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Interview with Kazu (from SeeK)

2023年に傑作アルバム『故郷で死ぬ男』を完成させた大阪SeeK、11/4のSWARRRM『焦がせ』レコ発にて東京での年内最後のライブを行う。ライブが迫る中、本作アルバムのサウンドの肝となるギタリストKazuへの初インタビューを行いました。


3LA : おつかれさまです!どうですか!

Kazu : 2023年7月のSo Hideous(US)とのジャパンツアーが終わってからずっと忙しかったです。

3LA : 以前にはVoのSuguruさんとはインタビューしたことがあるんだけど、今回はKazuくんとは初めてのインタビューなので、Kazuくん掘り下げが必要かなと思ってます。SeeKには2016年以降に加入していく流れですが、もともとバンドとはどういう繋がりがあったのでしょう。

Kazu :  Suguruと初めて会ったのがメンバー募集サイトかなんかで、それが23才くらいのときで、でもその時は連絡は取ったけどスタジオには入らずだった。その後、一瞬バンドやったりもしたけど、自分が音楽からも離れた時期とかがあってですね。2016年にSeeK加入したという感じです。

3LA : Hexis Japan Tour(2014年)のツアーの大阪場所、BearsのSeeKのライブで僕と肩組んでいた酔っ払いがKazuくんだと思っている。SeeKのライブってこんなむちゃくちゃな人もいるんだっていう印象あって、あれがSeeKの新しいギタリストだっていうのと自分の中で記憶が繋がったのはもっと後なんですけど。

Kazu : あの日はベロベロに酔っ払っていて、Hexisを観た記憶もないですけど、たぶん僕ですね。まだ3LAとかも認識していなかったと思います。自分の中で音楽的なミュージシャンシップみたいなものが芽生えたのが2016年だったし、それ以前は「音楽やりたい人」みたいな感じだったかな。

3LA : SeeK最初観た時は、ツインベース+ギター1人みたいな編成だったような気がする。

Kazu : そのときはおそらく僕がギターではないですね。

「孤独感」は常にあるかもしれない

3LA : さっそくですけど、アルバム『故郷で死ぬ男』のことを聞いていきたいです。3LAでも大きな反響が生まれた作品になっていて、SeeKのこれまでの作品ともかなり音は革新されていると思う。リリースは2023年となりましたが、制作自体はもっと前からですよね?

Kazu : だいぶ前ですね、オケを録り始めたのが2019年とかだったような気がする。コロナ化でリリースまで時間があったので、その間にミックスだったりアートワークだったり時間が使えたという感じで。
録音もやってもらったAKIRA君(PALM、M4Ⅱ studio、LM studio)が8ヶ月以上かけてミックスも突き詰めてくれました。アートワークはLow Watt Gurgler、Beta Blocker Pickupsのsethにアルバムの音源を渡してやってもらいました。補足ですが、僕はBeta Blocker Pickupsで製作してもらったピックアップを載せたギターでレコーディングもライブもやっています。

3LA : Kazuくんがギターになって、音が全然違う!サウンド面がかなり変わった!と思ってます。サウンド面の舵取りはKazuくんなんですか?

Kazu : 全員で作っているという感覚なんで。曲の大枠を僕がざっくり作って、ドラムのわっきーと2人でオケを作って、それに歌を乗っけるときにボーカルの側ともやりとりして曲の構成を変えたり。僕とSuguruとの関係性ってトラックメイカーとラッパーみたいな感じ。アルバムの曲なんかそういう感じで作っていたかな。vo側でここはもっとボーカル入れたいから尺を伸ばしたいとか。
アルバム制作当時の記憶もうっすらとなっているんだけど。

3LA : Suguruさんのほうもオケに対してフィードバックして曲も変わっていくんですね。

Kazu : そうですね、歌詞によって変わったりもするし。

3LA : 以前のSeeKの音はもっと激情感(Screamo)やenvy的ポストメタルとかの要素があったと思っていて、そういうのは薄まったなと思っているんですけど。

Kazu : エモくないってことですかね? 
曲作るときはエモいかエモくないかみたいなことは考えていないけど、曲作るときは「エモ過ぎたかな」と、自分のフレージングとか聴いてると思う。もうちょっと突き放した感じでもよかったかなとは思っているけど...。
でも僕、曲つくるときって、ただ自分が作りたい曲を作るっていうよりも、このメンバーで、このバンドやるんだったらこういう曲やったらかっこいいんじゃないか、っていう意識で作っていますね。

3LA : 「かっこいい」っていうのは、「他の人がやっていないこと」みたいなニュアンスは含まれていますか?

