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新しい球技はもう発明されないのか
部屋が狭くて机を一つしか置けない。その上に作業用の拡張ディスプレイも兼ねたテレビを置いている。モニターとテレビを置いてしまうと唯一の机の上のスペースがなくなってしまうから仕方がない。
作業時間以外は基本的に消音で適当なテレビ番組を流している。なぜ消音なのかと言うと、パソコン側でYouTubeや音楽を流したりしているためだ。パソコンの出力を優先したいと言う思いは置いておいて、テロップがふんだんに利用されているから音なしの映像だけでも成立するテレビは、とても親切なメディアだと思ったりする。
作業を終え、いつも通り休憩中にテレビを流しながら読みかけの本を読み進めていると、視野の片隅にふとアスリートらしき人たちの躍動的なジャンプが入り込んだ。どうやらバレーボールの国際大会が開催されているらしく、日本代表対フランス代表の試合が放送されていた。
なんとなくつけたテレビで試合がやっていて、仮にそれが特に関心のない競技であるような時であっても日本代表を応援したくなって意外と観ていられる、と言うことがある。そんな、日本が「国」として対象化され、外国と比較・競争されるような状況に置かれていることを目の当たりにした時、自分の中に少なからず存在している愛国心というものを再確認するに至る。
一旦本を読むのをやめ、テレビの消音を解除する。消音を解除したら結構音量が大きくてびっくりする、なんてミスはもうしなくなった。解説を聞きながら真剣に観てみると、これまたテレビはつくづく親切なメディアであると思うようになる。無知の視聴者に向けた非常に初歩的な情報が、映像でも音声でも丁寧に提供されているのだ。
丁寧であることは褒められることであるが、行きすぎると「舐めてんのか?」となる。逆にコアな情報に行きすぎると今度は「試してきてるのか?」となる。この程度問題は受け手の習熟度によるものなので、結果広く浅くならざるを得ないテレビのようなマスメディアから離れ、自分が好きな情報を求めてニッチメディアに移行する流れが理解できる。
これに関連して、ここ数年でサブスクリプション・サービスでのスポーツ配信が勢力を増し、テレビで試合を観る機会が減っているように思う。自分は中学までサッカーをやっていたので関心があるわけだが、特にサッカー業界でその変化は顕著である。
テレビ対サブスクという対立構造において語ると、例えば2022年の来たるW杯本戦の全試合の配信をサブスクが独占したりしている。
また、サブスク同士の対立構造において語れば、海外の主要リーグごとの放映権をめぐる競争がシーズンごとに展開されている。例えば、昨シーズンはAサービスで独占配信だけど今シーズンはBサービスで独占配信になった、一方で別のリーグはAサービスの独占配信のままだ、なんてことが普通に起こっている。そしてさらに悪なのは、Aサービスで独占配信になったからシーズン前にしぶしぶ加入してみると、シーズン途中で大幅に料金が値上げされる、なんてことも起こったりしているのだ!
月々の課金額も長期的に見ればバカにならない。サブスクの学割利用のために学生に戻るなんていう社会人がいてもおかしくない。いや流石にそれは言いすぎだ。
兎に角、勝者総取りのサブスクの世界において、競争が安定化するまでにユーザーが振り回されまくっているということをサービス提供者には考えて頂きたい。
テレビを見ているとそんなこんなのメディア論をついつい考えてしまう。
歓声が上がり、フランス代表の強烈なスパイクが決まる。解説が言うには、世界No.1プレイヤーだと評されているフランス代表のエースは23歳と言うことで、同い年だと来たもんだ。
同い年のアスリートが世界No.1だと評されている。
一見どうってことはないこういった事実が、自意識と日々向き合う僕に答えを求めてくる。
お前は何者なんだ。
今まで何をしてきたんだ。
これから何をして何者になっていくんだ。
そんな自己精神破壊をしていたら埒が明かないので「今は色々考えながら試している時期なんだ」とアイザック・ニュートンのエピソードを思い出し納得させる。
当時ペストが流行していて学生だったニュートンが通っていた大学は休校になったらしい。
それでニュートンは故郷の田舎に帰って偶然りんごの実が木から落ちるのを見る。
そして万有引力の法則を発見した。
ニュートンは後にこの自由に思考できた期間を「創造的休暇」と呼んだそうだ。
いつか振り返った時、僕も「あの時期は創造的休暇だったんだ」と言えるように今を過ごしていくことにしよう。
そんな偉人のエピソードに託けて自分を安心させた数秒後。
いっそ、この世界の競技人口が僕ただ1人の新しい球技を勝手に発明して、世界No.1プレイヤーを自称してしまいたい。
そんなくだらないことを考えながら一服し、静かにリモコンのチャンネルボタンを押して別のまた親切な番組を探した。
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