見出し画像

嘘のような本当の話 恐怖という感情を植え付けられたオカルト体験

私は昔から奇妙な出来事によく巻き込まれる。
これは私を知る人物にはよく知られたことで、実際にその奇妙な出来事やトラブルに巻き込まれた人間もたくさんいる。

「Hさん、本当にドラマのような人生ですよね」

と皮肉めいた発言をされることにはもう慣れた。
一番、その特性を知っているのはやはり妻だろうか。何度もその光景を目にしていることから、妻もすでに慣れっこだ。

奇妙な出来事に遭遇することは、大きな経験値にもなる。並大抵のことでは驚かなくなり、とっさの判断や対応力にはかなり影響する。

数え上げればきりがないが、ぱっと思いつく嘘のような本当の話をいくつか綴ろうと思う。

改めて言うが嘘のような本当の話だ。創作でもなんでもなく、事実としてこのような奇妙な出来事に巻き込まれた経験をいくつか紹介したい。

以前に書いた嘘のような本当の話はこちら。

今まで書いてきたエピソードは主に「変な人」に出会ったものが中心だが、今回は心霊体験について綴っていきたいと思う。

ヤンキーコミュニティの夜は長い

これは高校2年生の時のお話し。
私は真面目なつもりで生きてきたが、おそらく外から見たらヤンキーコミュニティの一員だったことだろう。けして悪質なことはしていないが、見え方としては間違いなく品行方正ではなかったのだと思う。

夜な夜なバイクに乗って仲間と集まり、いろんなことを話し、遊び、青春を謳歌していた。
私のなんとない生い立ちは自己紹介を読んでいただくとなんとなく伝わると思う。

私たちは夜な夜な集まる場所の一つとして「墓園」を選んでいた。
広大な敷地と、肝試し的な要素。いたずら好きの若者は入ってはいけない場所とされるところが大好きだ。

今思うと罰当たりな行動だったのだと思うが、当時は一切そんなことは考えていなかった。墓園の入り口は広く、仲間たちがバイクに乗って集まるには非常にちょうどよい環境だった。

その日の夜もいつものようにその墓園に集まりいろんなことを語り合い笑いあい、楽しい夜、のはずだった。


暇つぶしは肝試し

私は幽霊や超常現象、宇宙人などは比較的信じているほうだ。熱狂的だったり、盲信している訳ではないが世の中には人知の及ばないことなんてたくさんあると思っている。

ただ、霊感の類は一切ない。見えたことも聞こえたことも感じたこともない。大体の学校に一人はいる霊感が強いやつが見えたとか何とか言っているのは羨ましいとは思わないものの、なんだかすごいなあと思っていたような人間だ。

とはいえ、当時の私はそれなりに信じているもののなぜか恐怖心が一切ない。若気の至りと言ってしまえばそれまでなのかもしれないが、墓園を夜に一人で歩いて来いと言われても全く気にせずにできた。今はできないが。
そのくらい何か欠落していた部分があった。

ヤンキーコミュニティは根性試しが好きだ。誰が一番気合入っているのか、勇気があるのか、ビビらないのか。そんなことが大好きなのだ。

それを試すものとして肝試しがあった。墓園という環境を利用して、肝試しをする。バイクで1周してきて、墓園の中にあるトイレで用を足す。そして帰ってくる。そのトイレはいろいろな噂のあるトイレで人が死んだやらなんやらいろいろと言われていた。

私は当時、全くそういう事が気にならず、一人で何の抵抗もなく行けた。恐怖も感じず慣れたものだった。肝試しは仲間たちで順番に回して行くのだが、最後までいけない人間もいたし、ひとりでは行けないから何人かで行くような者もいた。

その日は私の親友の一人であるSが彼女を連れて集まりに参加していた。肝試しルーレットがSに回ってきて、彼女もついていくことになった。
Sは無鉄砲な人間で恐れ知らずなタイプだ。彼女は相当嫌がっていたが、Sが面白がって連れていった。

