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愛を語る

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清世さんの「第二回絵から小説」から生まれた連作短編小説です。 愛を語る→IT’S TOO LATE→暗闇のダンサーの順になっております。
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【短編小説】愛を語る

【短編小説】愛を語る

高校時代のクラブ同窓会があった。
疎遠になった仲が良かった友人と再会して、大いに盛り上がった。
なかには、さほど親しくしていなかった人物であっても話が合った。
数年の年月がお互いを変えたのだろうか。
そのうちの一人と、後日、ふたりで飲みに行くことになった。
有名企業で働く彼の言葉から始まる。

─今、どこで働いてる?
─言っても誰も知らない会社さ、バイトだし。
─だらしないな。将来の夢とかある? 

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【短編小説】IT’S TOO LATE

【短編小説】IT’S TOO LATE

俺は、バーで独り、ちびちびと飲んでいた。
昔の写真を眺めながら。

彼女は幼馴染。近所に住んでいて、よく遊んだものだ。
昔の写真が良い。最近の写真だと生々しすぎる。
彼女といっても、付き合っていたわけではない。
よく一緒にいて、そういう雰囲気ではなかった。兄弟という感じだろうか。

静寂の中、ドアが開く。
男女二人がこの空気に入り込み、カウンター席に座った。
軽く周りを見渡して、アルコールの注文を

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【短編小説】暗闇で踊るダンサー

【短編小説】暗闇で踊るダンサー

美和は、別れると、まっすぐ一人暮らしをしているマンションへ向かった。
歩きながら、電車に乗っているときも俯いたまま。

玄関を開けて入ると、化粧台の前に座った。
化粧台の前にあるドレッサー(卓上鏡)で自分の顔を映してみる。
その姿は、スローモーションのように顔が崩れると、しだいに涙で見えなくなった。

好きなだけ泣けばいいと思った。涸れ尽くすまで。
我慢するほど、また、あとでまた辛くなるから。ふた

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