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国語を勉強する理由は、『Twitterでクソリプを送らないようにする』ためです。

こんにちは。三坂です。
国語について、「日本人なんだから日本語なんて喋れるやん。勉強しても点数あんま変わらんし、意味ないやん」と、思ったことある人、多いんじゃないですか?

ところでTwitterを見ていると、バズったツイートに対していわゆる”クソリプ”が多数付いてるの、ありますよね。ああいうの見て、無関係ながらに辟易とすることも多いわけです。

そこで、塾の講師として国語だとか社会だとかを教えている筆者がふと思ったのは、「あ~、国語のテストでこれやったら間違いになるなぁ」と。ここでは国語における『選択肢問題の解き方』になぞらえて、クソリプの何がクソなのかを解き明かしていきたいのです。

クソ理由①|そんなこと言ってない

そもそも国語における選択肢問題の解き方とは何か。
ずばり、選択肢は次の4つのパターンで構成されることが多いですね。

選択肢パターン

  1. 本文の内容と合致している選択肢(正)

  2. 本文の内容と逆 or 間違ったことを言っている選択肢(誤)

  3. 本文にはそもそも書いていない選択肢(誤)

  4. 本文ではそこまでは言っていない選択肢(誤)

重要なのは3番と4番。基本的に中高生で国語が苦手な人は、2番を消せるが、3番や4番を消すことができず選んでしまうことが多いです。具体的な例文はこんな感じ。

問題になっているので読むのがちょっとめんどくさいかもしれないですが、ぜひ読んでみてください。きっとこの後でアハ体験につながります。多分。

受験勉強とは大変なものだ。まだ10代の若い時期に、1日に何時間も机に向かう忍耐力や、そもそもの体力が求められる。また、獲得することを求められる知識は膨大で、その知識を応用する必要があるばかりか、ときには本質的かどうかを疑いたくなるような、「試験のための問題」に出くわすことさえある。

本文(筆者作成)

問1 次のうち最も正しいものを選べ
(ア)受験勉強では、基礎的な知識を獲得することが重要なため、知識の量はむしろ少ない。
(イ)受験勉強で学ぶ内容で本質的なものは存在しない。
(ウ)受験勉強では、「試験のための問題」を解くことがある。
(エ)受験勉強では、1日に長時間勉強しなくても偏差値の高い大学へ進学する人もいるため、受験は必ずしも大変とは言えない。

問題文(筆者作成)

さて、この問いの正解は(, 本文の内容と合致)ですね。合っていた人も多いと思ますが、迷った人もいるんじゃないでしょうか。

では、他の選択肢はどこが間違いなんでしょう。

(ア)受験勉強では、基礎的な知識を獲得することが重要なため、知識の量はむしろ少ない。

これは、選択肢パターン2(本文と逆・間違ったこと)
本文には、「獲得することを求められる知識は膨大」との記載があります。本文と逆なので、誤り

(イ)受験勉強で学ぶ内容で本質的なものは存在しない。

これは、選択肢パターン4(オーバーな表現)
本文には、「本質的かどうか疑いたくなる問題もある」との記載はあるものの、選択肢は「存在しない」と言い切っています。「全ての問題は本質的ではない」といっていることになるため、そこまでは言ってません

これは、たまにテレビなどのマスメディアでも、政治家やタレントの発言を切り取って、「いやそこまで言ってねぇやん」みたいな表現をしている時がありますね。

(エ)受験勉強では、1日に長時間勉強しなくても偏差値の高い大学へ進学する人もいるため、受験は必ずしも大変とは言えない。

これは、選択肢パターン3(そもそも書いていない)
この設問のポイントは、設問の内容自体はおそらく正しいということ。しかし、国語ではそれがどんなに正しかろうが、書いていないことを選んではあかんのです。
ノー勉で頭の良い大学に行く人は存在するし、受験を大変だと思わない人もたしかに存在する。が、しかし、少なくとも本文では言及されていない、のです。

これを使って、クソリプがクソリプたる理由の説明に挑戦しましょう。
すなわち、「そんなこと言ってない」または「そこまで言ってない」です。

クソリプ例①

ベビーカーは邪魔だと思うし、小さい子をうるさいと思うこともある。それを、「子供だから」「子育て大変だしな」と仕方ないと思って我慢しているところに、「そんな感情は悪。我慢するのは当然だし、そんなことで不快感とか許されない」みたいなこと言われたらもうマジで無理

