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TENET、LSDをキメながらマイブラを聴いている感じ【ネタバレなし】

"分からない"を楽しむ。
分かりやすいものばかり食べてきた弊害が如実に炙り出される映画だなと痛感した。

分かりやすいものは即効性がある。
でもその一方で、分かりにくいものを遠ざけてしまうし、最終的にそればかり選んでしまう。
天つゆで食べる天ぷらは分かりやすく美味しいが、塩で食べる天ぷらの味も知っておいた方が良い。

僕はジャンクフードが好きで、好き嫌いが激しく、勉強が苦手だ。

もし、これが逆だったら「TENET」を見た感想は違っていただろうと思うが、既に起きたことは仕方ない。潔く諦めることも大切である。

僕はこの映画を理解することを諦めた。
諦めて、今置かれている状況を純粋に楽しむようにした。そうせざるを得なかったという方が正しい。

親に初めてドドンパに乗せられた時のことを思い出した。何が何なのか分からないまま始まって、途中で気付き、いつの間か終わっていく。あるいはビートルズの「Revolution 9」を初めて聴いた時の感想、ランボオの「地獄の季節」を初めて読んだ時の感想が近いのかもしれない。「何が伝えたかったんだ?」という途方もない困惑がエンドロールの後も広がり続ける。

言い換えれば、サイケデリックな体験とも言える。誤解を恐れずに例えるとLSDをキメながらマイブラを聴いているような、ぶっ飛んだ超次元的な未知の体験が合法で出来る。悔しいことにそんな感想しか出てこない。

僕が漠然と映画の余韻を楽しんでいる今も、世界は混乱に満ち溢れている。
政治は偉い人にとって都合が良いようにどんどん曖昧にされていき、人間がどうにか出来るレベルじゃない災害が地球規模で巻き起こり、SNSの発達で何が正しく何が間違ってるのか分からなくなっていく。
「テネット」は安全して混乱できる。好きなだけ、好きなように、意味不明を楽しめる。
何度も見て何度も反芻し、映画の世界に巻き戻っていく時にアッと気付くのだろう。

理解不能なもの理解しようとしていく過程は、もしかして凄く贅沢なことなのかもしれない。分かってしまったら分からない頃には戻れないし。いつか理解したその日のために、過去の記録として書き残しておく。

あー、もう一回見たい!

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