吉見マサノヴ

作家・ライター・心理カウンセラー。 看護師、精神保健福祉士、公認心理師、キャリアコンサ…

吉見マサノヴ

作家・ライター・心理カウンセラー。 看護師、精神保健福祉士、公認心理師、キャリアコンサルタントに教員かつ三児の父。 徹底された鮮度、計算され尽された楽観主義者。

マガジン

  • 邪念走 番外編(チーム プロ・フィッツ)

  • 邪念走 第1~10回【気まぐれ~駆け出し編】

    40代ライター 吉見マサノヴがランニング中に湧き出てくる邪念と煩悩について語る現在進行形ランニングエッセイ。 走ろうと思い立った日からランニングビギナーになるまでの過程。しかし湧き上がる邪念の多さに翻弄され、なかなか前に進めない日々。

  • 邪念走 第21回~

    40代ライター 吉見マサノヴがランニング中に湧き出てくる邪念と煩悩について語るエッセイ。 走り始めからハーフマラソン、フルマラソン、そしてウルトラマラソンまでの過程と邪念。主に邪念。ちなみにウルトラマラソンは未経験。現在進行形ランニングエッセイ。 第21回から掲載。

  • 邪念走 第11~20回【仕来り~二の足編】

最近の記事

【邪念走】番外編 第3回 小さなブリッジを渡る。

「というわけで洗浄力重視で価格を抑えたい方は」 6回目……。 「ドラム式よりタテ型をオススメしております」 7回目……。 「マンションのような集合住宅でも」 8回……。 「置き」 9……。 「やすいですからね」 10! そうして店員は洗濯機の操作パネルを触り始めた。洗濯機を買い替えようと近所の家電量販店を訪れ、店員に縦型とドラム式のメリットやデメリットを聞こうとしたところ、「いらっしゃいませ」……。「洗濯機のご購入でしょうか」……。「ドラム式とタテ型ですか」……3回

    • 【邪念走】番外編 第2回 走りながら回復する力を手に入れる。

      薄型圧迫固定サポーターで踏ん張る力を手に入れた1ヶ月後、株式会社ピップから今月のサポーターアイテムが届いた。「スポーツテックタイツ」と書いてある。タイツである。ちゃんとしたタイツである。そう、私がマラソンを始めるきっかけになったのは、ちゃんとしてないタイツが始まりだった……。 4年前の真冬の日曜日の午後、やることが何もない私は上半身裸、下半身は黒い防寒タイツ姿でプロレスラーのポージングを取っていたが、すさまじく寒いのとあまりにも貧相な身体に惨めになったため、早々に長袖Tシャ

      • 【邪念走】番外編 第1回 踏ん張る力を手に入れる。

        「邪念走」本編は、ランニングを始めてからハーフマラソンの参加、フルマラソンへの挑戦、そしてウルトラマラソン達成の軌跡を描く感動巨編のはずなのだが、ランニング中に沸き起こる邪念があまりにも多すぎて、現在24話を記載したももの、いまだにランニングを始めて半年後、ハーフマラソンに初挑戦した場面という、ワンピースのドレスローザ編並みの長さになっている。 まだ2016年の話である。あれから4年経って、ウルトラマラソンはまだ走っていないものの、フルマラソンは2回走っている。しかし「走っ

        • 【邪念走】第24回 タグを確認せずにセックスする。

          ハーフマラソンデビュー戦ははっきりいって惨敗。後半10kmは荒川沿いを散歩するただの休日の会社員と化してしまった。デビュー戦といえどももう少しまともに走れると思っていたが、こんな結果を迎えるとは。人生のあらゆることがそうであるように「まあそれなりにできるだろう」と、あまりにも楽観的に考えていたのだ。 基本的に「なんとかなるだろう」と行き当たりばったりの思考パターンなので、挫折を経験したことがなかった。たとえ失敗したとしても「まあ、あんな準備だったらそりゃ失敗もするだろう」な

        【邪念走】番外編 第3回 小さなブリッジを渡る。

        マガジン

        • 邪念走 番外編(チーム プロ・フィッツ)
          3本
        • 邪念走 第1~10回【気まぐれ~駆け出し編】
          10本
        • 邪念走 第21回~
          4本
        • 邪念走 第11~20回【仕来り~二の足編】
          10本