ツイート例(筆者作成)

と、こんなツイートがあったとしましょう。当然、こういった話題にはクソリプがつきもの。

でも、子供が泣くのは当たり前だし、それでベビーカーを蹴ったり、うるさいと声をあげるのは違うと思います。

リプライ例(筆者作成)

とまぁ、こんなように。どこをさして”でも”と逆接を使っているのかもわからないし、「蹴る、声をあげる」なんて話はそもそもしていません
おそらくリプライをした人は、「世の中にはベビーカーを蹴る人や、うるさいと反応する人がいる」と言いたいのであって、発言主がそうだと言いたいわけではないでしょう。
しかし、それでも意味のわからないリプライであることには変わりはありません。

主張は正しくても、発言の土壌が違う、ということには注意すべきではないか、と考えます。子連れに対して過敏に反応する過激派について、ツイート主は一切言及していないですから。

クソリプ例②

「子育てが大変だから仕方なく我慢してやってる」って言い方のほうがムリ。そういう人が増えるから子育てしにくいってことに気付いて欲しい。

リプライ例(筆者作成)

そこまでは言ってません。「仕方ないなと思って我慢している」のと、「仕方なく我慢している」の意味は大きく違います。
また、「子育てが大変」というのは、我慢するにあたって自分に言い聞かせていることの1例であって、リプライのような使われ方はツイート内ではされていないでしょう

さてこのように、クソリプと呼ばれるものは、国語において重要になる「筆者の言及していないことは考えない」だとか、「筆者の発言の程度を考える」だとかいったことが出来ていないことが往々にして存在します。(少なくとも私はそう思っていますし、ある程度的を得ていると考えています)

クソリプを見つけたときには、そんなことを考えながら「あ~クソだなぁ」と思うと同時に、自身がリプライをする際にも、少し気をつけてみるといいかもしれません。
うるせぇ黙れ、と罵りその厚顔無恥なご尊顔を踏みつけたい気持ちはわかります。しかし踏みつけてはいけません。
そっとお祈りするくらいにしておきましょう。

クソ理由②|前提条件を考慮できていない

とは言え、全てがこの「選択肢」で解決できるわけではなんですよね。例えば次のような例を考えてみます。

学校の先生が理解できない。課題多いし、休み時間にスマホいじっちゃいけないとかだるい。休みまで干渉してくんな。校則だからって言ってくんの意味わからん。ちゃんと説明しろ~

ツイート例(筆者作成)

クソリプ例①

じゃああなたは法律を意味わからんって言って破るの? そういう態度だと先生側も困るだろうね。

リプライ例(筆者作成)

さて、なかなかに香ばしいリプライです。頭が悪そうですが、そんなことは言ってはいけません。
こと前提条件という観点から言えば、このリプライのおかしいところは次の通りだと思われます。

ツイートの前提条件……法律 > 条例 >>>>>>>>>校則
リプライの前提条件……法律=条例=校則

この前提条件(ツイート側については推測だが、わかっていない、という意味では大差ない)の差違によって、このリプライはクソさを増しているんですね。

また、このリプライは「ツイート主は校則を破っているし、先生への態度も悪い、またはそれに近しい」という前提に立っていますが、それは元のツイートからは読み取れない話です。
校則をクソだと思いながら律儀に守っている可能性もあれば、先生への態度は非常に良い優等生だが裏では爆発している、という可能性もあるだろう、と。

こういった前提に違いがあるかもしれないという考慮は、論理の上で、国語の上で、非常に大切だと思っています。

クソリプ例②

教育を受けられてるだけでありがたいと思うべき。親とか国に金出して貰ってるのを忘れてるわ。

リプライ例(筆者作成)

比較的、日常会話でもよくある例ではないでしょうか。個人的には一番癪に障る返しですが、そっと怒りを抑えて続きを。
さて、これも前提条件が違いますね。

ツイートの視点では、「教育を受けられる」ことは所与であり、わざわざ検討すべきことではない、でしょう。
「教育を受けられる国に生まれ、学校に行かせてくれる親の下で、まともに学校に行っている」ことを前提としてのツイートなんだよ。それを突然横から現れて、前提を飛び越えて指摘をしてくる輩の、なんと厚かましいことか。と、失礼、言いすぎましたね。