Kazu : そこは正直、全然考えてない。人と被ってなくて、オリジナリティがあって、そういうものを目指そうという感覚では作っていなくて、自分の中から自然に出てくるフレーズ、メロディで、かつこのメンバーで、Suguruの歌が乗って良い曲になるという感覚でしか作ってないから。
あんまり他人の音楽を聴いていないので。チェックするために一聴するかもしれないけど、愛聴するとかは最近ないので。アルバム制作の時は、完成させないといけないという使命感があったので、無我夢中で作っていた感じです。

3LA : 誰にも似ていない「孤高」というか、孤独というか。国内、海外でもあまり似ているバンドというかシーンがないところにいるような作品だと思う。海外でブラッケンドやっている人たちの音とも似ているようで違うから。

Kazu : 「孤独感」は常にあるかもしれないですね。メンバーのみんなも所謂ハードコアやっている感覚とは違うんじゃないかなとは思う。こういう売り方をしようみたいなビジョンがあってやっているわけじゃないし、合理的なものじゃないかもしれないけど、アートってそういうもんかもしれないし。
音楽的なところでいうと、バンドが3人編成(Vo+Gt+Dr)に変わったからといって音楽的にどう変わったとか自分達ではわからへんというか。編成も変わったからそりゃ変わるだろうとは思うけど、どこがどう変わったかとかは。今回のアルバムも、家で作ったものをみんなで合わせて一個の曲にしていくという作業だから。誰が曲作ってもSuguruのvoが乗ったらSeeKでしょうという気もするし。

3LA : それ自体がSeeKのカラーとも言える。

Kazu : ギターのやつが音楽的なリーダーなんやろみたいな感覚は僕らは無いです。ふわっとした感じのまま家で弾いて、それをバンドで、皆で作っている感覚。

曲の展開やフレージングで大きな”うねり”を作っていく

3LA : このアルバムの肝だと思うんですけど、ギターの重ね方とかってどういうふうに考えているんですか?めちゃ重ねているけど、幾重の層があるじゃないですか。硬い音、柔らかい音、さまざまな音色でひとつの音が作られてる。ミルフィーユというか。

Kazu : それはライブでもそうですね。ギターアンプから出す音と、それとは違うシグナルでベースアンプから出す音。僕らは社交的でもないし、前の編成時にベースが抜けたときに新しくメンバーを入れるのもすごくハードルが高かったし、Vo+Gt+Drという編成でやってみてこの感じでいけるだろうとなったときにアルバムでもこれでいこうと。
録音に関しては、ざっくり言ったらバッキング的なものはライブとかけ離れないようにはなってる。制作がコロナ禍ということもあり、録音したものをずっと聴ける時間が長かったから、後から重ねるものを考える時間も十分にあって。

3LA : 見事だなと思ったのは、盛り上がるところでの音の重ね方とか演奏で、VoとGtとDrしかいないというシンプル編成だけど曲の場面が切り替わる箇所ははっきりと表現されているし、演奏も徐々に熱が帯びていく感じも伝わってきます。

Kazu : シンプルな編成故に、弦楽器の絡んでいってみたいなことが出来ないから、曲の展開やフレージングで大きな”うねり”を作っていくということをすごく考えていた。僕の大好きなMONOとかNEUROSISとかってそういう押し引きもできるわけじゃないですか。とにかくそこで勝負するしかなかったから。

