見出し画像

尻も販売も右下がり、ストレッチで背伸びしたスカGの原点はダウンサイジングだった・・・1963年の新型車

テレビアニメ、鉄腕アトムの放送開始に子供たちはテレビ前に釘付けとなり、所得倍増論をぶち上げた池田総理大臣の在任中だったこの年の11月は凄まじいニュースの嵐でした。三井三池炭鉱で起きた大規模な炭鉱事故に加えて、鶴見事故と呼ばれた東海道線と貨物列車の複合事故。加えて東京五輪を控えた本邦初の衛星中継のTV画面に現れたのはケネディ大統領の暗殺事件を伝える速報でした。

日産はトヨタのコロナと販売競争を繰り広げているブルーバードの刷新にあたり、横須賀にほど近い追浜の海浜に大規模な工場を新設します。ここで量産される新型ブルーバード410型は重いフレームをもたないモノコック構造の上にイタリアのカーデザイナー・ピニンファリナの手に依るモダンなデザインを採り入れます。サイドのシルエットは翼の断面図をモチーフにした流線型、ルーフの厚みを目立なくさせるステップ・アップした雨樋やドア・ハンドルを面一にしたプルアップ式にするなど、意欲的な作品になりました。改良版の411型ではテールランプを上方に移動しリアエンドを手直ししましたが、コロナには販売合戦で水を開けられる結果となり、尻下がりのブルと蔑まされてしまいます。

同じクラスにはいすゞからベレットが参入してきます。昔は共にイギリスのセダン=オースチンとヒルマンを日本でノックダウン生産した両社ですが、もうイギリス車の面影はありません。ベレットは後輪に独立サスペンションを驕り、ハンドリングにも傾注したドライバーズカーを狙っていたかのようでした.これがやがてベレGの人気に繋がる訳ですが・・・・
まだ日産と合併する前のプリンス自動車からも1500クラスの小型車としてスカイライン二代目S50系が登場します。初代はグロリアとして成長し、独立したモデルとして二代目に移行したので、その下の小型タクシー枠を狙った全長4m、1500の排気量はコロナと並ぶもの。トヨタ日産の販売合戦に割って入ろうと云う目論見でした。が、これもGTの人気でスポーツセダンの代名詞を欲しいままにするのですが。

初代でスカイラインを名乗ったプリンス渾身のセダンはグロリアと名付けられたうえ2世代目に移ります。クラウンのように広く低く構えたアメリカンテイストのデザイン、6気筒エンジン搭載を前提に設計され、3ナンバー車のグランドグロリアも追加されます。この6気筒エンジンがプリンスの将来を力強く牽引することになるわけですが・・・・

日産も上級車のセドリックにオーバー2リッターの6気筒エンジンを積みますが、この時ボンネットを前に延長し、ロングボディとして3ナンバー化しました。スカイラインよりも先にロングノーズの市販車が存在したわけですが、その後の日産はサニーやブルー―バードにもロングノーズ版を追加して販売に寄与します。トヨタではセリカだけがこの手法を採りました。

画像1

まだこの時点でホンダの乗用車と呼べる銘柄はSだけ。500からスタートしてすぐS600に増量。後にクーペを加えてはいるものの所詮ふたり乗りでは需要も知れています。むしろ個人商店や法人向けにライトバンをつくった方が確実に需要を見込めました。そこで次に市販された小型車はP700です。700ccツインカム・エンジンを持つピックアップ・トラックで,安価なエンジンを新製するよりSのエンジンを共有したほうが速い、しかも高速性能まで売りに出来る!ホンダらしい商法です。
実はホンダにとって4輪車進出は悲願でもあり、急務でもあったのです.当時の政権は自動車輸入の自由化を前に国内メーカーの整理・統合を目論んでいて、量産メーカー、個性派メーカーなどジャンルごとに3社以内に絞り込もうと画策していました。いすゞもプリンスも、この波に飲み込まれまいとして必死だった訳ですがホンダもまた、この特振法で乗用車生産のチャンスを封じられない様実績づくりを要したのでした.(結局この特振法は廃案となりますが)

画像2


ライトバンを先行させ、足場を築いてセダンを追加する・・・商用車販売に長けたダイハツもマツダもこの方法で新規需要を開拓します.ダイハツはコンパーノ・バンでミゼットの顧客を上級移行させ、マツダもK360の顧客を4輪バンに誘う目論みでした。両社とも順調にコンパーノ・ベルリーナ、ファミリア・セダンという5人乗り乗用車を追加して5ナンバー市場に足場を築きます。

ダイハツもマツダも800ccからのスタートでしたが既に500.600で国民車構想に即した小さなクルマで5ナンバー市場に参入していた三菱はひとクラス上を狙ったコルト1000を発売します。飾り気の無い実直なセダンがいかにもミツビシらしさを象徴していましたが、ギャランが登場するまではこの保守的なセダンで販売競争を乗り切らねばなりませんでした。


海の向こうではポルシェの全く新しい6気筒リアエンジンクーペ911がお披露目されます。それまでのフォルクスワーゲンを母体としたずんぐりしたボディはスマートなシャキッとしたデザインに改まり、高性能GTとして生まれ変わります。

そして坂本九が歌う「SUKIYAKI」が米ビルボード誌のヒットチャートで1位を3週間も獲得。クルマ好きの九ちゃんはジープから4CV、センチュリー、リンカーンまで種々のクルマを乗り継いだそうで、1970年に入手したメルセデス280SLは、ナンバーを取得し直して今でもご自宅のガレージに大事に保管されているとか・・・

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?