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『上がりすぎたハードル問題』。

 ラジオをつけたら「アトロク2」をやっていた。

 2023年の10月から、午後6時開始だった番組が、午後10時開始になり、それは、TBSラジオの他の番組も含めての変化だったのだけど、最も「番組名をどうするのか?」と注目されていたのが、この「アトロク2」だったかもしれない。

 何しろ、「アフター6ジャンクション」は、開始時刻が番組名に含まれているからだけど、その名称に2をつけて「アフター6ジャンクション2」にしたのは、知恵もあるけれど、かなりの力技にも感じていた。だから、通称も「アトロク2」になった。


ハードル

 番組の中で、カレーの話をしていた。

 それは、この番組のパーソナリティのライムスター・宇多丸が監修したもので、本当においしい、と言われていたし、「ウイークエンドシャッフル」以来の宇多丸氏への信頼感もあったので、できたら食べたいと思っていた。

 ただ、このことを聞いた時点では、すでに売り切れていると思っていたのだけど、サイトを見たら、何度目かの再販をしていて、それで、あわてて申し込んだ。

 送料900円くらい。代引き手数料330円で。一つ900円くらいのものが、二つ購入して、3000円を超えた。

 カレー2つの値段としては、自分としては高額だったのだけど、でも、これはイベントと思って、なんとなく自分をごまかした。

 2日後には家にきた。

 とても期待していた。それは、ラジオで、うまい、うまいと聞いていたからで、味に関しては好みによるし、もしくは、当事者関係者は、悪いところは言わないだろうと思いながらも、ここまでの宇多丸氏への信頼のようなものがあったので、それで期待していた。

 でも、思った以上にハードルを上げてしまっていたのかもしれない。

カレーの感想

 妻には、それほどの前もっての期待や思い込みもなかったから、素直に食べて、感想を言ってくれたと思う。

----おいしい。辛いけど、味に深みがある。
 具がごろっとしているのがいい。

 ガツンとくる味。ど直球というか----そんな感じ。

 ただ、しょっぱみが強くて、ご飯がもっとあれば、とも思うし、だから、もう一度食べたいかと言えば、---もう、次はいいかな。しょっぱみが私には強いので-----」。

 
 私も、もちろん食べた。

 最初は、おいしいと思った。

 ただ、食べ進めると、妻がしょっぱみ、といった味が私には酸っぱ味に感じて、そこが、ちょっと引っかかり始める。

 おいしくて、だから、体のだるみも取れたけれど、でも、こんなはずではと感じているのは、もっとおいしいのでは、と思っていたせいもあるのだろうと、自分に言い聞かせる。

 以前、最初はピンと来なかったのだけど、何度が食べるうちに、とてもおいしく、しかも、時々食べたくなるようなカレー屋もあった事も思い出して、このカレーも、レトルトとはいえ、また食べないとわからないのだろうかと考え、また頼もうかとも思ってしまった。

 これは、期待が上がり過ぎたことがマイナスに働いていた。そんな「上がり過ぎたハードル問題」だと感じていた。

 そのカレーの箱の裏には、こうした文章が載っていた。

「ムルグ・アール・マサラ」。

「監修 宇多丸
 外来文化の日本型再解釈/最適化という意味で、カレーと日本語ラップは似ている------この一品に、僕が考える理想を込めました!」

「レシピ開発 タケナカリー
 宇多丸さんは少年期から大名店に通うカレー猛者。その舌の記憶を紐解き完成させました。スパイスは焙煎し、油量を抑えて軽さを追求。最後はスパイスを煮出す特製旨味スープで仕上げています。是非お試しを!」

タジマハール

 なんとなく納得がいかないまま時間が過ぎた。

 本当は、もっとおいしいのではないか、もしくは自分がまだ味わえていないのではないか、といった気持ちになってきた。それは、その味で昔のカレー屋の記憶とつながったせいかもしれない。

 東京・蒲田にあった「タージマハール」という店で、仕事で知り合った人に教えてもらって、そうでなければ気がつかないような店構えだったし、こぎれいでもなく、おしゃれでもなく、カレーを淡々と出しているような店だった。

 おいしいですよ、とその信頼できる相手に教えてもらったから、期待をして行ったのだけど、初回は、こんなものだろうか、という印象だった。それが、2回、3回を超えるあたりから、また食べたくなるような、ここにしかないような味で、そのあと、常連とはとても言えないけれど、何度か通った。

