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【利府トレイル】 暫定ルートを歩く

2023年9月、利府トレイルの暫定ルートを歩いてきました。紙の公式マップもなければ道標もない、そんな未完成の状態を楽しみにしていたのです。いや、もちろん正式開通にも期待していますよ。でもほら、冒険探検の度合いがぐっと高まるでしょう?

信越トレイルやあまとみトレイルは、その大半を山や里山が占めている印象ですが、利府トレイルは「町と裏山とを行ったり来たり」な感じ。なので、水場やトイレ、補給に困ることはありませんでした。反面、住宅地・商業地が多いので、野営場&宿が課題となるでしょうか。

Day 1(9月10日)

偶然にも「利府トレイル体験会」なるイベントが開催されるとのこと。せっかくの機会なので暫定ルートを歩き始める前に参加、20名ほどで約4km のコースを歩きました。「利府に鉄道があるのは、大地主が土地を提供して新幹線総合車両センターを誘致したから」(だったかな?)みたいなお話も聞けて、歩く前に “利府の解像度” があがったのであります。

だいたい、わざわざ「歩く」という選択をする人が集まるのだから、いい意味で「変な人」と出会える期待も^^ 石巻で民泊をされているというジゲンさんという方も参加されてました。濃いでしょ? 次元さんじゃなくて地現さんでした。あ、以前にホームページ見たことあったな……

イベント詳細は、タンコーカナリさんのレポートをどうぞ!

体験会を終え、トレイルの存在を地元の方々に知っていただく労力は並大抵ではないと感じました。なぜなら、そこは生活の場だし、暮らすためにはノンビリ歩いてなどいられない(=車移動が前提の土地)からです。でも、このような体験会から僅かでもトレイルを認知してくれる人があらわれたら、ジワリジワリと関係人口は増えていくと確信しました。「灯台下暗し」ゆえ気づかなかったアレコレが見えてきて、新鮮な気持ちになれるからです。

はっきりいって、トレイルなど無くても地元住民は困らないのです。でも、歩くスピードでしか見えてこない物事があります。観光地や景勝地だけを車で転々と巡るだけでは、点は点のまま。その土地を立体的に捉えることは叶いません。しかし、点を繋げて歩けば、それは線になり、いずれ面として見えてきます。生活の場は、点と点の間にあるのです。

一時期、地域おこしと称して “ハコモノ” が林立しましたが、今、その大半は廃れ閑散としているのではないでしょうか。トレイルは “ハコモノ” の真逆にあります。「もとからそこにあるものを、繋げるだけ」だからです。もちろん継続的な整備や手入れは欠かせませんが、トレイルづくりは、地図に線を引くことから始められるのです。


暫定ルートは公開されていますが、あくまで自己責任で歩いています。野営ポイントも参考までにご紹介しますが、その場での野営を推奨するものではありません。今回の旅に対する苦情・苦言などありましたら、タンコーカナリさんではなく、当方までお寄せくださいますよう切にお願いいたします。

体験会を終え、タンコーカナリ代表の石井さんがトレイルヘッド(起点)の「陸前浜田駅」まで車で送ってくださいました!

起点(であり終点)の陸前浜田駅にて
これをターミナスと見なす!(つーか、湾ダーランド、よく稟議通ったな……)

では、地図を見ながら歩き始めるとしましょう。道迷いや余計な散策なども含めたログを貼っておきます(公開されている暫定ルートとは異なります)。

陸前浜田駅から、まずは表松島「馬の背」を目指します。馬の背は観光地ゆえ、混んでいるとサクサク歩けなかったりするので、馬の背観光には最低でも30分はみておくと良さそうです。

馬の背
【01】クリックで拡大できます

【01】の◯印部分、ガードレールを越えて山に入ります。踏み跡を頼りに進むものの、藪漕ぎ&蜘蛛の巣で思うように進めませんでした……道が整備されていることの有難みを感じずにはいられません。

【02】

【02】なんとか山を抜けて、ひたすら舗装路を進みます。時間に余裕があれば、葉山団地から番ヶ森山を経由するのもいいですね。

番ヶ森・須賀方面 お散歩コースpdf
http://www.rifukankoukyoukai.com/sansaku/ban.pdf

夕食は陣中の牛タン弁当と決めていました。出発時刻が遅くなってしまったので営業時間内に辿り着こうと必死(笑) 注文から出来上がりまで15分ほどかかります。

営業日&時間にご注意ください

牛タンスタンドから勿来の関(なこそのせき)ダムまでは、ひたすら舗装路が続きます。梨の直売所が並んでいるので、旬の時期はきっと楽しい! 今回は日没が迫っていたので、急ぎ足で駆け抜けました。