        記事

          【邪念走】第23回 女スパイを追尾する。

          人生初のマラソン大会のスタートの号砲が鳴った。大丈夫、いつも通りに走ればいつも通りにゴールするはずだ。思い煩うことは何もない。妻だって応援している。俺は決して大会の雰囲気に飲み込まれていない。気のせいかいつもより足取りも軽い……よし、いける! 約21kmのハーフマラソンデビュー戦、スタートわずか1kmで本番への強さを実感した私は、同時に勝利を確信した。 そして10km過ぎ、私は雲一つない青空を見上げながら月曜からの業務の段取りと見通しを考えていた。すなわち歩いていた。仕事の

          【邪念走】第23回 女スパイを追尾する。

          【邪念走】第22回 完全に息を吹き返す。

          ランニングが習慣になってくると、周囲から度々「マラソン大会には出ないんですか?」なんて言われるのだが、これまで私はただ気持ちいいから、ストレスが発散されるから走っていただけであって、いわば自分のため、自己の快楽のみを目的に走っていた。そしてこれからも独りでひっそりと走り続けようと思っている。なぜなら仕事では人の顔色ばかり窺って過ごしているので、自分の趣味くらいは自分のペースで楽しみたいと思っているのだが、ここまで考えて不意に妻の顔が脳裏に浮かんできた。 そうだ、マラソン大会

          【邪念走】第22回 完全に息を吹き返す。

          【邪念走】第21回 あわよくば敗北を狙う。

          別にダイエット目的で始めたわけじゃないけど痩せればいいな、まあこんだけ走ってるんだから痩せるんだろうな、でもダイエット目的で走っているわけではないからね俺は。と、標準体重より6kgオーバー(68kg)で始めたランニング。5~10kmのランニングを週に2回ほど約1年続けて現在65kg。 思ったほど痩せてない。 まあ、ダイエット目的で走っているわけではないからね俺は、と、あらためて現状を否認するものの、1年走って3kgしか痩せていないことにはやはり疑問が残る。努力に見合った成

          【邪念走】第21回 あわよくば敗北を狙う。

          【自己紹介】

          吉見マサノヴ https://linktr.ee/443m443 職業:作家・ライター・専門学校教員・看護師・心理カウンセラー 資格:公認心理師・精神保健福祉士・看護師・キャリアコンサルタント 恋愛作家としての活動から、精神科・心療内科での看護師・心理士の経験を生かしたメンタルヘルスに関する執筆も行う。 2002年 ファッション情報誌「CROWD」にて恋愛コラム連載開始が作家デビュー。2004年「恋愛歪言」でネオブックオーディション優秀賞受賞。 ◆吉見マサノヴ LIN

          【自己紹介】

          【邪念走】第20回 手抜きではなく加減を覚える。

          『ペース配分を制する者は「走り」を制する』と言われるほどマラソンにおけるペース配分は大事である。常に一定ペースで走るイーブンペース、前半に飛ばすポジティブスピリット、後半にペースアップするネガティブスピリットなど、ペース配分にはいくつかの種類があり、日々のトレーニングで自分に合ったペース配分を模索するのだが、このペース配分を誤ってしまうと自己ベスト更新はおろか、完走すら危うくなってくる。 そういえば今日も一人、職場を去っていった。入職して間もない突然のリタイア(退職)である

          【邪念走】第20回 手抜きではなく加減を覚える。

          【邪念走】第19回 猫背で自分の顔色を窺う。

          ランナー膝は正確にいうと「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」といい、長時間の膝の曲げ伸ばしによって腸脛靭帯が太腿の骨とこすれあって炎症を起こすものである。そんな状態で「いてえな。なんかいてえな」と我慢しながら走り続けていると、今度は足の裏が痛くなる。 これは「足底筋膜炎」というもので、足底筋膜というカカトの骨から足の指の付け根にかけて張っている厚い膜状の組織が炎症を起こしてしまうものである。つまり、膝の痛みをかばって走っていると徐々にランニングフォームが崩れてきて、衝撃

