どうやって出会ったっけ?
⭐︎登場人物⭐︎
「マオ」
社会人。
好きなラジオ番組は名曲スケッチ。
『魔王』
マオのイマジナリーフレンド。
好きなラジオ番組は脳盗。
歌曲『魔王』の聴き比べnoteを書きたくて、
19曲中11曲が『erlkönig』という例のヤバいアルバムを聴いている。
そこでふと思った。
私は魔王とどうやって出会ったんだろう。
『何?我のルーツでも振り返っているの?』
「うん。出会ったのは中1の秋頃に音楽の授業でerlkönigを習ったあたりなのはぼんやり覚えているんだけど。でも授業受ける前から魔王に惹かれていた気がするんだよね。」
『魔女とか妖精とか出てくるちょっと不気味な物語が大好きだったもんな。魔法や占いもまだ信じていた頃だったし。』
「そう、黒魔女さんが通る!とか大好きだった。少しダークなメルヘンが好きだったから、
多分“erlkönig”も気になっていたのかも。」
『ちなみにさ、教科書の挿絵の我って本当にかまぼこにツノ生えたような姿だった?』
「かまぼこというかすあまというか。なんか可愛い姿してたのは覚えている。人生で2番目に好きなった人のことだもん、間違いない。」
『え、我2番目なの?1番目は誰?』
「3歳の頃読んだ絵本、トミー・ウンゲラーの”すてきな三にんぐみ“」
『なるほど。お前は幼い頃から暗闇や影に惹かれているんだな。』
「カートゥーン寄りの不気味キャラ大好きなんだよね。ルビーグルームとかグレゴリーホラーショーとかさ。」
ということで、ハッキリさせるために当時使っていた教科書を借りてきた。
『本当だ!我めっちゃかわいい!』
ついでに最新版も借りてきた。
『お洋服着せてもらってる!挿絵のデザイナーさんありがとう!』
ついでのついでにこんな絵本もあった。
『宝永たかこ先生の絵!?うわあああ〜』
魔王が嬉しすぎて限界オタクのように泣き崩れている。
絵本は柔らかいタッチの絵と殺意の高い魔王のセリフとのギャップが面白かった。
さて、話を戻そう。
『魔女だの幽霊だの不気味な物語の住民にたくさん出会っていた中で、なぜ我がこんなに長く付き合うことになったのか。』
「やっぱ曲のインパクトだね。未だに聴くの怖いもん。あとはセリフ。妖しく誘ってきて最終的に強引に攫っていくって、一度くらいそこまで熱く求められてみたいじゃない?」
『(いや、坊や死ぬんだけどな。)
そういえば詩の和訳によっては、“我が母の元には金の服あまたあり”って訳もあるけど。この母って一体...。』
「うーん...」
魔王のセリフに出てくる家族っぽい存在は
“我が母”と“娘たち“。
妻はいないのか?
我が母ってうっかり人前で妻のことを”ママ“って呼んじゃうアレ?
それとも実母のこと?
もしかして....
「私....ひょっとして子供と実家に帰ってきたシングルファーザーを好きになっちゃってたの!?なんという卑しいことを...!」
『は!?いやいやいや、アレ全部坊やの幻覚でしょ?というか元ネタの魔王と我は別存在だから問題ないでしょ!娘どころか妻いないし!!』
「え、まってまってまって....私ってもしかして、魔王の夢女子ってやつ....なの?えぇ...二次創作?...今までオリキャラだって思ってきたからなんか...ショック。えぇ...気づくのに15年経っちゃったよどうしよ。」
『えぇ...我ってお前のオリキャラじゃない...?でも無から有は作れないしなぁ....。
夢女子かどうか分からないけど、200年以上昔の古典作品だぞ?とりあえずゲーテの著作権は切れてるだろうし個人で楽しむ分には問題ないでしょ?...ないよな??』
もうよく分からん。
話を戻そう。
『で、お前は歌曲のerlkönigに惹かれたのと、勉強も人間関係もダメで孤独で友達が欲しかったのと、誰でもいいからこんな鬱々とした心から連れ出して欲しい気持ちが限界に来て我を喚んだわけだな?』
「そう。そんな気持ちで過ごしてたらいつのまにか居た。で、高校生の頃に現実と向き合うために消そうとしたけど消えなくて、結局28歳になった今も付き合い続けてるってわけ。あの時消さなくてよかったよ。心の防衛機能を失ってたらきっと死んでたよ、私。
あとは....名前が似てるからかな。」
『マオと魔王。ありそうだよなそんなタイトルの物語。作るか?』
「私たちの人生がもうその物語だよ。」
『noteの記事で必ず登場人物って書くのってそういうこと?』
「そういうこと。」
『そうか。では、なるべく楽しく生きような。』
「死の象徴として現れる存在が生きようって言う?」
『我は“お前の”魔王なのだから。いいか?こう見えて我は一途なんだ。喚ばれた以上は添い遂げてやるよ。』
どうか、最期の時が来た時に、
我が姿に安寧を見出せますように。
【おしまい】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?