3LA : そういうところって、あまり言われてなさそうなところだと思いますね。

Kazu : 感想って人から聞く機会ってないじゃないですか。ライブ観に来ても「すごかったです!」みたいな。
水谷さんの感想みたいな、細かいところまで理解されるところまでの共感っていうのはバンドとしては求めていないといえば求めていないですからね。そういうこと言ってくれる人は熱量は高いってことなので、それは嬉しいことですけど。

3LA : 僕は他にないものを出している表現者がすごく気になりますね。「なんでこうなってるの!?」みたいな。曲の良し悪しについては個人の好み、主観的なものだと思うんだけど、音に関してはやっぱり、他にないものっていうのを生み出しているというのは一聴してわかるものなので。ロジックで詰めてそれを生み出している人もいるし、天然でやっている人もいる。SeeKはロジックはあるんじゃないかなと思うんですが。

Kazu : エンジニア目線で自分たちの音をコントロールしている人もいると思うんですが、僕らはサウンドデザインの勉強をしてきたわけじゃないし、自己流でやってきました。
ギターに関しても2つのアンプを鳴らした方が広がりがあるなとか、体感としてはあったんですが、それが正解かどうもわからへんかったし。
音の作り方もギターの弾き方も曲の作り方も全部自己流なんで....。コードや音符なんかもわからないですからね。今回のアルバムの楽曲もそうなんですけど、音楽の理屈わかっている人はわかるのかもしれないけど一般的なコードみたいなものは使っていなくて、不協和音なんだと思う。


濁った不協和音の響きがすごく落ち着く

3LA : 音楽的な勉強とかっていうのは経験あるんでしょうか?音楽に目覚めるきっかけみたいなものも知りたいなと。

Kazu : 僕は子供の頃から「おっ」って思うものって、不協和音だったんですよね。小学生とか中学生の頃って、音楽の入り口ってTVじゃないですか。よほど兄貴が凄い音楽詳しくてとかじゃない限り。
初めて凄い!って思ったのが歌番組で見たGRAPEVINEで「スロウ」っていう曲で...。いま気付いたんですが、GRAPEVINEは個人的な憧れかもしれないですね。音源も凄いけど、ライブもやばいですよ。軽音楽部とかにも入らずに、一人でそのギターがどうやって弾いてるのかわかりたいと思って、タブ譜を手に入れて練習していた。
あとNAHTの『The Spelling Of My Solution』の CDはメジャー流通だったので奈良の田舎のガキでも触れられました。歌詞カードも全曲和訳があって、それまで触れてきた歌番組の曲とは違う言葉を沢山受け取りました。

事情があって中学校いくのに1時間半以上かかって通学していて、その間ずっとイヤホンで音楽聴くのが自分の時間みたいな感じになっていて。中学時代は友達が全然できなくて、音楽聴くのと弾けないギターを弾くのだけが楽しみみたいな感じでしたね。

3LA : なるほどね、それはそういう音楽に集中していく方向に向きそうですね、確かに。

Kazu : なので、水谷さんとは違うかもしれないけど、「オタク」とか「引きこもり」とかにそういうものに近いニュアンス... 小さい頃から孤独というのはあったかもしれない。
あと中学生になった頃には、やはりアメリカの激しい音楽、Korn、Deftones、Nine Inch Nailsに触れていて、それらも影響としてとても大きいです。

3LA : その話聴くと、今の音楽性に繋がっていることに納得する。不協和音って謎が解明されていない感じがしますよね。

Kazu : 自分の心に響くコードや音が、「綺麗なコード進行」「綺麗な響き」ではないものですからね。そういうものに共感できないところがあって、濁った不協和音の響きがすごく落ち着く。そういうのが好きな人、屈折している人が多いかもしれないですね。自分も屈折してるなって日々感じるし。
僕は音楽的な教養がなさすぎて、型の中にソースを流し込んで作るみたいなのができないんだと思う。

3LA : 故に音楽性に独特のものが生まれているんだなという見方もできる。国内シーンはやっぱりジャンルがわかりやすいものが伝わりやすいんだけど、日本と海外の違いとか、海外の目線とかを考えたことってありますか?

