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SUMIYU
2020年9月12日 20:12
~前~† エレクトラの悲鳴を背に私は向き直り、背後から音もなく襲い来た存在と対峙した。私は反射的に短剣を抜いていた。 深緑色の綱が、獲物に突進する蛇のようにこちらの首元に絡みついてきていた。 私は短剣を打ち付けた。 ひと振り、ふた振り、切りつけるたびに綱の裂け目から汁がにじみ、青臭いにおいが濃くなった。 ついに綱の先端は切り落とされ、床に転がった。それはよく見れば、つる植物のよう
2020年9月7日 16:57
~前~† 私はすこし興味が湧いたので、それは呪文書か何かかとエレクトラに尋ねた。あるいは、これが辞典かも知れないとも思った。 知識と言葉の神エスの僕である司書たちは、天と地と海のあらゆる事物の知識を辞典と呼ばれる書にまとめ、彼らの神殿である各地の図書館では日々その編纂を続けていると聞く。 しかし、彼女の手にしていたものはそのどちらでもなかった。 「これはエスの指板と呼ばれるものです
2020年9月6日 22:50
~前~† 私は皆の無事を確かめつつガイオに歩み寄った。 彼が掲げた手の中には、真っ黒に汚れた金属片。見たところ腕輪だ。 「スライムどもはあらゆるものを飲み込むからな、体内に戦利品が紛れ込んでいることはよくあるんだ。」 彼は嬉しそうに腕輪を掌でころがした。 「司書殿!」 「は、はい。」 ガイオが呼ぶと、すこし離れて控えていたエレクトラが進み出た。 「鑑定は専門だと言っていた
2020年9月6日 02:05
~前~† 私たちはダンジョンの入り口を入ると、脇目もふらずに例の昇降台を目指し進んだ。 ガイオと私が皆を先導し、リドレイは術でダンジョンに渦巻く敵意を感知しながら、そしてバンクの狩人であるカリスは罠を警戒しながら、徒党は歩きつづけた。 道中幾度か小さな魔物に遭遇したが、私たちは協力して首尾よく いなした。 リドレイによれば、ティロム神殿は大空を臨む高台の頂上に築かれた塔であり、大祭