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砂漠に座っているが部屋の中にいるような感じがする。砂面や、空もオレンジで風はない。柔らかい空気がする。角の生えた女がおれの膝に頭を乗せて、蜜蜂の話をしている。ふさふさの体毛、大きな複眼、刺した相手と、自身を殺す針。おれは相槌もまばらに、空いた方の膝にギターを乗せて、ブルーズのフィンガリングを練習している。人差し指と中指でフレーズを反復して、親指でEからAのルートを行き来する。頭に巻いていた布が落ちて、女の顔にかかる。そっとそれを拾うと、見開かれた女の瞳が現れ、黄色い光彩が濡れたように光っている。この好意は何度生まれ直しても叶うことは無い。強く口を結んで、瞬きもしない女の目に映る、逆行で黒くシルエットになったおれの顔


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