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SWARRRM - 『焦がせ』 これがChaos&Grindなのか?(text by 冬のしじま)

2023年発表、7枚目のアルバム。


前作から2年というスパンは、どちらかというとライブが重視される現場主義のハードコアシーンで徹底的に楽曲主義を貫くこのバンドらしい素早さだが、ここに来てリリースのペースが上がっている(前作は3年、前前作は4年)ことは、結成から四半世紀以上を数えるベテランバンドであることを考えると、やはり非常に特異なことに思える。

キャッチーさの系譜

新作を語るに当たり、まずは話を2003年に戻さねばならない。
2023年の今「偽救世主共」を改めて聞くとその楽曲の豊かさに驚く。
初めて聞いたときは何が起こっているのか理解が追いつかないくらいの混沌としたイメージが合ったが、その実かなり表現力のあるグラインドコアを演奏している。
流石にポップとは言えないが、随所にキャッチーさがあるのだ。
冒頭「Sclience」も終盤冒頭のギターのメロディをなぞるあたり、ブラックメタルを引き合いに語るのも面白そうである。
個人的には「Herzog」のメロディがチェコのデプレッシブ・ブラックメタルバンドTristの「Stiny」にかなり似ているのが興味深い。(「Stiny」が2006年で後発)
Kapoのギタープレイも幅が広く、ピュアなグラインドコアバンドなら絶対選択しないようなフレーズも多い、というかそのようなフレーズで楽曲が構成されている。
初期からグラインドコアの限界に挑戦し、その境界を押し広げていくような志を持っていたことが理解できる。


滑らかで均整の取れた混沌としての「焦がせ -kogase-」とそれに対しての疑問


改めて新作に戻ると、頭を抱える。
SWARRRMは一貫して異端のバンドだったし、混沌の背後には挑戦的なキャッチーさが内包されていた。
しかし「偽救世主共」を聞いてこのバンドの将来を予測できた人はいないのではあるまいか。
今作を聞いて思ったのは整合性や均整にカオスは宿るのか?ということだ。
相変わらず一筋縄ではいかない楽曲、叫びながら歌うという絶技が遺憾なく発揮され、どう考えても他に追随を許さないSWARRRMである。
しかし今作あまりに堂々としていないか?あまりに整然としていないか?
はだしで大地を踏みしめてまっすぐに駆けていくような、爽快感とカタルシスがある。
まず断然に楽曲がいい。緩急があってしかしなめらかでしなやか。
気味の悪い明るさとは無縁なのに眩しい光を放つよう。
このフレーズの豊かさに驚く。こんな贅沢な使い方をしてアイディアの泉が枯れないのか心配になるほど、次から次に新しいフレーズが飛び出してくる。
かと言って奇をてらったプログレッシブさとは無縁でストレートに曲の楽しさが迫ってくる。
かっちりして光る演奏と歌メロのキャッチーさが相まって、あえていえば格好いいロックに仕上がっているのだ。
前作と比較した場合、安易に延長線上にあるとは言い難い。
ポップさの探求といえばなるほど相変わらずに深化しているが、楽曲の装いはかなり異なる。
前作では感じられた地下的なやかましさが鳴りを潜め、程よく調整された音がソリッドである。
わかりやすく耳に馴染む反面、ハードコア的なダイナミクスは減退したと思う。
その分厚さは減ったし、音の数もそう。
また前作発表後ヴィジュアル系との近似性を指摘する感想をいくつか目にしたが、今作ではヴィジュアル系を彷彿とさせる情念を込めた歌唱法はやや減ったと思う。
楽曲が光るバンドだから今作で大胆にこのように舵を取ることは理解できる。

抜群に良いのは間違いない。しかしこれがChaos&Grindなのか?


SWARRRMは変わってない


この音源を語る際にはどうしても過去の、司加入により変化を全面に押し出すより前の時代の楽曲をリファレンスしない訳にはいかなかった。
SWARRRMは変化するバンドだ。執着がないのだ。
変幻自在ではあっても、大胆に歌を取り入れても軽佻浮薄な、流行に迎合するバンドではない。
「焦がせ-kogase-」は難題だが、こういうときは何が変わってないのか?を考えたって良いはずだ。
改めて「偽救世主共」を聞くと、その表現の豊かさに気がついた。
「焦がせ-kogase-」はどうだ?
一聴して思った「ストレートなロックだ…」その感想は決して間違いではない。
でもよく聞いてみればこんな展開に溢れたロックがあるだろうか?
こんなに贅沢にフレーズを惜しげもなく使い倒すロックバンドがいるだろうか?
SWARRRMの凄まじさはポップに大きく舵を取る大胆さがあるだろう、でも長い歴史の中で培った技術が達人の域に達しているのではないか。
所作が自然すぎるけど、よく見てほしい。普通の人はこんな動きはできなくないだろうか。
あまりに滑らかだが、ここにバンドが重ねてきた歴史が層をなしていることがきっと分かるはずだ。あまりに削ぎ落とされているから一見わかりにくいのだが。
ポップさ、大胆さ、豊かな表現力は、昔から!やって!いるのだ!SWARRRMは。
この極彩色、私は理解した。これがChaos(&Grind)なのだ。
何回もいうがSWARRRMは変化を恐れないバンドだ。
批判を恐れないバンドだ。
だけどあえていうがSWARRRMは変わってない。ずっとずっと探求している。
(考えすぎるほど考えるバンドと言う意味でENDONとスプリットを出した意図を感じる)
SWARRRMは変わってない。
わかりやすくポップになったから、大胆にもキャッチーな歌メロを取り入れたから、それはおおきな変化だが表層に過ぎない。
楽曲を聞いてその変化に驚くだろうけど、よく聞いてほしい。
できれば「偽救世主共」を合わせて聞いてほしい。

文:冬のしじま
http://immorrrrtalized.blogspot.com/



焦がせ / SWARRRM (CD)




2023/11/4 SWARRRM new album "焦がせ" release show
@東京新大久保EARTHDOM

<出演>
SWARRRM (from Kobe)
kokeshi
SeeK (from Osaka)
Gensenkan
THE BORNBARFRUST (from Osaka)

<開演時間・終演時間>
開場 17:00 / 開演 17:30 / 終焉 21:15頃想定
チケット前売3000円 + ドリンク代(1杯)

早割用URL : https://tiget.net/events/268972 (枚数上限あり)
チケット予約フォーム:https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc0oZRGue3nue97Jo6aA6kVyjgfczyR0JIRR2p8qIm7evuPjg/viewform



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