          【邪念走】第19回 猫背で自分の顔色を窺う。

          【邪念走】第18回 しくじらないで生きる。

          5㎞過ぎたあたりから膝の外側に違和感を感じ、ひどいときはその日のランニングを断念せねばならぬほどの鋭い痛みが走る。通称「ランナー膝」といい、ランニング中に起こる膝痛の中で最も多い症状である。これは市民ランナーとしての通過点であり、この痛みにどう対処するかが今後のランナー人生に大きく関わってくるといっても過言ではない。 だから言う。「オレ、走ると膝が痛いんだよねー」と言う。「オレ、飲みすぎて昨日の記憶ないんだよねー」と同じ感じで言う。失敗談にスプーン1杯の虚栄を加え、武勇伝に

          【邪念走】第18回 しくじらないで生きる。

          【邪念走】第17回 でかい笛を振り回す。

          運動不足解消のために軽い気持ちでランニングを始め、それはやがて習慣になり、そのうち走ることが楽しみになり、もしかしてランニングなしでは生きていけない感じ? 俺ってこんなに健康志向だった? と、舞い上がり、つけ上がり、ライフワークの一部になり始めた頃に激烈に膝を痛めて走れなくなる問題について。 何年も運動不足で過ごし、下半身の筋力がランニング強度に耐えられないまま走り続け、数日に一回走るという習慣になるにつれ、筋肉内に疲労が蓄積して柔軟性が低下し体重のかかる膝や足首などに違和

          【邪念走】第17回 でかい笛を振り回す。

          【邪念走】第16回 すぐにメンタルと決めつける。

          「ただ走って何が楽しいの?」と、ランナーなら誰でも言われたことのあるこの質問。ランナーの皆さんはどう答えているだろうか。私は「何で楽しいんでしょうかねえ・・・・・・」と呟いて遠くを見るようにしている。思案に耽りながら顎をさすったりして真剣に、そして自分もその答えを探す旅路の途中にあるという空気を醸し出しながら(早く話題変わんねえかな)と考えている。答える気なんてさらさらないのだ。 これは「プロレスって何が面白いの?」問答と似ている。私はプロレスファンでもあるので、「受けと魅

          【邪念走】第16回 すぐにメンタルと決めつける。

          【邪念走】第15回 へりくだってからへりのぼる。

          「いいニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい?」 こういうタイプの質問をする人を、日本政府は国民10人あたり1名の割合で全国に配置しており、国民のメンタルヘルスを脅かす要因にもなっている。 「えー、何があったんですかー? じゃあいいニュースだけ。ってダメですか(笑)じゃあ・・・・・・悪いニュースから・・・・・・ちょ、ちょっと待って下さい。ちょっと待って下さいね。もしかしてあの件の話? ですか? えーあれダメだったんですか? あー、なんですかそのかおー。その笑いなんなん

          【邪念走】第15回 へりくだってからへりのぼる。

          【邪念走】第14回 生存に不利なモードで生きる。

          ランニングを始めて約半年。走っている最中は相変わらず辛く苦しいのだが、3キロほど走った頃からスッと苦痛が消える時間帯があることに気付く。苦痛が消えるだけでなく、逆にパワーが溢れ、活気がみなぎり気分も高揚、なんだか幸せで気持ち良く、この状態であれば何十キロでも走れそうな気がしてくる。これまで長距離をまともに走ったことがなかったので気づかなかっただけで、実は特異体質、もしくは特殊能力の持ち主だったのかもしれない。 私はこの状態を「極楽浄土モード」と密かに名付けた。 今は数分し

          【邪念走】第14回 生存に不利なモードで生きる。

          【邪念走】第13回 秘密結社であることを告白する。

          ランニングが趣味になったからといって、毎日ランニングしたいかというとそうでもなく、正直なところできるだけ走りたくない。毎回、ランニングに出発する数十分前から頭の片隅でランニングに行かない言い訳を考え始める。いや、「行けない理由」を探している。 そう、「行かない」ではなく「行けない」ことにしたいのだ。 ランニングに「行かない」ということは自分の意志、いわば自己決定となる。しかもその自己決定は、行きたくないことを認める、自分の弱さを認める、決定するということになるので、自分に

          【邪念走】第13回 秘密結社であることを告白する。