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マイヘアの配信作品『Youth baseball』で見た"飾らない"美しさ

My Hiar is Badの配信作品『Youth baseball』を見た。

やまじゅん、バヤ、椎木知仁はあっけらかんとしていてライブの形式は違っても8ヵ月ぶりのライブで見せた姿が普段と変わらない等身大のもので妙に安心した。
この3人はこの3人だからMy Hiar is Badだなと思わずにいられないライブだった。

このメンバーで奏でるアンサンブルやグルーヴ感に胸が熱くなるし、気持ちが前のめりになる。
今や一人の人間が所持しているパソコン一台で楽曲が作れてしまう時代に、彼らは3人で楽器を持ち寄って、ギターをかき鳴らし、ドラムを叩き、ベースを弾いている。そのDIY感がたまらなく良い。仮にスタイルが打ち込みになったら聴かなくなるわけじゃなく、時代に左右されず自分たちがやりたいようやっている点が良い。

サブスクもそうだ。今年は米津玄師がサブスク解禁して話題になったが、彼らはまだ解禁していない。マイヘアのファン層は若い人が多いだろうから、解禁すれば多くの人に聴かれるメリットがある。「サブスク解禁まだ?」との意見も多いが、僕はこれはこれでアリだと個人的に思う。人気商売で成り立っている以上、世間の意見ももちろん大事だけど自分たちの信念の基づいて活動してくれたらそっちの方がファンとして応援したくなる。



ライブはメンバーの地元である新潟県の上越市高田城址公園野球場で行われた。
ライブツアーのタイトルに〜ホームランツアーを必ず付けていて、上越をレペゼンしているマイヘアだからこそ、地元の小さい野球場での公演に様々な意味合いを含まれてくる。

ステージングは3人が向き合うようにセットが組まれていて(セットと言っても野球場に機材が設置してあるだけ)、彼らを囲むようにカメラレールが敷かれていた。
特効も大がかりな照明もない、装飾が一切省かれたシンプルなステージ。楽曲の力とパフォーマンスだけで勝負する姿に”ライブハウス育ち”のストイックさが感じ取れる。



こうして改めて聴いてみると、テクニカルな部分はあまり見受けられないなと思った。複雑な構成や難しいメロディーラインは感じない。
誤解を恐れずにいえば、椎木知仁も歌が上手すぎるというわけではないだろう。



だが、それでもマイヘアに惹かれてやまないのだ。
前述したように、まず3人の絆が具現化されたようなアンサンブルが美しい。ロック然とした音と音のぶつかり合いが焦燥感を生み出し、心に火を付けられたような熱い気持ちにさせられる。


そして原石性があってキラキラと輝いている。
完全に言い切る手前で形成された断片的な歌詞も美しい。

"勇敢な勇者も 恋人に勝てない
テロが起こった日 飲み過ぎてゲロ"

「戦争を知らない大人たち」

絶妙だなと思う。椎木知仁の持つ先天的な才能が伝わってくる。学ぼうとしてもあのワードセンスは身につけられるものじゃないと思う。学習して手垢がつけばつくほど、“歌詞を書く”という行為は難しくなるのではないか。参考にした歌詞があれば自然とそっちに引かれてしまうだろうし、学術的に優れた洗礼された歌詞を書こうとしたならば、ロックバンドが鳴らすサウンドとのバランスは取りづらいだろう。

初披露された新曲「白春夢」でも、その純粋なイメージを持ったままコロナ禍の現状を描いたリアルかつ繊細な歌詞になっていて、心をガシッとつかまれた。

歌が上手すぎないと書いたが、椎木知仁の声は良い。非常に良い。味がある。唯一無二の存在感がある。

過去にストレイテナー「REMINDER」や、サンボマスターの「ラブソング」をカバーしていたが、見事なまでにマイヘアイズムが滲み出ていた。バンドへのリスペクトはしっかりと感じさせつつも、My Hiar is Badとしても楽曲を乗りこなしてしまう。

荒削りなサウンドは良い感じにゴロッとしていてロックバンドらしさを感じさせる。ストイックなプレイとは裏腹に、トークは結構グダグダでそのギャップも等身大だなと思えてきて、なんだか笑えてくる。適度なユルさがまた良い。メンバーが向き合ったいたから、その感じもよく伝わってきた。

彼らのライブに行くとどうしても興奮して、突っ込んで行ってしまうため、冷静には見れないことが多い。

通常のライブとは違う、配信という形式に合わせて、過剰に熱いプレイを見せるのではなく、熱量のなかにもどこか冷静さを感じさせる表現だった。キラーショートチューン「クリサンセマム」や、変幻自在な「フロム ナウ オン」はリアルなライブまでお預けなのも、彼ららしくて良い。

改めてマイヘアの魅力をしみじみと感じたライブだった。

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