凡人が奨励会に入って病んだ話

皆さんは自分のことをどう思っていますか?

私なんて…という人もいれば俺様はすごいんだ!という方もいるでしょう

かく言う私も「自分ほど素晴らしい人生をあ歩む人間はいない」と思い込んで実際そうなるといいなと考えている。それが大体14歳の頃の私でした。

私が本格的に将棋を始めたのは12歳のころ、プロを目指している人は基本的に1桁代の年齢で将棋を始める。つまり私はかなり出遅れているという訳だ。

将棋界のことを知らない人のために説明すると将棋のプロになるには「奨励会」というところに入り上に上がっていくとプロになれるという感じだ。そこには年齢制限というものがあり何歳までに初段にならなければ追放という感じの世界である。

奨励会に入るにも試験があり、これは毎年8月に行われる。15歳の時に初めてこれを受験したが結果は惨憺たるもので、スイミングスクールに通って3日でいきなり荒波に突っ込むようなものであった。帰りの電車では茫然自失、霊魂昇天といった感じであった。

2回目、16歳。大学受験で言えば一浪している。ここでも私は不合格。ここでは勝てば合格という勝負で99%勝ちの局面を作り、安全策をとった私はとんでもないミスを連発し負けてしまう。そこからはメンタルを立て直すことが出来ずに負けが続いた。

3回目にしてようやく合格、奨励会1年生である。このとき17歳、二浪での合格であった。二度あることは三度あるというが三度目の正直という言葉もある。どちらの卓を引くかは正直分からなかった。

17歳といえば私は高校2年生でもある。ここで私は病んだのだ。

学校を1日休んだ日、その日に役員を決める的なのがあり押し付けられた。忙しいのが好きだった私はめんどくさいと思いつつ仕事を進めていた。学校の将棋部では部長を務め、家では将棋の勉強、学校生活では役員やら係やらの日々。忙しさと楽しさとが混ざっていた。

忙しいの「忙」という字は「心を亡くす」と書いて「忙」。つまり私がうつ病担った原因は容量オーバーによるものであった。

恐らくうつ病になる人の多くは忙しすぎたか人間関係かでの発症が多いだろう。私もそのひとりだ。

奨励会の例会1回目、3連敗したもののこれが奨励会の強さと怖さか、楽しみだなと思っていたのでこの日はまだ病んでいなかった。

翌日、なんだか様子がおかしい。つまりこの時である。将棋で頭を使いすぎてネジが飛んだのだ。

例えるなら偏差値が平均くらいの人が二浪のすえに東大に受かり、合格した安心感と勉強は楽しかったがレベルについていけずのストレスで病んで退学する…といったものであろう。

そこから1年。奨励会を休んだ。その少し前にとあるプロがうつ病になったという本を出していたので将棋界にもうつ病の理解が少しあったのが幸いし、休むことを了承してくれた。

1年間何もせずということをして奨励会に復帰するも心の中では暗いイメージをすることしかできず、勝負の間は3手先を読むのがやっとという状態だ(ちなみに1手先を読む難易度が分数の掛け算くらいだと思うのでその3倍難しいと思ってください)

当時の私の奨励会を辞めたい理由というメモが残っているのでそこに書かれていることを丸々引用する

精神的に辛い
勉強が続かない
結果が出ない
楽しくない
やってる理由もない
期待が辛い
まだ鬱は治ってない
お金にならないことを必死にやってると生産性がないと感じる
体力がもたない
寝れない
周りの目が弱いものを見る目で嫌
アマチュアで楽しくやりたい
入会から1年たったがこの1年は歴代で1番最悪だった。
仕事の方が絶対楽しい
見切りをつけるタイミングと判断

今この文を見たら甘ったれてんなと自分で思うがその時の感情の自分に私がそう言ったら間違いなく死んでいるはずだ。駅のホームに立つ間の線路の吸引力はすさまじい。うつ病への理解がある人と無い人。うつ病になった私がこう思うのだ、うつ病に理解がない人が鬱は甘えというのも分かる。しかし鬱は病気である、症状は楽しいという感情の9割を失い死ぬように行動する病気という認識をしてもらいたい。

上のメモを書いた2ヶ月後に奨励会を辞めた。そこから私はどうしていいか分からずにいた。

そしてそこから少し経った後に私に天に預けていた福が返ってきた。惜福を心がけていたおかげである。

ちなみにこの惜福という言葉は私の尊敬する元名人、米長邦雄永世棋聖が好んで使っていた言葉である。

将棋は私に夢を与え、全てを奪い、そして何かをくれた。そう考えるとうつ病になったのは自分にとって大きなプラスだと思う。


因みに奨励会はすごく楽しかった。仲間というかつるんでる奴らがいて色々話したり、将棋の勉強をしたりと充実していた。

1番嫌だったのは電車だ。電車。電車。

もし電車に乗るのが辛いと思ったら精神科に行きましょう。仕事を辞めてでも休養につとめましょう。死ぬよりはマシですから。

将棋をやってる人は是非とも「うつ病9段」を読んでみてください、あの作品がなければ僕は鬱に気づかず死んでいましたし読んどいて損は無いと思います。

長い駄文でしたがここまで読んでくれたありがとうございます。拡散してくれると嬉しいです。