映画を観るには、センスがいる
(※ネタバレはありませんが、映画構成について少し触れています)
ずっと気になっていた映画がある。
「パラサイト 半地下の家族」
最初、この映画のポスターを見たときは、「ホラー映画? むりむりむりむり」となって、鬼するーした。
でも、映画が公開されると、僕のインスタは、フォロワーさんたちの鑑賞後のコメントで氾濫しだした。
何やら、「ネタバレ禁止令」が出てるらしく、すんごい気になるワードで僕を誘惑してくる。
「衝撃作!」「喜劇であり悲劇」「計算され尽くした美しい構図」「今年NO1の映画」(←最後のコメントのやつには、まだ今年は始まったばかりだぞと真っ向から伝えてやりたい)
おいおい、気になるじゃんか。これ、ホラーじゃないのね。それに、パルム・ドールとってるらしいから、もうお墨付きじゃん。
(パルム・ドールって何?)
そして僕は、期待値、爆上がり状態で、雨の中、映画館に向かった。
約束された「おもしろい」
会場は満席。
でしょーね。だって、パルム・ドールだもん。トレンドに乗り遅れたくないよね。(パルム・ドールって何?)
どれどれ、わたくしめも衝撃作の目撃者になるとしますかと、銀幕に流れる「半地下の家族」に目を凝らし続けた。
早速、感想を述べたいと思う。
「正直、よう分からんのじゃ」
約束された「おもしろい!」を受け取りにいったのに、
僕が受け取ったのは「おもしろい?」だった。
この映画の予備知識も持ち合わせていなかったこともあり、僕はまず、そのジャンルに戸惑った。
最初は、クスクスと笑えるコメディタッチに、「あーね。そっち系ね」と、安心しきっていた。
すると、なんの前触れもなく、次々と展開が変わっていく。
展開というか、ジャンルが変わっていくのだ。
コメディーからホームドラマ、さらに、社会風刺やサスペンスホラーなどが混在し、温かくもあり、おぞましくもある、今まで観たことのない異色のジャンル。
そして、なんの予兆もなく、チャンネルを変えられていて、心の準備をさせぬまま、観る人を一瞬にして光から闇へと引きずり込んでいくのだ。
そこには「娯楽」と「スリル」と「不快」が同居していた。
この未知なる衝撃への耐性がなく、僕の感情は迷子になってしまった。
呪文だらけのスマホ
終演後、僕は焦った。
全然、「おもしろい!」を受け取れていない!
パルム・ドールだよ。ハリーポッターの呪文に使われてそうな響きだし、絶対にすごいはずなんだよ。
必死になって、映画のメッセージ性をネットに探した。
明日、同僚に「絶対に観た方がいいよ。後悔するよ」って言うために。
スマホをスクロールするたびに、もう絶賛の嵐ですよ。
みんな、パルム・ドールの呪文を唱えていた。
それとともに、皆さんの論評が、それはそれは秀逸だこと。
よくもまあ、あの忙しい映画の最中に、そんな伏線にお気づきになられますな、と最敬礼である。
そして、みんなやたら「メタファ」言うやん。
(たぶん、ドラクエの賢者が使う呪文やな。知らんけど)
でも、そのメタファやら、社会風刺やらを、詳しく解説してくれるおかげで、「ほほー」と思えて、パルム・ドールに選ばれた意味もわかる気がしてくるから、僕は単純である。
半地下の住人
この一件で、僕は学んだ。
「映画を観るには、センスがいる」ということを。
メタファを読み解くセンスがいるのだ、と。
最終的に、ネットの住民たちの中に、僕と同じ「よう分からん族」は見つけられなかった。(頼むから、いてくれ!)
みんな呪文を使える地上の賢者たちだった。
それでも、僕は、別に賢者になりたいとは思わない。
半地下から、ボーっと上の世界をのぞき、時折、賢者の皆さんから、メタファの蜜をもらって、センスをカバーしていけばいいと思っている。
(メタファって何?)
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