バイクを二人乗りし墓園の闇に消えていく。
バイクなので、墓園を1周してトイレで用を足すことなど10分もかからない。私と仲間たちはSと彼女の帰りを待った。

10分ほど経ち、バイクの排気音が墓園の闇の中から聞こえてくる。

「帰ってきたな。彼女大丈夫だったのかな」

仲間の一人がバイクの排気音に気づき立ち上がった。

闇の中からバイクとS、そして彼女が浮かび上がってきた。
表情を見ると、二人とも顔面蒼白で脅え切った顔をしている。

「どうした?何かあった?」

仲間の一人がSに話しかける。

「幽霊を見た」

みんなSの方を見て、騒然となった。

「トイレで、、おっさんの幽霊を見た。トイレの窓からこっちを見てた。彼女もいっしょに見たから間違いないと思う」

Sと彼女は顔面蒼白で話を続ける。

「多分、ここに来るのはもうやめたほうがいいと思う。」

まさか。
最初はそう思った。何かの冗談だろう。私たちを脅かす為に言っているだけだ。そう思っていたが、Sの表情を見ると真実味が増す。これは演技ではなく、本当に恐れている表情だ。

無鉄砲でムードメイカーのSは本来、こういった肝試しなどは進んでやるほうだし、できない人間はこき下ろすタイプだ。こんなことを言うのは信じられない。仲間たちはおそらく全員思ったことだろう。

Sの彼女が気分が悪いと言っていたので、その日は解散した。


後日、Sからの相談が来る

肝試しの後日、Sから相談が来た。Sとは同じ高校で毎日顔を合わせる。普段は真面目な話など一切しないふざけた人間だが、神妙な表情で、

「話したいことがある」

と言われ、仲間数人と集まりSからの話を聞いた。

「あの夜、彼女が怖いというから、彼女の家に泊まらせてもらったんやけど、その日は普通だった。でも後日、彼女のお母さんに聞いたんやけど、どうやら夜一人で出歩いていると」

「靴も履かずに一人で夜中、出歩いて帰ってくる。どこに行っているのかもわからない。聞いても分からないというらしい。記憶にないみたいで夢遊病みたいな状態」

「それを聞いたから、この間彼女の家に泊まったんよ。それでその夜何事もなく一緒に寝たんやけど、夜中に急に彼女が起きて、、外に出ようとしたから止めたのね」

「その時の顔が、、全然違う人に見えて。。すごい力で止めるのも大変で。。その時は我に返ってそれで終わったんやけど、今日の夜また起きるんじゃないかと。また起きたら俺一人では止めれない」




「・・・マジ?」

私は言った。にわかには信じられないようなことだが、Sの表情を見る限り噓を言っているようには見えない。
要するに我々に彼女の実家に一緒に行って暴走するのを止めてほしい、という事だ。

なるほど。よくわかった。
どうなるかはわからんが手伝おうじゃないか。
Sと私、そして同じ高校の仲間の二人、合計4人で彼女を止めることに決め、彼女のもとに向かった。


ホラーな夜

Sの彼女は全く普通だった。普通に話すし、夜出歩いていることを聞いても全く記憶にはないし、私たちがウソを言って騙そうとしてるんじゃないかなどと笑って話す。

ここまで自然だとSの話に信ぴょう性が無くなってきそうだが、彼女が全く自覚なく話してるところを見ているSはとんでもなく不安で悲しそうな表情をしていた。

彼女の実家で私たちは当初は不安だったものの、あまりの彼女の自然さに和らぎ、いつしかいつものように楽しい時間を過ごしていた。

そして夜。

「そろそろ寝るか」

Sがそう言い、独特の緊張感が走る。
6畳ほどの部屋に男4人+彼女。5人で寝るには非常に狭いが、その狭さが少なからずの安心感を感じさせた。

そして就寝。電気を消し、床にはいる。
私は当然寝れるわけもなく、彼女の方を向いて横になった。

そして、時間が経つ。
誰も話さない、物音ひとつしない時間が続き、何も起きないかと一安心しかけたころ、彼女がむくっと起き上がった。

その瞬間、Sが起き上がり、彼女を抑え込んだ。

「出ていったらあかんって!」

彼女を両手で抑え込もうとするS。彼女は小柄なタイプで身長は150センチほどしかない。普通の男性であれば容易に抑え込めるだろう。
だが、Sは明らかに劣勢になった。

彼女を抑えきれずに、立ち上がろうとする。
ここで私は加勢せねばと立ち上がった。同時に仲間二人も立ち上がり男4人で抑え込もうとする状況となった。

両腕、両足を一人ずつ抑え、彼女を動けないように抑え込む。4人という人数は決してそのような計画をして集まった人数ではないがちょうどよい数だ。これで動けるはずもない。

