲学カフェは誰が正しいか決める場所ではありませんし、一つの結論を出そうとする場所でもありません。
■ルール
・人の話は最後まで聞く。
・自分の言葉で話すことを心がける。
・「わかったふり」をしない。
・入退場自由。
◼︎アドバイス
・「つまづき」を大事にしよう。
・「仮説」を出してみよう。
・「人それぞれ」から一歩踏み込もう。
・「おなじ」と「ちがい」を楽しもう。
2015年〜
冒頭の説明はそのままですが、この頃からルールとアドバイスという区別をやめて、「心構え」としてまとめて表現するようになりました。
普段よりゆっくり考えよう
みんなにわかるように話そう
「話す」よりも「質問する」「聞く」
「わかったフリ」をしない
2017年〜
この辺りから、冒頭の説明は現在とほとんど変わらなくなりました。自分の関心や大切にしたいことはこれ以降も変化しており、「心構え」的な部分については定期的に見直して更新するようにしています。
普段よりゆっくり考えよう
「話す」よりも「質問する」「聞く」
頭の中にあることを「とりあえず」出してみよう
「わからないこと」にこだわろう
「頭の中にあることを『とりあえず』出してみよう」については、理路整然とまとめてから話さなくてもいい、という思いを込めて設定していました。
2018年〜
いつもよりゆっくり考えよう
「話す」よりも「聞く」そして「質問する」
「わからない」ことにこだわろう
「いま」「ここ」で考えてみよう
この時期には「『いま』『ここ』で考えてみよう」という項目を入れていました。すでに考えたことや本で読んだ知識を披露するのではなく、哲学カフェの場で改めて考えてみる。ということを大事にしたいという意識が当時強かったためです。
2021年〜
この時期から現在とほとんど同じ説明になりました。
よく聞こう、おたがいに質問しよう
ゆっくり考えよう。何度でも立ちどまろう
「わからない」ことを大切にしよう
「大丈夫」かを確認しよう
場によってルールは変わる
今回紹介した説明は昼間に開催している哲学カフェのもので、他の場所や時間帯に開催する会では、また異なったルールや説明を採用しています。
たとえば私は夜に哲学Barも開催しているのですが、そこではBarの雰囲気に合わせて「飲みすぎない」「しゃべりすぎない」「ケンカしない」の3つだけを参加者にお願いしています。依頼をいただいて進行に伺う場合も、その場の目的や特性に応じた説明を毎回考えるようにしています。
最近は梶谷真司さんの『考えるとはどういうことか』で紹介されている哲学対話のルールがとても有名になり、同じルールを採用する場も多くみられるようになりました。ただ、それぞれの場の目的や特性に応じたルールを(ときには参加者と一緒に)考えることも、主催者にとっては大事な作業ではないかと思います。場合によっては、ルール自体を批判的に考えることも必要かもしれません。今回紹介した私のやりかたに対しても、ぜひ色々とツッコミを入れつつ読んでいただけばうれしいです。
(おわり)
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