今日見た夢

朝見た夢を寝起きで書いてます。

今は3月、私は最近高円寺に引っ越してきた。
昔からすごく憧れた街で、本当にずっと住みたく思っていた、念願の場所だった。
私は昔から高円寺に足繁く通っていたので、友達が沢山居る。
たまたま高円寺の知り合いツテで家賃が安い物件があるとの事だったので、そこに住むことにした。それが去年の10月のこと。
家賃2万円。大家と直接契約したので仲介手数料もなし。
大家さんいわく、「高円寺に住む若者が大好きなだけだから利益目的じゃないんだよ」
との事だった。
すごい懐の広いジジイでアル中のダンブルドアと言う異名で呼ばれている。
引越しの挨拶に行った時も、ワンカップを片手に持ってタンクトップとトランクス姿で出てきて、
「あの、これ私の地元の名物のきびだんごです」
と岡山のテンプレート土産を渡すと、
「おぉ、ありがとう!こう見えて歯がないからな、柔らかいものしか食えん」
と、どっからどう見ても歯が無さそうな見た目のおっさんが言うので私は笑った。
私はそんなテキトーでノリのいい高円寺が大好きだった。

そんな感じで新生活をスタートさせた。
8帖の全くボロさを感じない普通の洋室。
家賃2万円だし元々汚いと思っていたので特に不満に感じることはなかったが、なんなら普通のマンションと変わらずに綺麗なのは驚いた。聞くと、10数年前に1回リフォームされているとのことで本当にこの家賃で大丈夫なのかと大家に何回も聞きに行ったくらいだ。
そんな好条件すぎる物件で私は胸を躍らせていた。
そして住み始めて1日、2日、1週間。
荷物の整理も落ち着き、バイトも決まり今のところ困ったことは特には無い。
あるひとつのことを除けば。

私の気の所為かもしれないがずっとどこかで誰かに見られている気がするのだ。
夜に友達と酒を飲んでいても、深夜に寝ていても、朝にベランダでタバコを吸っていても、昼にギターを弾いていても。
私が家にいる間はずっと、どこかからか視線を感じるのだ。
私には霊感がない。でも環境や精神状態が変わったりすると見えるようになる事もあるようで、確かにリフォームされて部屋は綺麗とはいえ、大分築年数は経っている。そういういわく付きの物件だったらどうしよう。
私は幽霊とかそう言うホラー系のものが大の苦手なのだ。
私はスマホを取り出してとある人に電話をかけた。

