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「名前をつける」ということ。

 人が自分の好きなことを語っている姿は、その気持ちが伝わってくるようで、こちらまで、少しうれしくなる。

道草さんぽ

 大学の先生の中には、時々、自分が好きなことを研究をしている、という幸福感が漂っている人がいる。

 このNHKの「道草さんぽ」という番組を、「植物好き」な妻と一緒に見ていたのだけど、講師・多田多恵子氏も、植物が好きということは、番組内の立ち居振る舞いから、よくわかって、時々、その過剰な情熱のようなものに、共演者の方が微妙に引きずられている感じも含めて、楽しかった。

ハキダメギク

 この番組の第7回のテーマは「街中さんぽ」。それも、東京の丸の内という「都会の真ん中」を歩いて、さまざまな植物を見つけていく、という番組の進み方なのだけど、講師の多田氏の、あちこちに植物を見つけてしまう姿が、妻と一緒に歩いている時のことを思い出して、やっぱり楽しくなった。

 そして、その中で、「ハキダメギク」の話題になった。

 妻がとっさに言った。

 「この名前つけたの、男の人だと思う」。

 それは、もちろん微妙な偏見も入っているのかもしれないが、雑草の一種とはいえ、その名前の付け方に、愛情が足りないというか、繊細さが不足している気配を感じていたようで、そのことには同意できた。

 そのあとに、ワルナスビや、ヘクソカズラという名前についても、話が及んで、これも「男の人だと思う」と妻は続けて、確かに、こういう名前は、つけられたら嫌と思えるようなものだった。

男性の命名者

 検索してみたら、確かに命名者は、男性だった。
 
 牧野富太郎博士。
 それは、植物界の偉人でもあって、妻も、その著書などを通して、尊敬している人らしい。

 そして、ワルナスビや、ヘクソカズラも、牧野富太郎博士の命名だったから、確かに男性が名前をつけていたことになる。

 ワルナスビは、生命力が強く、あちこちに生えてしまい、農作物にも影響を与えることから命名したようだ。

 ヘクソカズラは、牧野博士が命名したものの、それは、万葉の時代から「クソカズラ」などと言われていたので、その歴史を尊重した命名とも言える。

 そう考えると、ハキダメギクという名前が、この3種類の中では、もしかしたら、最も理不尽かもしれない。

 命名者は日本の植物学の父、牧野富太郎先生。東京の世田谷の掃き溜めで見つけたので、この名がつけられたのだそうです。もし掃き溜めでないところで見つけてくださっていたら、どんな名前になっていたでしょうか。

命名すること

 明治22(1889)年、日本で初めての命名植物となった「ヤマトグサ」をはじめ、新種、新品種を含め富太郎による命名植物は1千5百種類を数えます。富太郎による命名植物は野生植物だけでなく、野菜や花卉なども含まれ、私たちの身近にある植物すべてが富太郎の研究対象となっていました。 富太郎が「日本の植物分類学の父」と言えるのは、その数だけでなく対象の幅広いことにもよります。

 ハキダメギクや、ヘクソカズラワルナスビ側に立ってみれば、理不尽さを感じるかもしれないけれど、1500を超える名前をつけているのだから、失礼かもしれないけれど、中には、それほど時間をかけて命名していないものもあるかもしれない。

 ハキダメギクは、掃き溜めで見つけたから、という理由のようで、それは、ハキダメギクからしてみたら「そんなー」と思うのかもしれないけれど、それだけどこにでも生えている、ということだろうし、それまで名前がなかったのだから、何しろ名前がついたことの方が、その植物の存在が認められていることになるとは思う。

 あくまで人間の側から見た話ではあるけれど。

「名前をつける」ということ

 最近、身近な人が子供を授かった。

 名前をつけた理由について、比較的長い話を聞いた。

 その響き。呼びやすさ。意味合い。さらには、苗字の画数の多さとのバランスで、縦に並んだ時に、安定して見えるように、という気遣い。

 自分には子供がいないので、実感としてわからないことだったのだけど、親は、これだけいろいろなことを考えて、名前をつけているんだ、ということが伝わってきて、それは、自分自身も、そうだったのだろうと、思った。

 親が、私の名前について、その理由について、話していたことがあった。比較的、多い名前だったし、親が迷った上で、最後は、新生児の病棟に、同じ名前が3人くらいいたのだけど、決めた、と聞いていた。だけど、それだけでなく、画数やバランスも、かなり考えていたのだろうと、その身近な人の話を聞いて、改めて思った。

 意識的に変えなければ、名前は一生使うことになる。

 自分の名前が、小さい頃からしっくりくることは少ないだろうし、私もそうだったけれど、もう長いこと使っていると、好きとか嫌いではなく、そういうものだ、というような気持ちになっている。




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