だが、無言でバタバタと暴れまわる彼女は物凄い力で私たちを振り回す。
そしてその瞬間、私たちは小さな小柄の女性である彼女に吹き飛ばされた。

私は仰向けに倒れ込んでしまい、その瞬間に彼女が覆いかぶさって押し倒され、両腕をつかまれて顔を突き合わすようにのぞき込まれた。

とんでもない形相だった。明らかに今まで見ていた彼女の表情ではなく、男性のような顔つき。別人のような顔だった。これは比喩ではなく本当に別人の顔だった。

そして、何か聞き取れない言葉を私に浴びせた。顔を近づけ、目を凝視されながら何かを言っている。何を言っているかは分からなかったが、とんでもない恐怖感を案じた。

私が押し倒され、抑え込まれている間に仲間3人は体勢を立て直し、彼女を私から引き離す。そして再度抑え込み、しばらく経った後、彼女はおとなしくなり、気を失うように眠ってしまった。

疲れ果てた4人。誰も言葉を発さない時間が流れる中で、仲間の一人が口を開いた。

「Kに相談するか」

Kとは、学校には必ず一人いるであろう霊感が強いとされている仲間の一人だ。Kの祖母は霊能者的な人たちと繋がりがあり、猫をたくさん飼っていることで地元では有名な「猫屋敷」の主でもある。

Kは仲間と言っても墓園の集まりにはけして来なかった。霊的なものを感じる人間からすると言語道断なのだろう。そのため、今回の一件は全く知らないはずだ。

正直、今まで胡散臭いと思っていた。ただ、こうなっては相談する相手は彼しかいない。そう決めて翌日、Kに会いに行くことにした。


猫屋敷の主と霊媒師

翌日、彼女を連れてKを訪ねた。
Kに事情を話すと

「言わんこっちゃない。そんな場所で遊ぶからや」

その通りだ。私はこの一件から恐怖心というものが芽生えた。
彼女のあの表情は今でも忘れられない。あの凄まじい力は小柄な女性のものではない。何かの力が作用しないとあんなことはできない。

「ちょっと俺には見えんけど、なんか嫌な感じするし、お前らがそう言うんならそうなんやと思うから、ばあちゃんに聞いてみよか」

猫屋敷の主の登場か。Kの祖母の家は古く、大きい家で猫が何匹いるのかは定かではないが、家の周りに行くだけで猫がちらほら見えるような地元で有名なオカルトスポットだ。家の扉の前にお札がたくさん貼られていることもよく知られていて、誰が見てもなかなか胡散臭い家だと思う。

Kに連れられ、私たちは猫屋敷に向かう。

「ばあちゃん。ちょっと話したいことがあるんやけど」

Kはお札の貼ってある扉を開け、ズカズカと猫屋敷に入って大きな声で主を呼ぶ。
私たちはKの後ろについ猫屋敷に入ると、本当に猫がたくさんいる。何匹いるのかわからないほどの数で、私たちが家に入ると猫たちは一目散に逃げていった。

奥から猫屋敷の主がのそっと登場する。思ったより見た目は普通だ。普通のおばあちゃんといった風貌で、特に霊能者のようないでたちでもないし、不潔感のあるような感じでもない。ごく普通の老人だ。

「なんか友達が霊に憑かれたかもしれんって。俺には見えんけどばあちゃん見える?」

なんだこの会話は。霊感のある家庭の会話はこんなのなのか?
異常な違和感を感じながら会話に耳を傾ける。

「片腕無い人が憑いてるよ。これ、ばあちゃんには祓えんわ。お祓いできる人呼ぶ?」

片腕無い?お祓い?呼ぶ?すごいこと言ってるが、口調は軽い。

そして、知り合いの霊媒師が猫屋敷に来てくれることになった。


絵にかいたような霊媒師と強烈なお祓い

意外と早く来た。
霊媒師ってこんなに近くに住んでるものなんだなとのんきなことを考えつつも、この状況を打開してくれるであろうことに期待した。

その霊媒師は60代くらいだろうか。絵にかいたような霊媒師、神主さんのような恰好をしていて、烏帽子というのだろうか。修行の時に肩をたたく棒?のようなものも持っていて聖徳太子のような雰囲気だ。

