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ある日の記憶~彼女と私の祈る理由~

ある日の記憶 ~彼女と私の祈る理由~
#未来のためにできること

「あのひとが、どこか、遠い海外の国で。
無事に、生き延びて。
新しい家族と出会い、しあわせに生活してくれていたら…。
ただ、それだけ。
どうか、生きて、生きて…生き抜いていてほしい。 

ハイカラなモノやコトが大好きだったKさんだから、
案外、海外の暮らしも悪くないな、
なんて、楽しんでるかもしれないでしょう?

それに…もしも、Kさんが生きていたら。
もしかしたら、玄関の扉が開いて、Kさんが、
そこに、立ってるかもしれないでしょう?
会いに、来てくれるかもしれないでしょう?

そうしたらね、
私は、こうして、達者でやっておりますよと、
どうか、ご心配なく!
無事に、子供たちも、何とかだけれど…育て上げましたよ?と、
ああ、孫たちにも恵まれてね、こうして会いに来てくれるのよ
だから、さびしくなんかありませんよ、と、
Kさんが大好きだった、サバの味噌煮をお夕飯に作ってね、
笑顔でお迎えしてあげるのよ

だからね、毎日、毎晩、お祈りするの…
もう、それが当たり前になっているわね…」
 
気付けば昇っている、明けの明星に祈り。
それが、宵の明星となってもなお、祈り続けているような…。
それが、祖母の日課なのでした。

初夏のような陽気に、日差しの眩しい、とある日でした。
祖母が天寿を全うし、旅立ったその日。
その旅路の先で、戦死したとされる祖父と再会し、
逢いたくて、逢いたくて…
そう願っても、祈り続けても、
現世では逢えずにいた、長い、長い時間の間に、
きっと、ふたりが、語り合いたかったであろうことのすべてを
楽しく、おしゃべりできていたらいいな…
わたくしは、ただひたすらに、空に向かって祈り続けたのでした。

祖父母の祈りは、わたくしの父や母に。
そして兄たちと、わたくしのこの心に。
今もこうして、温かな光となって、灯り続けているのです。


私の好物がサバの味噌煮なのは、どうやら祖父の遺伝だったようです。
おじいちゃんと一緒に食卓を囲んで。
「やっぱり、おばあちゃんのサバの味噌煮が、いっちばんだね!」
そう、笑いあいながら、一緒に、食べたかったな…。

読んで下さり、お聴き下さり、ありがとうございます。

「戦争はね、あれは、あってはならないこと…」

祖母の、その一言につきると思うのです。
そして、その想いを繋いでいくということの大切さ。
今、わたしたちには、一体、なにができるのでしょうか。


つばめの声、聴けます♪
「ある日の記憶 ~彼女と私の祈る理由~@stand.FM より👇
キモチだけは、込めております
https://stand.fm/episodes/66bffd9800b88cfbd3ab1878
 
《作品利用につきまして》
上記「ある日の記憶~彼女と私の祈る理由~」を朗読等に活用したい、
そう思って頂けた方へ。
当方、別ページにてご案内させて頂いております、
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