1日目は、ダムの脇にある空き地でこっそり野営。ほぼ舗装されていますが土面も若干あり、非自立式のテントでも張れます。ここは車が転回するための場所と思われますので、ど真ん中は避けたほうが良いでしょう。

ダムの脇にある空き地(翌朝撮影)
ダムの脇にある空き地(翌朝撮影)

Day 2(9月11日)

勿来の関ダムを出発し、まもなく鷹戸屋山(たかとややま)に入ります(【03】◯印)。途中で暫定ルートを見失ってしまったのですが、散歩中の地元の方とすれ違い、電波塔の脇から道を繋ぐことができました。

【03】
鷹戸屋山の電波塔の柵(正面に立ち、右を向いた視点)
電波塔の柵の脇に、このような道(?)が続く

鷹戸屋山を出て学校の前を横切ります。ちょうど通学の時間帯で、小学生に紛れて中年のオヤジが一緒に歩くという……警戒もされなかったけど話しかけられもしなかったなあ。ほどよく都会なのでしょうか^^

館山公園

学校の裏手から館山公園に入ります。こんな近くに山というか自然があるなんて! あまり往来がない雰囲気ですが散歩コースとなっているようで、「居る時は居る」とのこと。ステルス野営は気を遣うかも知れません。

公園を抜けしばらくすると、心月寺の墓地に差し掛かります。ここ、迷宮ポイントです。GPS では道があるはずなのに、いくら探しても道がありません。さて、墓地を上がりきったところに小さな高台があるのですが……

小さな高台にならぶ、2基のお墓
2基のお墓の間を進みます!!!

いやー、これはわからなかった! たまたま居合わせた地元の方に地図を見ていただき、教えてもらいました。こういうやりとり、思い出になりますよねえ。

【04】

お墓の裏道を抜け、花園、青山、しらかし台と住宅街を通り、2日目の宿「うみち旅館」さんを目指します。ところが早く着きすぎてしまったので、どこかでランチを食べようと宮城スタジアムを通り抜け彷徨うハメに。

うちみ旅館

15時過ぎ、うちみ旅館さんに到着……ハイカーの宿にしては、門構えが立派すぎませんかね。

うちみ旅館

えーっ! 汗臭い(それほどでもないんだけど)ハイカーには不相応な(つまり高級感ある)雰囲気なんですけどー! 温泉に浸かり、冷房の効いた部屋で快適♪

(旅費節約のため、夕食は部屋でカップ麺www 余裕があれば、懐石をぜひとも堪能ください!)

Day 3(9月12日)

うちみ旅館さんの朝食 ごはんは土鍋で炊きたて!

いいんですかね……こんな贅沢して。ハイカーとしてはゆっくり目な、8時からの朝食。ゆっくり味わって、9時過ぎに出発です。

【05】

【05】想定内とはいえ、生い茂った植物に行く手を阻まれます(◯印)。トレイルの正式なルートとする場合は刈り払いすることになるんでしょうけど、「誰がやるのか?」が課題ですよね。継続した整備が無理そうなら、自前での整備が不要なルート(県民の森のような)を繋げていくしかないんだろうなあ。トレイル作りは一筋縄では行かないですねえ! 難なく歩けるルートがあるって、当たり前のようでいて実は凄いことなんですよね。

植物に行く手を阻まれる 繁殖力!!!
【06】

【06】県民の森では度々ルートを見失ったものの、方角さえ間違わなければ道を大きく外れることはありませんでした。ただ、かなり広大な森(というか山)なので、油断していると迷います。

【06】岩切城跡からの下山はやや難易度が高いかも知れません。道が不明瞭で、地形図から判断する場面がありました。google map だけだと迷いそうです。また、暫定ルートに踏査前のデータが含まれていたようで、下山して宅地に出たら、当初は無かったであろう住宅が建っていて(笑)、道が塞がっていたのです……タイミングよくあらわれたご近所さんに事情を説明し、フェンスを乗り越えさせてもらい、無事脱出できました。こういうの、その時は大変だけど、いい思い出になるんだぁ。

【06】宅地に阻まれたポイント 【06】の紫矢印方面に迂回か?