「あー…憑いてるな。彼女だけじゃなくて全員お祓いしたほうがいいから始めよか」

そう言って、準備を始めた。お祓いをするときに使う木の棒にぴらぴらしたものがついている物や、大量の塩、ほかにもよくわからないものを部屋に並べ始めた。

私たちは横一列に正座させられ、霊媒師が準備を終えるのを待つ。

霊媒師が準備を終え、お祓いを始めた。
ぴらぴらしたものがついている木の棒をかさかさ振り回し、何やら呪文のようなものを唱え始める。

最初は私たちもキリっとした表情でお祓いを受けていたが、やはりいたずら好きの年齢だ。段々と滑稽な風に見えてきてしまい、非常に不謹慎なのだがニヤニヤと良くない笑顔が出てきてしまう。

ふと隣を見ると、Sと彼女は神妙な顔をしているが、ほかの仲間たちは私と同じような思いだったのか、目が合い少し笑っていた。
これが恐怖の深さなのだろう。私や仲間は確かに怖い体験をしたが、実際に幽霊を見て、憑りつかれているであろう当事者達は私たちより恐怖の感情が深いのだ。

霊媒師のボルテージが段々と上がってくる。何を言っているのかは分からないが、お祓いの呪文?がピークを迎えつつあるのだろう。段々と声量も大きくなり、ぴらぴらがついた木の棒も激しい動きを見せる。

その瞬間、霊媒師から妙な音が鳴りだした。

「ピュイッ!ピュイーッ!!」

どうやら歯笛?を鳴らしているようだ。霊媒師が真剣な顔で歯を突き出し笛のように音を立てる。
そして、霊媒師は山盛りにしていた塩を手に取り、私の顔に大量の塩をぶつけてきた。顔や衣服は塩まみれだ。
私の後も順番に全員に大量の塩をぶちまけていく。部屋中、塩まみれになった。
これまたニヤニヤしてしまう。歯であんな音出るんだとか、ここまで塩の量必要かなどと色々思ったが、笑った顔を隠すように顔を伏せて、お祓いが終わるのを待った。

そして、お祓いの一連が終了した。

「これで大丈夫。祓えました」

霊媒師はさらっと言う。

「昔、犯罪か何かを犯した霊で、片腕は事故か何かで失っていたようです。墓園で騒いでいた時に成仏できない例に憑りつかれてしまったのでしょう。でも、祓えたので夜、憑りつかれて出歩いてしまうようなことはもう無いと思いますよ」

Sと彼女は神妙で、深く反省した表情だった。無理もない。
とはいえ、みんな安心しきった表情で私もここ数日の言葉にしようがない恐怖感はスッキリ晴れた。

だが、なぜか私だけ霊媒師に呼ばれ

「あんた霊になにか接触した?憑りつかれてたのはあの女の子なんですよね?あんたにもだいぶ強く憑いてたよ」

なに…?
何故だ。私は考えた。

そうだ、あの時押し倒されて私に何か言っていた。それを霊媒師に伝えると、

「あー…気に入らなかったんだろうね。」


え?
そうなの?

「とにかく祓ったんで大丈夫だと思うけど、この話は他の人にあんまりしないほうがいいよ。呼び寄せるから」

そう言い残し、霊媒師は帰っていった。

後日、Sの彼女は正常に戻り、夜に出歩くようなこともなく、結果的にお祓いの成功は明らかだった。

そして、話さないほうがいいと言われたこの話。
かれこれ20年以上経つが、結構たくさんの人に話している。
今回はnoteにも書いている訳だ。
特に今まで、この体験を話したことによっての霊的な体験が降りかかってきたことは無い。

だが、私の人生は霊的ではないが奇妙な出来事はたくさん起こる。
それはこの一件が影響しているのかどうかは誰にもわからない。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?