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忘れられる前に、「方向音痴」のことを考える。

 今は外出自粛で、出かける機会自体が減っていますが、それでも、記憶をたどると、ここ何年かで、スマホで地図を見ながら、歩く人を見る機会がすっかり多くなりました。自分は携帯もスマホも持っていないので、その便利さを本当には分かっていないと思いますが、そういった地図を見ながら歩いている人と一緒に移動したりして、気がついたことはあります。

 これから先、「方向音痴」という言葉は、ほぼなくなってしまう、と思いました。それと共に、なぜ「方向音痴」になるのか、という理由も、忘れられそうだから、今のうちに考えておこうと思いました。あの地図を使えば、どんな人でも目的地に着けると思ったからで、表面的には「方向音痴」は絶滅しそうに感じたからです。

私自身も、方向音痴だと思います。

 知らないショッピングビルなどに行き、入った時と違う出口から出ると、今、どこにいるのか分からなくなることがあります。ビルの中の部屋にいて、何度か廊下の角を曲がってトイレに行くと、出たあとに、違う方向へ少し歩いてしまうことも少なくありません。駅から徒歩7分くらいなのに、別の方向へ歩いてしまい、しばらくたってから気づき、また戻ったら、そこで少し間違えて、何十分かたってしまうこともありました。だから、いつも時間的に、かなり余裕を持って出かけなくてはいけませんし、初めての場所は、到着するまでは不安が消えません。

 ここからの話は、方向音痴ではない人にとっては、以前、私がラジオで聞いた「遅刻が多い人」の話(↑)のように思えるかもしれず、理解できないことも多いかもしれません。それでも、もし、よかったら、読み進めてもらえたら、人はそれぞれ違う、といったことを感じられるかもしれませんので、できたら、少し我慢してもらえたら、と思います。また、あくまで私個人の「方向音痴」のありかたですので、他の「方向音痴」の方がいらっしゃったら、「ここは違う」などと、教えていただければ、それもありがたく思います。


ある「方向音痴」の地図のよみかた

 ここからは、ある「方向音痴」な人間が、どんな風に感じているのか、の話です。
 あくまで個人的な話なので、他の「方向音痴」の方だと、違う方法を採用している可能性もありますが、それでも、まずは、話を進めたいと思います。
 たとえば、駅に行くと、こういう地図があります↓。地面と垂直に「立って」います。

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 現在地も示され、駅の出口によって、行ける場所が違います。周りにどんな場所があるかもわかります。どこが近くて、何が遠いのか、そして、その距離も、〇〇メートルくらいと予想もできます。
 「方向音痴」の自覚はありますが、これまでずっと言われてきたように「地図がよめない」という言われ方には、違和感がありました。

 こうして、具体的な地図が目の前にあれば、周囲の状況は分かります。だから、「地図はよんでいる」とも思います。でも、その状態が保てるのは、こういう地図を目の前にして、自分も正面に立っている時だけです。
 この地図を見て、目的地に歩き出そうと、この地図から離れ、たとえば、地図とは違う角度に移動し始めると、極端にいえば、もう今、自分がどこにいるのか分からなくなってしまうことさえあります。あの地図は、もう自分との関係がほぼなくなってしまうこともあります。
 

 たぶん、「地図がよめる」と言われている人にとっては、ここまでで、もう何を言っているのか、分からないと思います。


 ただ、「方向音痴」の人間が、初めての場所に行き、こうして「立っている地図」を見て、目的地に行こうとしたら、けっこう面倒臭い作業を、脳内で行う必要があります。(全部で11項目になりました)。

、 地図を見て、今の自分の位置を確認する。
、 目的地を見て、今の自分の位置から、どうやって移動すればいいかを考えて、一応は覚える。
、 歩き出す前に、この「立っている地図」を脳内で倒して、地面と平行にして、実際の場所と方向を合わせるようにする。地図が、「立ったまま」だと、実際の土地との関係が分からないままだからです。
、 その「倒した地図」を脳内にキープします。
、 歩き始めて、方向を変えるたびに、「脳内の地図」の方向を意識的に変えて、今の現在地を確認し、目的地への方向に狂いがないかを確認します。
、 たとえば、角を曲がるたびに、自分の歩く方向を変えるたびに、「脳内の地図」の方向も直さなくてはいけません。

、 移動の途中で、その「脳内の地図」の変える方向を間違えたり、他のことを考えていると、その「脳内の地図」が、もう実際の土地の様子とはズレることになります。そうなると、もう、この「脳内の地図」は役に立ちません。
、 もし、また街中で「立っている地図」があれば、それで確認し、その「立っている地図」を適切な方向へ「脳内で倒し」、地面と平行にし、自分の目的地がどちらにあるかを、目視で確認もします。
、 さらに、目的地の番地名なども、改めてメモと照らし合わせ確認し、できたら、目的地の近くの分かりやすい 建物なども、新たに発見したらメモします。
10、それでも、迷ったら人に聞きます。その時のために番地名や、分かりやすい建物は押さえておく必要があります。
11、それでもダメなら電話をします。私は携帯もスマホも持っていないので、公衆電話からかけることになります。歩きながら、公衆電話の位置も確認しています。何度か角を曲がると、その電話の位置も分からなくなります。


