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2022.08.17 あたらしい無職、ハネムーン

かつては一つの会社で定年まで働くが当たり前とされていたと聞く。到底信じられない。昔はインターネットやSNSがなく、出版物などの情報か近しいコミュニティの情報に限られていたため、一社で勤め上げなければいけないという呪縛が今よりも強かったのだろうか…などと考えながら夕方、近くの区立図書館へ向かった。久しぶりの来館だったので館内をぶらつき、気になる本を閲覧する。

学生時代に市立図書館と大学図書館の両方でアルバイトをしていた。図書館の仕組みやルールに多少詳しいのもあって、できるだけ気持ちの良い利用者であるように心掛けている。とはいっても大したことをしているわけではなく、閲覧した本は正確な場所に戻す、カウンターでは貸出、予約本の引き取り、返却など目的を言葉で伝える、閲覧席で長居しすぎない…など、簡単な心がけでできることである。棚を物色しているとアルバイトと思しき青年が溜息をつきながら本棚の奥へ消えていった。お盆明けだから返却本が多いのだろうか。頑張れ。

予約本を引き取って帰路へ。近所の回数券を持っている珈琲屋へ寄りたい気持ちがあったが、晩御飯前なので我慢した。今夜もカレー。また好き放題調味料を入れまくる。カレーに自分勝手に調味料やら香辛料やら入れまくるのはストレス発散になるのかもしれない。同世代の知人たちが週末のたびにスパイスカレーを作りはじめたのはこのため?

少しずつ読み進めていた丹野未雪さんの『あたらしい無職』を読み終えた。編集者である丹野さんの非正規雇用から無職、正社員、そしてまた無職になる過程が日記形式で書かれている。

人生においてまだ無職を経験したことはないのだが、自分の中で勝手に無職だと悲観的になるというイメージを持っていたのだな、と気付かされた。もちろんそういった場面もあるのだが、全体として丹野さん自身の面白さやフットワークの軽さで暗い気持ちにならずに読める。アグレッシブな無職、素敵。正社員の時期の描写は過去の職場の嫌な空気を思い出しウッと胸が詰まった。お互いやめてよかったですねと声をかけたい。

吉本ばななさんの『ハネムーン』も数年ぶりに読んだ。まなかと裕志、幼馴染であり恋人、そして夫婦になる2人の物語。熱海の夜の場面と、まなかのお母さんが過去を話す場面がとても好き。

吉本ばななさんの作品は沢山読んできたわけではないのだが、文章の美しさ、暖かさが身体全体に染み渡り、よく天日干ししたふかふかのふとんで眠るときや、朝一番に旅館の露天風呂に浸かるときのような気持ちよさを感じる。『キッチン』や『TSUGUMI』を再読したくなった。

ちなみに読んでいた『ハネムーン』の文庫本からお笑いオタクだった頃に観ていた「横丁へよ〜こちょ!」の栞が出てきて懐かしさに悶絶した。フットボールアワーが好きで観てたなあ。

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