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「エンターテイメント」と「アート」

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アニメやアートや映画やドラマや音楽やイベントなどについて、書いてきた記事や、これから書いていく文章をまとめていこうと思います。
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#最近の学び

「誰にもできないような経験は、その人を特別な存在にするのだと思った」------現代美術家・村上隆。

 とても個人的なことになるのだけど、30代になってから急にアートに興味を持った。  それも、難解と言われる現代美術、もしくは現代アートを見たくなった。  ただ、その現代アートや現代美術と言われる分野は、意味や理論のようなものがとても大事だと分かったのは、作品を見て、分からなくて、だからその作品を制作している現代美術作家の言葉を気にするようになったのだけど、多くの場合は、メディアなどで、それほど詳細に語ってくれているわけではなかった。 村上隆という現代美術家 その一方で村

【展覧会感想】 「あなたの中のわたし」 2024.9.14〜10.7 横浜市民ギャラリー ------「志の持続」

 横浜の関内駅。横浜スタジアムもある横浜の中でも有名な場所に、横浜市民ギャラリーはあった。  そのころ、介護が始まって、個人的にはとてもつらい時期だったのだけど、横浜市民ギャラリーでの展覧会だけではなく、トークショーにも観客として参加して、そこで、いろいろな刺激があって、その時間だけ、気持ちが少し楽になって、救われたような気持ちになったことを覚えている。  だから、すごく一方的だけど、勝手に感謝する思いがある。 横浜市民ギャラリー その後、どんな事情があるのかよくわから

【イベント感想】 「正解の無いクイズ」イベント in なかのZERO

 ほぼ何の助走も準備もなく、もしかしたら宣伝のようなものがあったのかもしれないけれど、個人的な印象では突然始まったテレビ番組があった。  どうやら特番があってから、レギュラー番組になったようなのだけど、最初は月曜日から木曜日まで、夕方の5時台から15分ずつという変則的な放送から、一日減って月曜から水曜になった。  ただ、クイズ番組を見ていて、正解を当てる、という番組は、ずっとあって、夜のゴールデンタイムという時間帯でも、毎日のように放送している印象になっている。一時期はク

【展覧会感想】 『大地に耳をすます 気配と手ざわり』 2024.7.20~10.9. 東京都美術館---「自然の中でつくり続ける、ということ」。

 東京都美術館の建物の構造が、今も具体的にイメージしづらい。  最近でいえば、デ・キリコ展や、印象派展を開催していて、それはメディアなどでも宣伝をしていて広く知られていると思うのだけど、それと並行して、といっても会期も同じと言うわけではなくて、違う展覧会を開催している。  それも、こじんまり、というのではなく、美術館の入り口を入り、左に曲がり、かなり奥まった場所に地下に向かって、広い展示スペースが広がっている、という印象で、ここ何年かでも、そちらで行われている展覧会に来る

【展覧会感想】 『内藤礼:生まれておいで 生きておいで』。 2024.6.25~9.23。 東京国立博物館。

 内藤礼、というアーティストの話は、美術鑑賞初心者にとっては、まるで都市伝説のようだった。 内藤礼の作品 1990年代。展示室には、鑑賞者一人だけが入れて、鑑賞時間は15分。内藤礼という作家が、そんな大胆な方法を取れること自体に凄みのようなものを感じていたのだけど、雑誌などの写真で見た展示の印象は、ベネチア・ビエンナーレという、海外の大きな展覧会にも参加していたのだけど、とても繊細でひそやかな作品だった。  やっと作品を見られたのは、2002年のことだった。  今ではな

【展覧会感想】 『111年目の中原淳一展』 渋谷区立松濤美術館 2024.6.29~9.1。----「美意識の本物」

 どこかで必ず見たことがある。  同時に、そのためか、わかっていたような気になっていた。  中原淳一。という名前と共に、その作家の描く女性は目にしてきたのだけど、展覧会を行うのを知って、しかも、渋谷の松濤美術館という、ある意味では、特徴が強目の場所で開かれるから気にはなっていた。  できたら妻と一緒に出かけたい展覧会を、いくつか相談して決めた。    その中に中原淳一の展覧会も入っていた。  7月には、竹久夢二展を見た。  思ったよりも良かった。  そして、時代的

【展覧会感想】 『ふ頭と、アートの相性』-----『Art Squiggle Yokohama 2024』

 美術やアートに関して、実は思ったよりもたくさんの展覧会などが行われているのだろうけれど、その全部の情報を知ることも難しいし、把握することもたぶんできないと思う。    だから、本当は多くの人が知っているかもしれないことも、自分にとっては突然わかるような展覧会もある。    横浜の港付近でおこなわれるアートイベントは、自分にとっては久しぶりの印象だった。さらに、入場券のプレゼントもあるというのだけど、それほど運が強いわけでもないから半分以上は無理だろうと思いながらも、応募

