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105、パクリ2

私のブログで 39,パクリには書いたがここでは別の見方をしてみる。
ニューヨーク (NY) に旅行に行く日本人は多いが、広いアメリカ
は見物するべき場所が多くNYは数日間の滞在になる事が殆どだろう。
或いはビジネス関係であれば数ヶ月、駐在員だと数年になるケースになる。

その数年の滞在期間でアメリカ事情的な著作を出版する人も多くいる。
アメリカはこうである、NYはこうだったとかの断定的意見がある。
それらはタマタマそういう機会に逢ったのか、断定してしまうと読者に
誤解を与えかねない事になってしまう。まさにTPOでその場所、時期、
機会に遭遇してもそれがアメリカとは言えない筈である。

これはアメリカに限らずヨーロッパでもアジアでも同様だろう。
単なる旅行記であれば失敗談なども含めて楽しく読めるが、多くの場合
断定的文章が多い。

所が滞米60年近くもアメリカに住むと西海岸、東海岸側で天候や人種、
宗教などが絡み合い何も断定出来ない事柄が多いのに気がつく。
私は数年の滞在期に否定する気は毛頭ないが、読者に誤解されない文章
であるべきだと考える。

日本にはまだ知られていないだろうとアメリカ或いは他の諸外国で
使われている事をやってしまうのはパクリ以外の何者でもない。ピカソは
「凡人はパクリ、天才は盗む」と言ったが、私がプラット美大で教鞭を
取っていた時によく言った言葉は「テレビや雑誌で見てそれもパクリは
もう既に遅い」クリエイターは誰も見た事がない言葉、形、色などの
追求をし、それがデザイナーの個性だと言っていた。

日本の1960年代は”Monkey see, Monkey do”と揶揄された時代
だったが、そこから品質の向上を求めて今の日本があると思っている。

現在の世界はコンピューターの発達でより小さくなり、どこでも著作権
問題が蔓延っているのも時代の流れである。

私個人の問題だが、このブログの「7、裁き」の終わりのパラグラフで
平和ポスターのカメラマンが私に無断で雑誌の表紙に作品を売り、
裁判になった事があった。彼は著作権は自分にあると言い、私はこの
キャンペーンでプロモーターが作者全員の著作権を取っており、問題は
ない筈だったが、弁護士費用が嵩み、裁判の主張では勝ったが、費用が
かかり過ぎて弁護士代が高くついてしまった。

また私の初めての個展を1972年に青山で開催し、スミ1色とシルバーの
2色でデザインしたNYのビル群をシルエットで形取った作品があったが、
日本のある大手広告代理店で全くのコピーをされ、オモロイからやろうと
なってその代理店を訴えるべく連絡した所、そのデザイナーは急遽渡米し、
私に会うや土下座して謝った。彼は私の元アシスタントだった。

話を変えて日本のパクリは現在でも多少形を変えて続いている。
1979年からウオッカの生産を行っていたスエーデンのアブソルート・
(絶対的)ウオッカの大キャンペーンが行われた。このウオッカの瓶の
形は縦に長く、特徴を持ったクリアーな瓶で世界のデジタル、ポップ、
画家、カメラマンなど総勢300人以上のアーティストに広告が発注された。
アンディ・ワーホール、キース・ヘリング、ローレンス・ガルテルなど
が参加し、大成功を収めて1992年にアメリカのマーケティング連盟の
殿堂入りを果たした。ちなみに同時に殿堂入りしたのはコカコーラと
ナイキのみである。

日本のあるデザイナーはこのキャンペーンからのアイデアを使い、焼酎の
キャンペーンで瓶の形はなんら変わり映えしないが商品を出さずに形だけ
での広告はあれっアブソルートだと思わせた。それでも日本国内と海外で
多くの賞を受賞したのは、広告費用が稼げたからだろうか?そして源である
アブソルートの広告は日本で紹介されてなかったのだと思った。

彼は日本の地下鉄路線図をデザインしたが、古くは1931年にロンドンの
地下鉄地図をヘンリー・ベックが当時斬新なデザインを博したが、1972年
にはタイプスタイルのヘルベティカだけを主とするデザイナーのマッシモ・
ビニェリが最も明確で分かり易い地図をデザインしていた。

私が最も尊敬する田中一光氏は日本の色について研究をしてきたデザイナー
だが、日本の古くから伝わる古式名称を使用して同じメッセージを伝えようと
している。これは誰がデザインしたとかの問題ではなく、誰がそれらを伝えても
良いのだが、他人がやった事をやる事にある意味クリエイターの1人として
憤りを感じてしまうのだ。

このブログは書くべきか書かざるべきかと迷ったが、クリエイティブとは
何か?オリジナリティとは何か?を、ありのままに書けるのは貴方しかいない。
それで敵が出来ても良いじゃないか、との勧めがあり書く覚悟を決めた。
80歳になり、もう私には失う物は無く何も怖い物はない。

終。

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