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生涯忘れることはないでしょう

サブスクが解禁されて、久しぶりにaikoを聴いた。
前に持っていたウォークマンにはまとめの1.2とBABY、泡のような愛だった、が入っていたことを思い出した。めちゃくちゃ使い込んでたウォークマンをなくしたことも思い出して少し胸が痛む。
aikoの凄いところは聴いてるだけで恋をした時のことを鮮明に思い出せるから凄い。思い出にaikoが染み込んでる。

なかでもアルバムのBABYが最高に好き。
調べてみると2010年のアルバム。もう10年経ってんのか…というよりもあの頃歌ってたaikoが10才年取ったって事実に驚く。NHKでやってたSONGSがaiko特集で、その際に「桜の時」、「be master of life」がめちゃくちゃ良いメロディーで好きになったことを覚えてる。ライブで見せるあの可愛らしさはなんなんだろう。楽しそうに、精一杯ライブやってる姿、恋に落ちるかと思った。

aikoを聴いて思い出すのは数々の失恋だ。
想いの伝え方が絶望的に下手くそで、自己アピールもセンスがなく、相手の気持ちを察することも出来なくて、暇さえあれば失恋していた。いわゆる失恋番長である。
強く覚えているのは高2の頃の恋愛。
好きになったのは他校の女子だった。自分よりも偏差値の高い高校にいて、自分より部活に打ち込んでいて、自分より面白いツイートができて、いい映画を見ていて、ミュージカルに詳しくて。女性的にも人間的にも魅力がギュッとつまってる人だった。
一方の僕はツイッター廃人で、失恋の間にツイッターばかりしていた。ある日見つけたのがその子がどうやら恋をしているというツイートだ。色んな意味で「いや、まさか」と思った。まさか、まさか俺のこと…好き?
思い返せば、彼女は相手を傷付けず、丁寧にその気は微塵もないと伝えてくれていたのに、恋心が暴走していて、気が付かなかった。
というよりは、自分にその気がないことをうっすら気が付いていた上で、見て見ぬ振りをしていた。
他校というのも良くなかった。恋愛偏差値の低い自分には、会えない時間というものは一方的な下心を大きくさせるだけでしかなかった。
だから毎日ツイートを見ては、妄想し、勝手に恋人になり、勝手に失恋していた。恐ろしきかな片思い。
ある日のツイートで見てしまったのは、彼女に恋人ができたことだった。
相手は自分よりも年上。3歳くらい上だったような気がする。
バカ高童貞田舎者の僕には1ミリの勝ち目がなく、呆気なく失恋した。

のに覚えいるのは、この恋の時にaikoばかり聴いていたからだ。
乙女座だからか、変にロマンチストな一面があって、流星群を観るのが好きだった。中学生の時に買ったブカブカのウインドブレイカーを着て、カイロとウォークマンを持って、実家の屋根から星ばかり眺めてた。1、2時間くらいは見てた。
スピッツのスターゲイザー、嵐のBeautiful days、いきものがかりの流星ミラクル、大塚愛のプラネタリウム、BUMPのCOSMONAUTとか、いろんな曲を聴いた。
夜も深くなっていくと、aikoの二時頃を良く聴いた。勝手にストーリーばかり妄想していた学生時代には刺さりすぎた。サビで泣く。今も電車で打ってて泣きそうになる。強がってるのが分かる。でも、相手には分かられてないのが辛い。BABYに収録されている鏡も大好きだった。
この曲も本当は泣きそうな気持ちを強がってる。

OKキミをガン見さ 今日は仕方がないだろ
キミが家を出て行くから
BABY愛しているぜ キミは俺の鏡さ
ドアを開けて出て行くまで

最後の最後だってシュチュエーションで語尾に「ぜ」なんてつけられるだろうか。
自分が同じ立場に立たされたら馬鹿面で号泣しまう。最後の最後までみっともない。
自分を動揺させないため、の精一杯な感情のなかに相手を悲しませ過ぎないようにする優しさが滲み出ていて目の前が霞む。

人間性の出来た主人公と、半分ストーカーっぽい自分の失恋を重ね合わせる。
お門違いもいいところだけど、aikoを聴くと失恋の記憶ばかり蘇ってきて甘酸っぱい。年数が経って、こんなふうに振り返ることが出来るなら失恋も悪くないなと思えてくる。いや、付き合えばその方が良かったんだけど。
aikoを聴くと恋に落ちたくなる。トキメキたい。一緒にカラオケにいってカブトムシを歌ってほしい。立って、両手でマイクを大切そうに持ちながら。
左手の薬指につけた銀の輪っかが、睨みを効かせるように光った。


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