神谷沢団地を抜けてしばらくすると、田園風景の中に「菅谷穴薬師」があらわれます。

菅谷穴薬師、面倒がらずにぜひ見て!
菅谷穴薬師
【07】

菅谷穴薬師も見応え十分なのですが、実はその先にラスボスがいます。【07】道安寺横穴古墳群です。これは、古墳にコーフン協会のまりこふんさんも大興奮だったに違いありません。

菅谷不動尊 この先に……
……道安寺横穴古墳群への道があります
住宅の庭に見えますが、ためらわずに進みます
この先をしばらく行くと……

……写真は載せずにおきますね。ぜひ現地でご覧くださいませ! 地図だとあっさりした道に見えますが、わりと鬱蒼とした雰囲気。虫も多いです。

【07】仙台北部道路周辺には田園が広がっています。ちょうど稲刈りの時期ですね。使用頻度の低い道は植物が生い茂っていて迂回が必要でした。

仙台北部道路周辺の田園
加瀬沼

さて、加瀬沼公園(閉園時刻に注意)から、加瀬沼のまわりを歩くルートに入ります【08】。基本的には沼に沿うルートなので大きく迷うことは無いはず……なのですが、踏み跡を見抜く能力が多少必要になりそうです。公式のルートとする場合、ピンクテープの必要性を感じました。また、下草多く蜘蛛の巣が連続するので、通過に思ったより時間がかかりました。「公園ではなく山」と思ってください。沼の北側を歩かず、南に進んで陸奥総社宮を目指すのも悪くない選択肢と感じます。

【08】
加瀬沼 だいぶ日が沈んできた

【08】加瀬沼を過ぎたら、本来の暫定ルートから外れて塩竈方面に歩みを進めます。野営地の見当がつかなかったので、ゲストハウス「みなと丸」さんに泊まることにしていたのです。

鹽竈神社
落としたメガネを探している人

鹽竈神社の急な階段を登っていると、スマホのライトで地面を照らしている人がいました。

「何か虫でもいるんですか?」

「いえ……メガネを落としちゃって……」

蜂を避けようと慌てたら、よりによって茶色いフレームのメガネを落としてしまったのだとか。ここそとばかりにヘッデンを取り出し、最高輝度でメガネ捜索に参戦。で、無事に発見! 私を含め3人で探していて、皆で喜んだのでした。これも旅の醍醐味。

その後一緒に階段を登り参拝。閉門ギリギリでした。

あたりはすっかり暗く

みなと丸に着くと、みちのく潮風トレイルを歩いているハイカーさんが先に到着していました……えっ? 知ってるよ、この人! なんと、旧Twitter で知り合ったハイカー仲間で、彼とは、伊豆のバスに偶然乗り合わせていた過去があるのでした。トレイルマジックですねえ。

タンコーカナリ石井さんと晩餐

夕食後は、みなと丸の宿主ユウスケさんと小一時間のおしゃべり。実は、初日の「利府トレイル体験会」にも参加されていたので初対面ではなかったのです。しっぽりと色々話せていい時間でした。バファリンの半分は優しさだそうですが、宿泊費の半分には、ユウスケさんとの語らいを計上しておくとしましょう。

Day 4(9月13日)

いざ出港!

塩釜水産物仲卸市場での海鮮丼を楽しみにしていたのですが、なんと定休日(水曜)。こうなったら黙々と陸前浜田駅を目指します。

ゴール! 急ごしらえの「タグ」と共に

番外編

陸前浜田駅から美田園駅に出て、徒歩で名取トレイルセンターへ!

トラックの風圧におされながら歩く
今回はみちのくじゃないんだけどね〜 快適な施設でした!

ここでテント泊してノンビリする予定が、仕事の都合で帰京せねばならなくなり、「利府トレイル体験会」でお会いしたスタッフさんとおしゃべりしたり展示をひと通り見たり、シャワーをお借りしたりして……勇気ある撤退w

いつの日か、MCT ハイカーとして再訪したい!

っていうかさ、みちのく潮風トレイルの途中で、利府トレイルに寄り道するのも面白そうじゃない?

まとめ

こうして「未完成のトレイルを歩く」という試みは幕を閉じたわけですが、「ルートって何なんだろう?」って思ったんです。色んな方とのやりとりがあって、もうそれだけで十分楽しかったんですよね。

だからきっと、「正式ルート」の存在意義って、ハイカーが歩きやすいというのもあるけれど、「ハイカー以外の(特に地元の)人がトレイルの存在を認識してくれること」に尽きるんじゃないでしょうか。

私のわがままに付き合ってくださったタンコーカナリの石井さん、ほんとうに有難うございました!


歩いてみようかな? と思ってしまった酔狂な貴方のために資料を置いておきます。公式ページの情報と併せ、ご活用ください。


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