加えて言えば、ツイートの主が本当に「ありがたいと思っていない」か、「親に感謝していない」かはそもそも読み取れない。それはリプライを送る側の想像した前提でしかありません。

クソ理由③|筆者の意図を理解できていない

最後に、国語嫌いな人が最も嫌いな設問、「筆者の意図は何か」という話を考えてみたいと思います。

今日職場に後輩が入ってきたんだけど、作業してたら彼が「何か手伝いましょうか? あ、いや、手伝いましょうかってのは〇〇さんが出来ないと思ってるとかじゃなくて、手空いてたので……」と。いくらなんでもテンパりすぎだぞと思いながら仕事振った。騒がしくなりそうだなぁおい笑。

ツイート例(筆者作成)

さて、筆者の意図はなんでしょうか。
といっても、ツイートは国語の素材文とは違い、筆者の意図が明示されていないことも多いです。当然、ツイートはあくまで呟きであって、はなから「これを伝えたい!」とか、「世界に発信するぞ~」などと思って作ってはいませんから。

とはいえ、ある程度想像することはできますし、あまりにその意図を曲解したリプライを送るのは、やはりおつむに問題があるとしか思えません

クソリプ例①

あなたがそうやって後輩に疎ましく思っているのが態度に出ているから、後輩さんは萎縮してしまってテンパるんじゃないですか?
普通騒がしくなりそうだなんて言わないだろ

リプライ例(筆者作成)

なかなかに良い例が書けました。いますね、こういう人。
ここでは、このリプライの主はツイートの意図をこう解釈したと推察できます。「後輩が必要以上にテンパっていてウザい。騒がしくしないで欲しい」といった雰囲気でしょうか。

しかし、では実際の意図はどうでしょう。もちろん、上記のような意図であることも否定できませんが、その確率は低いことが予想されます。

なぜなら、まず元のツイートに否定的な表現は一切出てきません。もし主が後輩のことを疎ましく思っているのであれば、より攻撃的な表現を使っていいはずです。
次に、「騒がしくなりそう」というのは、どちらかといえばユニークな後輩に対する面白みや、楽しさを感じている表現であると思われます。もしネガティブな意味であれば「おい笑」は嘲笑ということになりますが、そう捉えるのは無理があるでしょう。

まとめると、おそらくこのツイートは、「日常のちょっと面白い一幕」についてのツイートであり、どちらかといえば後輩や今後に対するポジティブな意図を持ってつぶやかれたものである、と考えられます。

どちらにせよ、「疎ましく思っている」とか、「萎縮している」というのは読み取れませんから、その想像を真として疑わないのは、やはり思い込みが激しく、ましてそれを相手にリプライとして投げてしまうのは、少し現代社会を生きるには勉強が足りないかもしれません。きっと小学生だと思うので、今後の成長を見守りましょう。

まとめ

さて、お読みいただきありがとうございました。
今回は、「国語を勉強する理由は、『Twitterでクソリプを送らないようにする』ためです。」というタイトルで、クソリプを送る人に足りていないと思われる国語力を、国語という科目になぞらえながら考察しました。

  1. 本文で言及されていないことを排除できない

  2. 本文で言っていることの程度を誤って解釈している

  3. 本文に至る前提条件を考慮できていない

  4. 本文での筆者の意図を考えられていない

という4つを今回は考えてみましたが、もっとあるかもしれませんし、これらに当てはまっていても、「めちゃめちゃ有益なリプライ」は存在します

なににせよ、ツイートは呟きである、という前提条件を私たちはより意識するべきでしょう。そして、ツイートが対全体であるのに対して、リプライは対個人であるからこそ、より攻撃性を増しやすい文章です。
リプライの向こう側には特定の個人がいる。だからこそ、そのリプライがお門違いではないか、相手を不必要に攻撃していないか、想像で成り立っていないかなど、より「相手」を意識する必要があると、私は思います。

ご精読いただきありがとうございました。

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