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さようなら天神イムズ

またひとつ、街のシンボルが終わりの日を迎えました。

福岡市・天神では『天神ビッグバン』というプロジェクトが行われています。老朽化した商業施設の建て替えも着々と進んでおり、ここ数年でいくつもの商業施設が閉館、解体されています。そして、本日2021年8月31日をもって、天神イムズも閉館となりました。

一足先に閉館した福ビルや天神コア、ビブレにもたくさん思い出があったし、その中でイムズはどちらかと言えば利用頻度は他の商業施設に比べて少なかったけれど、私はイムズの建物が好きでした。ずっと上まで続く大きな吹き抜け、楕円形のかわいいエレベーター、螺旋状にカーブを描くエスカレーター、街の喧騒を忘れさせる落ち着いたレストランフロア。本当に美しい建物でした。買い物をしに行くというよりも、イムズという空間を楽しみに行っていたように思います。

そして、私が写真を生涯続けたいと思ったきっかけになったのもイムズでした。高校生の頃、写真部の顧問の先生に連れられ、アートギャラリー・アルティアムで開催されていた梅佳代さんの写真展『スーパーシャッターチャンス祭り in FUKUOKA』を観に行きました。2008年の7月くらいだったと思います。写真部に入部して3ヶ月ほど経った頃でしょうか。だんだんと写真を撮る楽しみが分かってきたところで、初めてじっくりと写真家さんの展覧会に足を運んだのです。そこで私はとても衝撃を受け、写真の可能性を強く感じました。写真にはこんなにも人の心を動かすチカラがあるんだ、私もいつかそんな写真を撮ってみたい。その日から私は「写真は一生続けていきたい趣味」と言うようになったのです。

そして今年の春、同じくアルティアムで同時開催されていた、梅佳代さんの『天神さま』、川島小鳥さんの『ピンクの光線』という写真展を観ました。13年前とはまた違う、だけどやっぱり強烈な衝撃と刺激を受けました。それまで私は何となくで写真を続けてきたように思います。「もっと写真が上手くなりたい」、そう思いながらも努力していませんでした。確かに今のカメラは高性能です。シャッターボタンを押しさえすれば、それなりに良い写真が撮れます。だけど、もっとカメラのことを勉強して、試行錯誤を重ねて、納得がいくまで自分の理想を追い求めていかないと、いつまで経っても写真は上手くならないんですよね。そのことに改めて気付かされて、私は真剣に写真と向き合うことを決意しました。

そして、閉館前夜の2021年8月30日。私はイムズを訪れました。そこにいるみんながスマホやカメラで写真を撮っていました。私も「これで最後なんだな」と思いながらたくさんシャッターを切りました。アルティアムで最後の展覧会『絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。』も観ました。ゆっくりと館内を歩いていると何だか涙が出そうでした。

本当に美しい場所でした。

さようなら。

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