【展覧会感想】 「武井武雄 展 ~幻想の世界へようこそ〜」 目黒区美術館。2024.7.6~8.25

 美術やアートといわれるもの。  特に現代美術や現代アートと呼ばれる作品に急に興味を持つようになって20年以上がすぎた。 興味の持ち方 一時期は、美術の専門雑誌のようなものを頻繁に購入していた。それも現代美術を主なテーマにしているような雑誌で、今は月刊から季刊誌になっているし、自分自身も図書館で借りて読むことが多くなった。  その年月の中で、さらに昔の作品にも、当然ながらすごいものがあるのを知り、そして、今の時代にまで残ってくれているから、それは現在の作品として目の前に

【展覧会感想】 終わってしまった二つの展覧会の今も残る印象-----『翻訳できない わたしの言葉』・『ホー・ツーニェン エージェントのA』。東京現代美術館。~2024.7.7。

 東京都現代美術館に行くときは、現代アートを見に行く楽しさと覚悟がある。  あれだけ現代アート(いまだに現代美術と、どちらで呼ぶか、よくわからないが)ばかりを展示して、しかも広く、さらには作品に合わせた展示をしていたり、他では見られない作品も多いから、楽しみにもなる。  一方で、現代美術館は、自宅からは少し遠い。それに清澄白河駅ができたから、状況は少しかわったものの、どうしても駅から歩く印象もある。さらに、新しい作品を見るのはうれしくもあるのだけど、作家によっては少し緊張

【展覧会感想】 『生誕140年 YUMEJI展』 2024.6.1~8.25 東京都庭園美術館。

 自分が生まれるずっと以前の有名な人で、当たり前のように作品も目にしてきた。  竹久夢二。  ペンネームに「夢二」とつけるセンスは最初はあまりにもあざといのではないか。自分の妻に店を開かせたり、その後も様々な女性との付き合いも華やかで、そうした存在だと少しでも知ると、勝手な話というか、モテない人間のひがみのようなだけど、「(モテない)男の敵」のように思ってしまっていた。 橋本治の指摘 橋本治の「ひらがな日本美術史」のおかげで、日本の美術作品にも興味を持てるようになったし

【オンラインイベント感想】 『保坂和志の小説的思考塾 #17』---山本浩貴という特異な作家

 時々、この「小説的思考塾」には「参加」する。  とはいっても、実際に現地に行ったのは一回だけで、その後はコロナ禍になったこともあり、オンラインイベントになり、そのうちにリアルと、オンラインのハイブリッドになり、オンラインだけで行われることもあった。  毎回、どうしようかな、と思うのだけど、保坂和志というのは、現代では、小説そのものについて考え続けているような、そういう特殊で貴重な小説家なので、オンラインといっても、ここでしか触れられないような言葉や思考があるので、やっぱ

【展覧会感想】 『梅津庸一 エキシビジョンメーカー』 東京・ワタリウム美術館    2024.5.12~8.4

 個人的なことだけど、アートに興味を持ち始めて、20年以上になる。それまで、全く興味がなかったのだけど、いわゆる現代アートを急に見るようになった。  それは明らかに、この展覧会↑以降のことなのだけど、それ以来、言葉にすると恥ずかしい表現だと今も思うけれど、何しろ「ウソのない作品」を見たいと思って、今まで足を運ぶことがほとんどなかった美術の展覧会や、入ったことのなかったギャラリーにも行くようになった。  それから20年以上が経つけれど、その間、ずっと作品を制作し続け、私のよ

『現代アートチーム・目[mé]』と、エジソンの似ているところ

 誰だって知っていることとして「エジソンは偉い人」という歌詞の歌が街のどこでも流れていたように思えたのは、バブル絶頂期からバブル崩壊の間の頃だった。  偉人伝の常連として「エジソン」は、今でもおそらく誰でもが知っていて、それは「発明王」としてすごいと言われてきた。ただ、同時に年月が過ぎるほどに、エジソンのネガティブな面も徐々に広く知られるようになってきた。  おそらくは大きな業績を上げた誰もが決してプラスの部分だけはないだろうと想像はできるけれど、エジソンのイメージは良か

『私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない』---ワコウ・ワークス・オブ・アート(六本木)。2024.5.17~6.29。

 この「私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない」という、とても強くて、しばらく忘れられないような言葉は詩の冒頭だった。  そういう詩が存在することを、この展覧会で初めて知った。 ギャラリー 30歳を越えてから、急にアートに興味を持つようになって、その中でも特に現代アートといわれる作品を見るようになったのは、今も生きている作家が制作しているから、自分にも近い感覚があったからだと思う。  美術館だけではなく、ギャラリーにも足を運ぶようになったけれど