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読書途中感想 #8

司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』の2巻。
2巻は、日清戦争開戦から日露戦争前の時期までのお話。

日清戦争においては、兄の秋山好古は騎兵第一大隊長として、弟の秋山真之は巡洋艦筑紫の乗組員として参戦している。

秋山好古は、騎兵第一大隊長として実際の戦闘を経験し、その経験を騎兵戦術の改良に活かしている。また、弟真之も、実戦にこそ参戦出来てはいないが、ここでの海戦を研究しなおし、自信の戦略・戦術に役立てている。

2巻で最も印象に残ったのは、日清戦争を開戦する前に、明治維新の功労や藩閥のおかげで海軍の階級を与えられていた人達約90名をリストラし、兵学校でしっかりとした教育を受けた人たちを新たに任命したという点。

過去の功労である程度の階級を得てはいるが、新しい時代の実戦では、全く役に立たないというのがリストラの理由だが、現代社会でこれを断行できる企業はほとんどないと思う。

もし、そんなことをすれば訴訟問題になるだろうし、そもそも、こんな進言を受け入れる経営者がほとんどいないだろうし、進言するチャンスすらないのだと思う。仮に偶然にもトップに進言できたとしても、トップのまわりを固める古参役員が全員保身で反対するはず(笑)

私自身の体験からの個人的な考えだが、過去の成功体験が大きければ大きいほど、その成功体験に全員が縛られ、新しい考え方や技術を受け入れられないということがおきる。

特にその成功体験を実際に体験した人たちが、上層部にいると余計に組織が硬直化するというか、新しいことを受け入れにくい体制が作られやすいんだと思う。

そういう人たちって、自分たちがこの組織(企業)を大きくしたという自負があるし、思い出補正も入っているとは思うけど、自分たちは自分たちで新しいものを作り出し、世界に受け入れられたという思い込みがある。

だから『今の若手は自分の頭で考えることをしない』とか『言われないと動かない』とかって言いだす。

一方で、新しいことや知らないことを提案されても、自分たちの成功体験では解読できないので、その案を採用することもない。

そうなると、革新的な考え方を持つ人たちはどんどんいなくなっていき(転職しちゃう)同質的な思考しか持たない集団が出来上がるんだと思う。

現代の組織で考えても、いわゆる『老害』と言われる方々には退場いただくのが良いと思われるが、実際にそれを実行できる経営者ってどれだけいるんだろう?出会ったことない。

2巻の時代は、戦争に向かおうとしているタイミングということもあり、そういう『役に立たない』人たちを野放しにしておくわけにいかない状況ってことだったんだろうけど、当時は人材に恵まれたってことなのかな。

鎖国している間に、置いて行かれた世界に追い付け追い越せって時代だっただろうし、日本人全員の成長意欲が高かった時代だったんだろうと思う。

現代も成長意欲が強い人たちってたくさんいると思うけど、ある程度成熟した企業組織が多くなり、現状で満足って人も増えてきていて、そういう人が大勢を占めている会社が淘汰されずに生き残っているってことも多いのだと思う。

もう一人の主人公である正岡子規は、この巻では、大学を中退して、新聞社で働き始めて、病気がだいぶ進んでしまったという感じ。

私自身が俳句や短歌にあまり興味がないからだと思うけど、子規の話が印象に残りにくい(笑)

2巻の後半はロシアの状況説明なんかが増えてきたから、3巻ではいよいよ日露戦争に突入するのかな?展開が楽しみ!

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