数日後、友人はすぐに来てくれた。
ネットで知り合った音楽が趣味の友達。
父方の人間が皆、見える人達らしく自分もそういうものが見えてしまうらしい。でもお祓いや考えを読み取ることはできず、言ってることや状況でその霊が良いものなのか悪いものなのかを見分けれるだけとのことだ。
早く霊感のある人に見てもらわなければ私の生活が脅かされてしまう。呪われてしまうかもしれない。殺されてしまうかもしれない。だからすぐに友人に連絡したのだ。
私の家は駅から10分ほどの所にあるので駅まで友人を迎えに行き、合流して自分の家に向かった。
時刻は午後8時頃、仕事終わりに駆けつけてくれた友人には感謝。すき家でも奢ってやろう。
「霊道とか昔ここで何があったかとかって分かる?築年数古いマンションで家の前大通りなんだけど」
そう聞くと友人は、
「うーん。何となくでしかわかんないんだよね。うわーこの場所気持ち悪いなーみたいな。プラシーボ入ってるかもしんないけど」
と何とも頼りのないことを言っている。
取り敢えず幽霊がいるのか、いないのかだけ分かればいいや。私は半ば諦めながら友人を家に案内した。
「ここだよ」
少し色褪せた薄緑色の壁の4階建てのマンション。そこまで4つ部屋があり、そこまで大きくは無い。
「どう?今のところ何も感じない?」
「うん、特には何も。とりあえず部屋に入ろう」
私と友人は3階に上がり302と書かれたドアの前に立つ。
「この部屋だよ。あんま綺麗じゃないからそこはごめん」
鍵を開け、友人を先に入るよう促して私も入る。
「どう?変な感じする?」
私は恐る恐る友人に聞く。しかし友人は、
「いや、特にただのふつーの部屋だね。全然幽霊がいる感じはしない。水周りも綺麗だし、湿気も多くないし」
安心した。なんだ幽霊がいないのであればカーテン越しに隣のマンションの人からの視線があったのだろうと私は思った。しかしそんな私を置いて友人は続ける。
「でもやっぱり視線は感じるね。なんなんだろう気味が悪い」
友人もやっぱり感じていたのだ。
「隣のマンションじゃないの?そうとしか考えられないんだけど」
他に何があるというのだろう。この部屋に他に誰かいるなんてありえないし、そっちの方が怖い。
でも、ここは都内で家賃2万円の格安物件。大家の意向とはいえそこまで安かったら何かあるのではと思った。
恐る恐る友人に、
「ここ家賃2万円なんだよね。言ってなかったと思うけど大家さんのご好意で、あんまり利益出さなくてもいいから安く住めるんだよって」
そう言うと友人の顔が青ざめていく。
「絶対何かあるよこの家!こんな場所でこの部屋で2万円なんて、いくら大家のご好意でもありえない!」
そう慌てて友人は言った。
「絶対に早く引っ越した方がいい。何かあってからじゃ遅いよ、ほんとに」
そう本気の顔で言ってくる友人に私は何も言えなかった。
とりあえず今日は心配だからと、友人がビジネスホテルを取ってくれ、私は荷物の用意をしていた。
一方友人は部屋の壁を触り何かをしている。
「ねぇ、やっぱり変だよこの家」
窓と反対側の窓を叩きながら友人はそう言う。
「この壁だけ空洞の音がするんだ。ほかの壁は普通なのに」
怯えた声で友人は続ける。
「この向こうって隣の部屋だよね?」
「う、うん。303号室。壁が薄いだけじゃないの?」
私は友人の言っていることがよく理解できなかった。いや理解したくなかった。
「いや、壁が薄いというか、これを挟んですぐ部屋がある感じなんだ。本当に薄い」
そう言って友人は壁をもう一度叩いた。
「コン..コン..」
私と友人が居る部屋に響き渡る高い音。
例えて言うならトイレのドアを叩いたような、そんな音だった。
「壊していい?」
そう問いかける友人に私は恐怖で何も言えず目を瞑ってうずくまるしか出来なかった。
・・・ドン!ドン!・・・
友人が壁を殴っている。本当に直ぐに壊れそうな勢いで。
・・・ドン!ドン!・・・
友人の殴る音はどんどん大きくなっていく。それに比例して私の動悸も早くなっていく。
・・・ドン!ドン!・・・
目を開けると友人の顔は得体の知れない恐怖と壁を殴る痛みでグチャグチャになっていた。
「ハァ...空いた...」
そう言う友人の声を聞いて壁に目をやると拳のサイズの穴が空いている。
確かに空洞がある。しかも結構広そうだ。
友人が穴を広げようと手を壁に突っ込んだ瞬間、
「ぅわあああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
と急に叫び出した。
急いで私は友人の方に近づこうとすると
「来るな!!逃げろ!!!」
鬼の形相でそう叫ぶ友人に私は恐怖を覚えた。
その時。
・・・ドン!ドン!・・・
また壁を殴る音が聞こえてきた。
しかし音の発生源は彼ではない。
・・・ドン!ドン!・・・
壁の内側から誰かが殴っている。
音がする度に壁が振動している。
・・・ドン!ドン!・・!
私の体は動かなくなり、恐怖でまたその場にへたり込み目を瞑り手で覆う。
何も分からない。何、何?何?何?何?
本当に怖いと声が出なくなるんだと、脳がこの状況を考えるのをやめて現実逃避している。
・・・ドォンン!!!ガラガラ・・・
大きい音が聞こえた。
誰かが壁を突破って出てきたのだ。
友人が咽びながら何かを叫んでいるが何も聞こえない。
恐る恐る私は目を開け指の隙間からその光景を見る。

