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マイ本棚、桜吹雪の乱。

春眠暁を覚えず。

いささか日中はほんのりとした太陽の温かさについ眠くなってしまう。
この季節は新しいことを始める時期としても最適である。

かくいう私も最近ゴルフを始めた。

先の健康診断でお腹周りにほんのりと警鐘を鳴らされてしまったため、苦手な運動を取り入れてみようと思い立つ。
矢継ぎ早に揃えたクラブ一式を担いで近所のゴルフ練習場へ。

無論、構えはYouTubeのスイング講座で徹底的に頭に刷り込んだから大丈夫だろうと高を括って望んだものの、頭の中と実際身体を動かすことはなかなか一致しない。

ボールの遥か手前を叩いてしまい、クラブから腕そして背中に衝撃が伝わる。痺れが取れるまで、このひんやり冷たいお手拭きを手の上から覆った状態で今このくだりを書き始めた。

以前見た動画ではその道のプロが右手の使い方を執拗に解説していた。

「コ↓コ↑で手首を返す…手首を返す…」
関西弁がやけに強い。

手首の軽やかなスナップ。これだ…!
これをマスターすれば1年後には取引先との社交ゴルフにも堂々と出られ、優勝商品のAランク神戸牛か某千葉国ペアチケットを漫然とかっさらっていくことであろう。

前置きが長くなってしまったので、手首ならぬ踵を返すことにする。

遂にマイ本棚から本が湯水の如く溢れ出した。

読んでも読んでも押し寄せる本の波に私の目が追いつけず、買った本はひとまず丁寧にグラシン紙で包んでから収納する場所を考える日々。

なるべく今読みたい作品、気になった作品を先んじて読み、今読むべきではないと判断した時点で本棚へと再リリース。

読み切らないことに罪悪感を覚えることから解放された現在、気の赴くままに読んだり読まなかったりしている。
本来それがあるべき読書の姿というものではないのか。

先ごろの本屋大賞の発表もあり本の話題が多くなり、
昨秋の本棚紹介から早半年、今年もこの季節がやってきた。

マイ本棚、春の桜吹雪の乱。開戦である。

縦、横、奥行きのあらゆる隙間を活用してどうにか入れてみたものの、
ジャブジャブと溢れ出してしまった。
先日久々に美術屋時代の同僚から連絡が入った。
「まだ図録とか持ってるの?」
はい、この通りです。売ってませんよ。
光文社古典新訳文庫の棚。
ディケンズの「クリスマス・キャロル」、カフカ「変身/掟の前で」辺りは古典文学初心者にも大変読みやすくサクサクと読み進めることができるだろう。
ジェイン・オースティンは最近「説得」が発売されたので買うかどうか悩み中。
須賀敦子の棚。
イタリアエッセイの先駆けとなる文筆家が当時の思い出を淡々と綴っていく文体に憑りつかれた。高橋源一郎のラジオ「飛ぶ教室」でも「ミラノ 霧の風景」が絶賛されていたのが記憶に新しい。
奥の川上弘美、吉田健一の書籍と入れ替えている。
竹西寛子、多和田葉子の棚。
御年95歳を迎える竹西寛子は、広島の原爆をつづった作品が多く、
「五十鈴川の鴨」「管弦祭」など、広島を舞台とした評価の高い作品を多く残している。
一方で、随筆は辛辣。典型的な会社のお局様の戯言をそのまま綴っているような感覚が面白い。
河出書房新社発行の季刊誌「スピン」は7冊目に突入した。
中村文則、堂場瞬一の連作を毎回楽しみにしている。
坂本龍一「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」
昨年亡くなった音楽家、坂本龍一の最期の直前までを書き残した作品。
人はいつか死ぬが、生身の体一つでどこまで人に影響を与えることができるかを考えさせられる。
調味料ラックに文庫・新書を差したところピッタリだったので臨時の置き場としている。
白水社刊行作品はお出かけのお供だ。
この記事をアップロードしようとした際に
ポール・オースターの訃報が飛び込んできた。
現実なのか幻想なのかがわからない中でも繰り広げられる詩的な文体に魅了された。
もう新作を読むことができないのは非常に残念である。

◆最近の読書から

ポール・オースター「リヴァイアサン」新潮文庫版

ベンジャミン・サックスは道端で突然、爆死する。
彼はFBIに追われるテロリストだったが、彼が追いかけるリヴァイアサンとは何だったのか。
過去と現在、捜査を混乱させる事実の連続。
柴田元幸の名訳により何度でも読み返すことのできる力作だ。

氷室冴子「海がきこえる」「ホンの幸せ」

氷室冴子作品のファンである。
代表作「海がきこえる」はつい先日も渋谷でリバイバル上映をされ話題となった。
30年以上前の作品とは思えない甘酸っぱい描写の連続である。
氷室先生の書く書評も面白い。
バブル期の流行や当時のOLの暮らしぶりを描く文章は、
あの時代へ追体験できる楽しみがある。

中村文則「列」

最近気になってしょうがない中村文則作品。
人はなぜ列に並ぶのか、この列の先に何があるのか。
そもそも列とは何か。。
中編小説くらいが一番読みやすいと感じる。

高倉健「素顔の健さん」 石田伸也 (著) 高金國廣 (写真)

ラストは往年の大俳優、高倉健の写真集。
先日広島に出張に行った際に地元の書店で出会ってしまった。
迷うことなく購入。
これを読まずして日本男児は名乗れない…!
キャー健さん!
よっ!健さん!!
帰宅後、夜ごとに唸る圧倒的存在感である。

健さんは任侠映画での桜吹雪の入れ墨が一番似合う。
日本刀一本で佇む殺陣シーンに映画館が千客万来の時代があったことを今どのくらいの人が知っているだろうか。
「日本侠客伝」「昭和残侠伝」など数え切れない名作ぞろいだが、ここではまた話が長くなるので割愛する。

「あっしも何卒舎弟にしてくだせぇ…!」

と申し出る勇気もなく無残にも日本刀で切り刻まれる端役が性に合ってる気がする今日この頃である。

↓昨年のマイ本棚。よかったらお楽しみください。

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