「地図がよめる人」の脳内の予想

 ここまでで、かなりイライラさせてしまったかと思います。すみません。ただ、なぜ今さら、こんな話を伝えたくなったかといえば、スマホの地図アプリのありかたが、おそらく、いわゆる「地図が読める人」の脳内を再現しているように思ったからです。

 ここからは、「地図がよめる人」の脳内の予想です。5項目におさまりました。(違っていたら、教えて下されば、幸いです)。

. たとえば、駅内の「立っている地図」を見ると、その地図をスムーズに、地面と平行にする形で、脳内に変換できる。たぶん、角度も方向も正しく自在に無意識で動く「回転テーブル」のようなものが脳内にあって、そこに地図が正しくセットされる。
. そこから移動を始め、方向を変えたとしても、「脳内の地図」は、いつも東西南北に、きちんと合わせて、動く。スムーズに脳内の「回転テーブル」の方向が変わっていく。 
. 磁石が、どれだけ方向を変えても、常に正しく「南北」を示しているのと一緒です。
. 知らない場所を歩いても、目印となるものなどが正しくインストールされやすく、脳内に地図ができやすい。その地図は、脳内の「回転テーブル」に正しくセッティングされ、いつも正しい方角で置かれ、正しく動く。
. それは、その人にとっては自然なことだし、いつも方角が分かるのも普通のことなので、それができない人のことは、たぶん理解しにくい。「方向音痴の人」というのは、そもそも地図というものが理解できない、つまり「地図がよめない」から、迷うんだと思っている。

 特には、偏見も入っていると思います。すみません。それでも、この「地図がよめる人」の予想は、そんなにはずれていないのではないか、と思いますが、いかがでしょうか。


 スマホの地図アプリは、「地図がよめる人」の脳内と、おそらくは同じ働きをしているはずで、いつも現在地と、進むべき方向は、間違えません。しかも、地面と平行な状態で地図を見ることができます。仮に、地面が、垂直になれば、それに合わせて、垂直にできるはずです。それは、「地図のよめる人」の脳内にある「回転テーブル」と同じような働きをしているのでは、と思います。

「方向音痴」の人であっても、いつもスマホの地図アプリと一緒だと、いってみれば「地図がよめる人」と共にあるわけですから、その指示に従っていれば、「方向音痴」であることは、それほど意識することもなくなっていくかもしれません。そのうちに「方向音痴」が何だったのかを、忘れられてしまうかもしれません。

 ただ、このあたりの推測は、かなり違っているかもしれません。実際にスマホの地図アプリを使っている「方向音痴」のかたがいらっしゃったら、「ここが違う」などと、教えていただければ、とてもありがたく思います。


「方向音痴」とは、結局はどういうことなのか。

 だから、本当に今さら、になってしまうと分かりながらも、今のうちに「方向音痴」について、個人的なことという限界は自覚しながらも、記録しておこうと思いました。

 ここまでの話を、少しまとめます。

 方向音痴は、「地図がよめない」わけではない。
 方向音痴は、外部にある地図のインストールがうまくいかない。
 方向音痴は、地図をうまくインストールしたとしても、自分の方向転換に合わせて、正しく、その地図を動かすことができない。「地図がよめる人」の脳内にある「回転テーブル」がないか、あってもうまく機能しないから、途中でインストールしたはずの地図が役に立たなくなる。
 方向音痴は、たぶん基本的には、東西南北という大きな基準のことが、実感として、つかめていない。つまり、方角が分からない。だから、目印が少ない所にいると、今の自分の場所を見失うことも少なくない。自分を基準とした右と左や、前後については、より敏感な可能性もある。(あくまで、仮定です)。


 イメージとしては、渡り鳥は、脳内に正確なコンパスがあって、だから、遠い国まで辿り着けると聞いたことがありますが、それが「地図がよめる人」に近いと思います。「方向音痴」は、そのコンパスの機能が低い、もしくは最初からない、といった人たちなのではないかと、自分のことを振り返って思いました。

 だから、くどくてすみませんが、「方向音痴」は「地図がよめない人」ではありません(と思います)。
 外部にある地図を、うまく「脳内に保持できない人」であり、「脳内でうまく活用できない人」だと思います。
 今でも、街にある「立っている地図」を見ると、その地図を脳内で何回か倒して、そこの地面の状態と合わせないと、利用することができません。


 これから先は、公衆電話と同様に、スマホの地図アプリの普及に従って、街中の地図が減っていくかもしれません。それでも、これから新しく地図を設置してもらえる機会がありましたら、(もし、そうした権限を持つ読者の方がいらっしゃったら)「方向音痴」からのお願いは、一つあります。
 いろいろとご都合があるかと思いますが、もし、可能であれば、地図を設置する時は、最初から「倒した」状態にしてもらえませんでしょうか。その地図と、地面が平行になり、状況が一致していれば、脳内で倒す作業がいらず、道に迷う確率が減ると思います。

 また、最後になりますが、スマホの地図アプリがなければ、こんなことを考えられなかったとも思います。地図アプリの開発者の方に届くかどうかは分かりませんが、お礼を伝えたいと思います。ありがとうございます。
 それに何より、分かりにくい未熟な思考の過程を文章にしたものを、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。読者の方が、さらに考えを深めていただければ、すごくうれしく思います。


(他にもいろいろと書いています↓。クリックして読んでいただければ、うれしく思います)。

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