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〇〇と僕『れ』~レベル上げと僕

僕はゲームをしない。
テレビゲームもしなければ、スマホゲームもしない。


そんな僕も、小学生の頃は一応人並みにはゲームをした。
3年生の頃には最初のポケモンが発売され、クラスに持っていない人はいないんじゃないかってくらいの大流行り。
僕も世の流れにのって、お年玉をはたいてポケモンを買った。
しかし、誰よりも早く飽きた。
みんな最後の敵を倒して、その先のポケモン集めを楽しみ始めている中、僕は最後の敵も倒さずにゲームボーイをそっと置いて、ポケモンマスターを目指す少年から普通の男の子に戻った。

一応、スーパーファミコンとプレーステーションも家にあった。
しかし、熱心だったのは弟で、僕は読む本がなくなった時の暇つぶしにマリオカートで遊ぶくらい。
親の目を盗んで夜な夜な熱中するなんてこともなかった。


そんなんだから、僕はロールプレイングゲームってものをまともにやったことがないまま大きくなった。
僕がロールプレイングゲームと出会ったのは大学生。
そして、僕はそこで、二度とゲームはしないと誓うことになる。


大学で軽音サークルに入り、日々、よい曲を書くために精進していた。
作詞作曲する仲間と酒を飲みながら、どうすればよい曲を書けるのかを語り合った。
そんな頃、いつもの酒盛りで、ある友人が言った。
「よい詩、メロディーを書くには、良い音楽だけでなく、それ以外の物も積極的にインプットすべきだ。」
その通り。
だから僕はたくさん小説を読むようにしている。
そう言うと、友人は言った。
「ロールプレイングゲームも小説と同じくらいの価値がある。いや、小説や映画にはない感動がある。是非やりたまえ!」
まともにやったことはないが、もしかしたら新しい発見があるかもしれない。
まあ確かにね。何事も食わず嫌いはいけない。
よし、やってみよう。
ってな具合に、友人が「最高傑作だ!!」と渡してきたロールプレイングゲームを始めることにした。


やったことはない僕でも名前は聞いたことがある、有名なロールプレイングゲーム。
いざ始めてみると、まあ確かに面白い。
とても面白いって訳ではないが、最後までやりきった時には素晴らしい何かが残るかもしれん。
なんて思いながら、不慣れなロールプレイングゲームを進めていった。
そしていよいよ、最後の敵に遭遇。
とにかく長い道のりだった。
友人が言っていた「小説や映画にはない感動」は、まだない。
きっとこの敵を倒したら、その感動を僕も味わうことが出来るのだろう。
いざ!
って、戦いを挑んだが、数ターンで僕のパーティーは全滅。
とっぴんぱらりのぷぅ。


友人が言うには、レベルが足りないとのこと。
というか、このプレイ時間でこのレベルは低すぎるとのこと。
一体何にこんな時間をかけているのか分からないとのこと。
とにもかくにも、最後の敵を倒すためには、レベル上げをしなければいけないとのこと。

僕の心はもうほとんど折れかけていたが、頑張った先にとてつもない感動が待ち受けていると信じ、レベル上げを始めた。


そして、友人に言われた最低限必要なレベルまで上げることに成功。
最後の敵に再び挑んだ。
やぁー!
結果は、またしても全滅。
あんなに時間をかけたにも関わらず、呆気なく全滅。
そして、ふと気付いた。
悪に支配されたのは実際の世界ではなく、ゲームの中の世界であることに。
彼女は悲劇の死を遂げたが、実際にそんな人は存在しないことに。
レベル上げに使った時間は、他のことに充てた方がずっと有意義だったことに。
僕のパーティーのレベルは多少上がったが、僕のレベルは一切上がっていないことに。


翌日僕は友人にゲームを返却した。
「感動しただろ?」
という友人に、僕はなんとも言えない苦笑いを返すしかなかった。


それ以来、僕はゲームをしていない。
これからもすることはないだろう。
別に、ゲームが好きな人は勝手にやればいいと思うし、「そんなくだらないことは止めろ」などと言うつもりもない。
もちろん、僕の友人にもゲームが大好きな人がいるが、僕に対して血走った目で猛烈に薦めてこない限り、なんら問題はないし関係も崩れない。
たがしかし、電車のドア横に寄りかかり、乗り降りの邪魔になっていることにすら気付かず、阿保面でスマホゲームに興じているおじさんはには、最大限の哀れみを送りたいと思う。
とっぴんぱらりのぷぅ。


『The Verve / Bitter Sweet Symphony』を聞きながら
FJALLRAVEN by 3NITY TOKYO 池守


『〇〇と僕』←過去の記事はこちらからお読みいただけます!是非!


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