Kazu : 日本のバンドっぽくないとか考えたこともないし、海外に向けてアウトプットしようみたいな意識でものを作ったこともない。ざっくりの曲のアイデアは僕が作ったりするけど、歌詞の世界観もあるし。

3LA :  Suguruの歌詞は全員に共有されていますか?

Kazu : ボーカルの人間が何歌っているかわからないけど、バンド演奏でとりあえずイェー!みたいなのは絶対にない。歌詞の世界観を全員で共有した上で、演奏としてアウトプットしている。僕らにとってはそれがすごく大事なこと。
それがないと同じ時間軸の中で曲のうねりを出せないですから。俺たちはそれしか出来ないですから。

3LA : ライブ楽しみです。前回SeeKが東京きた時ちゃんと観れなかったし、アルバム曲をライブで観るのも初めてなんで。一番好きなのは「黒い雨」っていう曲なんですけど。

Kazu : さすがです。あと、音無さん(Bass)が入ったことによって、アレンジはしているんですよ。レコーディングされたものとは少し違うものになっている。違うけれど、バージョン違いという程の違いではなくて、音源とライブの差異の部分を補ってもらいつつ音無さんのアーティスト性みたいなものも付加されている感じ。
音無さんはレコーディングエンジニアとして客観的な目を持ちながらも自分でも音楽をやっている人、客観性と主観性、両軸で加えてくれているという感じで、4人で演奏することでより立体感は出てくると思います。

「皆でバンド」

3LA : アルバムのアナログ盤も出ますよね。

Kazu : 流通が始まったらインフォは出てくると思います!アナログは時間がかかるから、これから詳細が出てくるんじゃないですかね。そのへんは、3LAが頑張ってくれるはず。
アナログのマスタリングもCDと同じくAudiosiegeのBrad Boatrightにやってもらいました。

あと僕、いろいろな人とやりとりしたり、こうやってインタビューもやってるから勘違いされるかもしれないけれど、バンドは僕がリーダーなわけではないですからね。みんながいるからバンドなので、その中で役割があるってだけで。バンドって良いなって思うのは、「皆でバンド」っていうのが良いなと。それは本当に思いますね。

3LA : 色々なバンドがいますからね。歌詞、バンド内で共有されてないバンドもいるし、もうバンドじゃなくて、メインメンバーで他は作りたい曲を演奏するためのサポートメンバーみたいなバンドもいるし。一人のメンバーが詰め詰めで曲作るバンドもいるし、それは時代性というところもあると思っていて。

Kazu : SeeKはそういうタイプ... 昔ながらなのかもしれないですけど器用ではないから、こういう形になってきたのかなと思いますね。スタイリッシュな、お洒落な感じでもないですからね。プロデュースされていないというか。

3LA : それが今回のアルバムに、音もそうだけど、タイトル含めてトータル的なところで表現されているのかって思いました。俺の中ではSeeKはサムライかな...。サムライってかっこいいけど、前時代というイメージもあるじゃないですかね。独特かつ、孤独な感じになっていることも納得したなぁ。
あとMVめちゃ良かったです! MVらしさもあるけど、これもよくある感じとは違う。

Kazu : MVはSuguruが具体的なビジョンを持っていたのでTEMPLEのMARCY君とGrudge Ringのしょうたろう君がやっている映像チームの協力で制作してもらいました。
イメージ映像の演者はBIRUSHANAHのISOさんに演じてもらいました。
歌詞書いているのもSuguruだから、その歌の世界観とリンクしたものが出来たんじゃないかなと思ってます。


2023/11/4(土) 3LA presents SWARRRM "焦がせ" release show@新大久保アースダム

<出演>
SWARRRM
kokeshi
SeeK
Gensenkan
THE BORNBARFRUST

OPEN 17:00/前売3000yen
TIGET: https://tiget.net/events/273590
予約FORM:https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc0oZRGue3nue97Jo6aA6kVyjgfczyR0JIRR2p8qIm7evuPjg/viewform?usp=send_form



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