 その度に、違う種類のカレーを頼んだりもしたけれど、毎回、おいしかったし、満足感があった。そこのスタッフが、世間話の中でおいしいと言っていたファミレスの初めて聞くメニューが気になって、それを食べにいったことまであった。

 何年か経って、そのカレー屋はしまっていた。何かの噂で、その店主の方が亡くなったらしいと聞いた。さらに何年か経って別の場所で、息子さんがカレー屋を開いているという噂も聞いて、さらに、その店も移転してしまったが、結局今も行けないままだ。

 そのことを思い出して、もしかしたら、今回、すっぱみを強く感じ、かなりクセがあると思えたカレーも、少なくとも2〜3回は食べないと、おいしさが分からないのではないか、という気持ちになった。

 だけど、また頼むと、送料も込みで、私にとってはかなりの値段にもなってしまう。迷った。それで、もう少し日が経って、それでも売り切れず注文できるようだったら、また考えようと思った。

再びの注文

 最初の注文から1週間経って、まだ注文ができる状況だった。

 それで、やっぱりもう一回注文しようと思ったのだけど、妻はまた食べたいとは言っていなかったので、私がそのカレーを食べるとき、妻も同様に、いつもよりは高めのレトルトカレーを食べるのはどうだろう。その費用は出すので、という相談をしてスーパーへ行って、そこのオリジナルのカレーを買った。

 キーマカレーと、欧風カレー。

 そして、「ムルグ・アールー・マサラ」の注文をした。2つ頼んだ。

 2日後に届いた。

 その日、サイトを確認したら、sold outになっていた。信じられないほど、急な話だった。そして、恥ずかしい話なのだけど、買ってよかった、と思ってしまった。

再びのカレー

 そして、再び、ライムスター・宇多丸監修のカレーを食べた。

 レトルトのルーを温めて、開ける前に、少し混ぜた。

 それが良かったのかわからないけれど、前回感じた、強い酸っぱさは感じず、いろいろな味がして、おいしかった。他にはないような味だった。

 妻にも、少し味見をしてもらったのだけど、「この前と違う…と思う」と言っていた。

 妻には、いつもよりも(うちにとっては)値段が高いレトルトのキーマカレーを食べてもらって、おいしかったと言ってくれた。後味が、いろいろな味がフワーッとくるという感想だったから、よかったと思ったのだけど、それでも、ライムスターのカレーは、それとは格が違う感じがする、という言い方をしていた。

 値段の違いを考えたら、そうかもしれないけれど、妻には、偏見がなかったというか、前もっての高すぎる期待がなかったから、素直に味わえたのだと思う。

3回目のカレー

 その後、ソールドアウトになったライムスターのレトルトカレーが、ラジオを聞いていたら、また再販するという話になっていて、そんなに人気なのかと、ちょっと驚いたけれど、でも、この前食べたことで、まだ1袋残っているにも関わらず、今日から再び、売り出されると聞いて、もしかしたら、これからは、ずっと手に入ることになるのだろうか、と思っていた。

 そうしたら、5000円以上は送料無料だから、6個買えばいいのか、といったとんでもないことを、ふと思った。だけど、また数日でソールドアウトになった。なんだかすごいと思ったし、同時にちょっとホッとしていた自分は、冷静に考えると、ちょっと恥ずかしいことだった。

 2回目から、少し日数を経てから、3回目を食べる。

 おいしかった。

 だけど、今度は辛味が増して、また違う味に感じる。レトルトカレーとはいっても、個体差が大きいのだろうか。それとも、自分の味を感じる能力に波があるということなのかもしれない。

 そんなことを思っていたのだけど、今回も3回目の味見をしてもらった妻は、しょうゆで作ったカレーのようだ、と言って、一口食べて、からそうに顔をしかめた後に、だけど、独特で他にないから、クセになるような味なのかも、と続けた。

 こんなに毎回、微妙に感想が違うレトルトカレーは珍しいのだろうけれど、今もソールドアウトのままだから、次にいつ食べられるかどうかはわからない。


 それでも、以前よりも、他のカレーも食べたくなった。

 カレーに対する気持ちが、おかげで、また強くなってきたのかもしれない。




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