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百合短編│後輩とのキス(里歩×理沙)

はじめまして! 或いは、こんにちは。赤い電動車椅子の詩人ミカヅキカゲリです。
創作百合短編をお届けします(o^∇^o)ノ


「やば、金谷里歩って、まんま兼家理沙じゃん!?――名前の偏差値、最強(つよ)なんだけど……」
 わたしの名刺を見るなり、笑い転げはじめた後輩にゲンナリさせられながらも思っていた。
(何故に訓読み? 最強って云う、それこそ最強のパワーワードがあるのに。なにかの拘泥(こだ)わり?)
 すぐに、思考がスリップするところがわたしの悪い癖だ。
 そう思って意識を現実に戻してみると、遂(とう)に笑い止んだ後輩が怪訝そうな面持ちでわたしを覗き見ていた。アッシュブルーの巻き毛の奥から同色の眸(ひとみ)が悪戯っぽいウィンクを寄越した。
「センパイってエロいんですか?」
(可愛い……)
 思ってしまった刹那、意味は遅れて耳朶から脳裏に到達した。思ってしまった一瞬前のわたしを呪いたい……!!
「どうして?」
「だって、センパイって自己完結する性質(たち)でしょ? 妄想が忙しいのかと思って……」
 悪びれることもなく云いきった後輩は、しかし、美しくて思わず抱き寄せたくなったけれど、かろうじて踏みとどまった。
(これじゃ、この子の云うとおりの変態だ……)
「キスしますか?」
 不敵に笑う後輩にくらくらする。
「まだきみの名前を聞いていなかった」
 云いながら、眼鏡をはずす。後輩が息を飲むのが判った。無理もない。
 わたしにとって、眼鏡はカムフラージュのためのアイテムだった。眼鏡をはずしたあんたの色気はやばい、友人連中からいつも云われる。
「七瀬ですよ。七瀬柊、センパイ」
 小首を傾げる七瀬の顎を捉えて、唇を吸う。
「ん……ふっ……」
 七瀬の吐息の色香が心地よく耳朶を擽る。



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