私の目の前には大家がいた。包丁を持って。
「うぉぉぁぁぁ!!!」
そんな奇声を発しながら大家は私に包丁を振り下ろした。
何秒だっただろうか。こういう時本当にスローモーションに感じるんだ、ほんの1.2秒の事なのに。
逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、そう思っても体は動かない。出来るのは呼吸と目を動かすことだけ。動かした目の先に横にあった酒瓶があった。私はもう考えるよりも先に体が動いていた。に大家の金的を酒瓶でぶん殴ったのだ。
殴られた大家は鈍い声を出し、振り下ろされた包丁は私の肩をかすめた。
そのまま大家はその場に股間を抑えてうずくまった。そして私は左手で右肩を抑えながら頭にもう1発酒瓶をお見舞した。

ふと気がつくと私は自分の部屋のベッドにいた。
部屋の中にあるソファーでは高円寺の友達が1人、酒を煽っている。床にも何人か酔っ払った友達らしきものが転がっている。私も一緒に酒につぶれて寝ていたらしい。
「すごい叫んでたぞ。またあの夢見たのか?」
ソファに座っていた友達がやれやれだぜと言った顔でそう言ってきた。私は掠れた声で、
「あぁ...まだ4ヶ月か...」
「いやぁそれにしても大変だったよなぁ、あの大家があんなことするとは」
「でも、被害が私と友人だけで良かったよ。友人も手を切られただけだったし、頭殴ったのはやりすぎだったかもだけど」
そう言うと友達は、不思議そうな顔を浮かべた。
「何言ってんだよ、お前が金玉殴ったあと、あいつ外に出て人刺しまくったじゃねぇか。5人死んだんだぞ」
友達は、酔っ払った汗なのか、冷や汗なのか分からない汗をダラダラと垂らしながらそう言った。
あぁ、そうだった。頭を殴ったところだけは夢だったんだ。寝起きで酔っぱらいの私は段々と思い出してきた。そう。大家はあの後外に出て無差別に人をさしまくったのだ。
そのまま駆けつけた警官に打たれて死んだ。
「あぁごめん。酔って変な内容入ってたっぽい、頭殴れてればなぁ。今になったらなんであんなことしてたのかも分かんねぇし」
私が眠そうな声で言うと友達は、
「まぁ、生きていて良かったよ。お前に死なれたら困る」
そう照れもせずに言う友達は誇らしく思えた。
その時だった。
・・・ドカァァンン!!!・・・
少し聞き覚えのあるような、でももっと激しい音が家の外から聞こえてきた。
「まさか!!!アイツ!!!」
友達がそう言うと急いで部屋を出て外へ駆け出した。
わけも分からず私も外へ向かうとそこには衝撃的なものがあった。
私の車が20メートル先くらいの電柱に衝突してるのである。
「嘘だろ....」
心の底からそんな声が盛れた。
激突した私の車はバックして道の真ん中で止まり、中から見覚えのある人影が出てきた。
別の友達だった。高円寺の坂田佳子と呼ばれているアル中のババアでよく酒を奢ってもらっている人だ。今日も一緒に飲んでいたが確かに姿が見えなかった。
20メートル先から「ごめぇぇん!」とガスガスで響かない声で叫ぶババアに私はなんの言葉も出なかった。
「アイツ酒買いに行ってくるって言って出てったからまさかとは思ったけど...」
頭を抱えながら友達はそう言った。
そして無情にも車は人が乗っていないまま、クリープ現象で動き始め交差点で右から来た車と衝突した。
結局いちばん怖いのは人間なのだ。
高円寺なんてまともな街じゃなかった。
私は膝から崩れ落ち、掠れた声で無感情で笑うしか無かった

そこで目が覚めた。
体は汗でビショビショで喉は叫んでいたのだろうか。痛く声が出ない。今年に入って1番怖くて悲しくて痛くて悔しくて馬鹿らしい夢を見た気がする。
noteに昇華できるくらいの夢でよかった。怖かったのは事実だが。
これが久々のまともなnote投稿になるのは嫌だなぁ。まぁいいか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?