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買収と記号と

ググろう、製造所固有記号番号、という話。

先日、本邦を代表する総合金融サービス企業であるオリックスが、化粧品、健康食品大手のディー・エイチ・シー(以下DHC)を買収しました。

DHC自体が世間に知られた大企業ですが、ビール好きの皆さんにとって、御殿場で醸造されるDHCビールの去就が気になるところかと思います。現時点において私の観測範囲ではオリックス、DHC双方からビール事業についてのアナウンスは為されてない認識で、今後どうなるのか? 気になるところです。

よく知られている通り、これまでのDHC社の会長兼社長にあたる人物は、近年、民族ルーツや国籍によるヘイトを公に表明した結果、世間から厳しい批判を集めました。今回の買収主体のオリックスは「人種などあらゆる差別を容認しない」旨をコメントしており、今後そういった部分に関するDHCの社会的逸脱には、是正がなされるものと期待します。

DHCのビールはクラフトビールを名乗っています。私的な解釈に依りますが、クラフトビールの根本にある精神に則る限り、特定のルーツや国籍によって誰かを排斥するということは、あってはならないことです。実際論として、クラフトビールの歴史は、誰もがステロタイプとしていた製法・効用・売り方に反例をなげかけることで成立してきた部分もあるわけですし、もっと根本的なレヴェルで、民族や所謂人種、資本、その他社会的な背景に依らず、美味しく高品質なビールを造る方こそがプロフェッショナルとしての尊敬を勝ちえる、そういう世界だと理解しています(もちろん嗜好以前の前提として、現代における健全な商取引の枠組みで民族ヘイトが排斥されるべきことも当然です)。

クラフトビールはカルチャーとしての要素を多分に含み、カルチャーというのは即ち生き様に結びつく部分なので、仮に、ある会社の商品が外形的に、さらに味や効用すらクラフトビールとして最上級のそれと同一だったとしても、根本が上述で触れたようなヘイトに関わる会社だった場合、現代の消費者から選ばれることは困難だと思います。

それはそうと、本邦においてはファクトとして、クラフトビールを標榜する会社の中にも、DHCビールへの委託醸造によって自社ブランドの展開を図っている会社が多数あります。

経済的な合理性に基づく委託醸造について、その是非を問うだけの客観的な反対意見を、私は持ち合わせません。ただし、生活者としての実感として、たとえば「●●(地名)ビール」を標榜している会社が●●という土地とは異なるエリアで生産を行っていて、かつそのことを消費者に明示していないとしたら、それは違和感を覚えます。

具体的には、ビールのブランドを保有する「販売者」と、実体としてのビールを製造する「製造者」が異なる場合があり、特に「製造者」についての情報は「製造所固有記号」で代替できる場合があります。缶や瓶のラベルを見ていただくと御理解いただけるかと思います。というか、とてもわかりづらい場合があることがわかると思います。下記は東京都の解説です。

そのとき、例えば特定の●●地域で販売するビールが、パッケージに販売者である●●地域のビール会社名だけを表示し、実際に製造を行っている別の地域の醸造所の存在については、所見では判別できない「製造所固有記号のみ」の表示で済ますことができます。これ自体についても、直接的に是非を問う立場にないのですが、あなたの地元の名前を使ってこれがなされたら、いかがでしょうか。地域との繋がりを標榜するブルワリーがやっていたら、なおのこと。

ちなみに、製造所固有記号番号は、消費者庁舎のサイトから検索可能です。委託醸造の例に限らず、大手ビール会社の工場による記号の違いも楽しめるので、是非お手元の記号つきビールで試してみてください。ビールだけでなく旅先のお土産なんかでも検索できるので、楽しくもあり、知らなければハッピーという側面もあり。

やっぱり、他所で生産され更にそれを明示していない産品よりは、正真正銘の地元産を選びたくなるのが人情だと思います。勿論、品質や価格など別な要素が関わるにしても。

今回は本文と全然関係ないのですが、代々木上原のスワンレイクパブで飲んだあまりにも旨いゴールデンエールの写真をトップにしました。

見た目も中身も上質な、そして産地も価格も品質も文句の言いようがない、至高の一杯でした。

めちゃ旨、美観ゴールデンエール


以上

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