わたしにとっての京都。~回想編~
これまでの人生、縁あって京都に行くことが多い。
中学の修学旅行の班行動で訪れた仁和寺。
参拝後に手前で拾って皆で乗ったタクシーで壮絶な車酔いをしてグロッキー状態になる洗礼を受けた。
身を案じたSさんからのティッシュペーパーの受け渡しを、汚してはいけないと思い反射的に手で払いのけた事も、子供ながら大人げなかった。
それ以来、仕事で私用で何度赴いたかわからない。
美術屋にいた頃、出張で某市内の蔵に収納されている古美術品一式を査定のために預からせていただいた事がある。
使用人に案内された薄暗い蔵の中の木枠にはすすけた桐箱がたくさん。
中を慎重に開けると見事な染色の大皿や壺、茶道具一式が出てきて、それらを採寸して、写真を撮って、丁寧に再梱包して東京に送る手配をした。
もうじき施設に入るという依頼主からは
「私のここでの生活もあと幾ばくなので、次の人に大切にしてもらいたい」という言葉を今でも覚えている。
預かった古美術品は記憶が正しければほとんどが落札され、次の引受人のもとへ旅立った。
お盆真っ盛りには下鴨神社の古本祭りのために赴く。
森見登美彦著「四畳半神話大系」を大学生の時に手にして以来、京都駅との往復3万円を払えるお金のなかった10年間を経て、6年ほど前から毎年訪れている。
縫い目の荒いハンカチーフを片手に、酷暑の中3時間ほどテントを回る。
使い慣れた手提げバッグに5~6冊。会計時にもらったチラシを包みにして大切に本を持ち帰る。
きれいに製本された裏表紙に前の持ち主のメモ書きが見つかる。
「2009年9月2日 了 F.K 花丸印」
いい作品だったのだろうと想像し、わたしもこれから大切に読むことを誓う。
ロックバンド「くるり」の出身地ということも忘れてはならない。
高校当時、実家のケーブルテレビで「青い空」という作品を偶然目にした。
人と違う曲をたくさん聞いていたかった時期だったので、耳にした際は圧倒され、当時出ていたアルバムを片っ端から聞き込んだ。
ライブも2回行った。ぎゅうぎゅうにもみくちゃにされながら歌詞を共鳴していたころが懐かしい。
この素晴らしいバンドを生んでくれてありがとう京都。
いつも新幹線で京都駅に降りる手前、降車ドアが開く直前に背筋が伸びる。
ドアが開いた瞬間に吸い込むひんやりとした空気がたまらない。
「帰ってきました」
と勝手ながら現地人を気取ってしまうのも最早恒例である。
四季折々の景色が美しいが、中でも冬の京都がわたしは好きだ。
オーバーツーリズムの名のもと、ここ10年で世界中の観光客が通年で押し寄せてしまったが、一番の閑散期となる正月明けから2月は比較的落ち着いて寺社仏閣巡りができる。
巡り廻って年男である今年。
辰年の象徴である龍図が各仏閣で公開されていたので、縁起参りの様子を報告できたらいい。
初めは一つにまとめようとしたが、いかんせん思い出話が盛んになってしまったので、分割して実際の旅は次回へ続けようと思います。