「緑の家」
バルガス=リョサ「緑の家」(木村榮一訳 岩波文庫)
1966
(物語の舞台ペルー共和国を航空写真で見ると、広大な密林の緑色に圧倒される。その密林の中にある大きな街イキートスは、陸路では行けないという。)
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手が震えていたことは書かれているが、手の震えとして表出している心の状態は書かれていない。畳み掛けるように、その場面にいる人物の行動とせりふが書き連ねられていく。
物語の時間は細分され、激しく前後しながら配置されていく。
それらが積み重なって創られた虚構に、人の内面が、澱みなく流れる時間が浮かび上がる。
自然への畏怖、砂の降る街、密林、酒場の音楽、交易、情熱。これは人間の物語であり、1枚のペルーの地図であるようにも思う。
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◇小説の手法と物語の魅力が調和した1冊と存じます。
◇いつ、どこで、だれが。メモ帳をご用意の上、お読みになるのが宜しいかと存じます。
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