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ふたたび裁判所へ

前回は、何とか新しい弁護士の委任を取り付けて週末を迎えたところまで書いた。怒涛の様な一週間だったし、週末は何も考えずに過ごしたかったが、会社のパソコンの設定をやらなければならず、いやいやながら作業した(笑

さて、その次の週の月曜日は、再び調停、というか、新しい弁護士を正式に委任し、裁判所に通知する日だった。

駐車場が混むのが嫌なので、朝早く出ようと思ったが、あいにく、私の車のすぐ後ろに他の車が停まっている。朝早くに隣人を起こすのは忍びないのだが、移動してくれないと車を出せない。アパートの雑用担当?(こちらでは、ケアテーカーと呼ぶことが多い。)にお願いし、上の住人を起こし、車を移動してもらう。中々出てきてくれず、30分近くかかってしまった。インドは何事も時間に余裕をもって進めないとだめなのだ。

裁判所に着くと、約束の10時まで後30分程度あった。自分の到着を知らせると、すぐに返信があり、向こうも10時ごろには到着するとの事だった。とりあえずちゃんと連絡取れていることに安心する。音信普通だった、私の弁護士と比べるとまずまずではないだろうか。(設定基準が低い、笑)

10時過ぎぐらいに弁護士M氏は到着し、とりあえず一緒に中に入った。調停に出廷した記録に署名する。M氏はファイルをもらって、内容を改めて確認する。(注:私の分のコピーはあるが、裁判所には今までの記録が含まれている。)その後、後で呼ぶので、外で待っている様に言われた。

30分ほど経って、自分の名前がアナウンスされたので、中に入る。M氏が何やら判事に説明している。ヒンディー語なのですべては分からないが、恐らく旦那側の出廷がほぼ無い事を基に、申し立てを終わりにするように主張していると思われる。前回の説明の通りだ。よしよし。私はとりあえず神妙な顔をして、黙って立っていることにした。

それが終わると二人で一度外に出た。午後にもう一度裁判所に戻るように言われているので待つように、との事だった。M氏は他の案件もあって、別の裁判所(同じ敷地内の別の部屋、という意味)も回るので、敷地内のカフェテリアで待つように私に言った。

かわいそうなM氏は、私の裏切り者の弁護士と勘違いされ、判事に叱られてしまったそうだ。私も最初は八つ当たり同然だったので、なんだか申し訳ない気になる。

いいカフェテリアがあるから、と教えてもらったカフェテリアはこぢんまりとしていて裁判所の隅にあった。悪くはなかったし、非常に安価ではあったが、ここで何か食べるとおなか壊しそうな気がなんとなくする。ビスケットやチョコレートなどのパッケージ商品以外は避けたい。時間はあるし、座るところも他にないので、ここで待つことにしたが、しばらくたって、ものすごい数の蚊がいることに気が付いた。複数の蚊が飛んでいて、腕を振ったら触れそうな状態だ。

・・・あ、ムリ。

多数の蚊にかこまれては抵抗のしようがないので、裁判所に戻り、前のベンチで待つことにした。(インドではデング熱にかかる人が結構多い。蚊が感染源なので気を付けないといけない。)

午後になって、M氏はいくつかの書類を持ってきて、署名する様に言った。確認すると、M氏にこの件を委任する、という委任状だった。今回は私もちゃんと目を通した。前回も目は通したが、言われるままの部分はあったし、なんとなく遠慮してあまり質問もしなかったので反省している。その書類をもって、M氏だけ裁判所に入って行った。今日は、この書類を提出して日程を決めるだけなので、私は中に行かなくてもいいそうだ。

待っている間、なんともう一人の弁護士A氏に声を掛けられる。聞くと、他の件で、同じ裁判所に来ているとの事。私の離婚の件の状況を聞き、M氏にお願いすることにした、と言うと「それは良かった」と言ってくれた。

M氏は金曜日の時点でもコンサル料金を請求していたので、A氏にも支払わないとフェアじゃない。コンサル料はいくらか聞くと、「依頼として正式に受けていないので、支払いは不要」との事だった。なんてできる弁護士なんだ。チャンスがあれば恩返ししたい。

その後、手続きを終えたM氏と共に、一旦、M氏のオフィスに戻る。今日もすごい湿度だ。少し歩いただけで汗だくだが、オフィスは冷房が効いていて心地よい。二人でやっと腰を落ち着け、コーヒーを注文した所で、M氏は、「さっき、裁判所でA氏にこの件について聞かれたよ。彼にも相談してたんだって?」と聞いた。

そうだと答えると、M氏は「だから、変な事はできないのさ。何かあったら、自分の評判に傷がつく。」と私に言った。

恐らくだが、A死はM氏へのプレッシャーをかける意味もあって、裁判所内でわざわざ声をかけたんじゃないだろうか。「お前が担当している事を知っているんだぞ」と言う無言のプレッシャーを。

M氏はまともそうだが、このプレッシャーがあるとだまされる可能性をさらに抑制できる。そのつもりがあったのか、なかったのか、実際のところは分からないが、A氏には助けてもらってばかりである。私の弁護士には裏切られた気持ちで、悔しく、残念な気持ちでいっぱいではあるが、同時にたくさんの人に助けられ、みんなに守られている気もする。この世の中は本当によくバランスが取れている。

だから、私はインドを嫌いになれない。むしろ、好きだ。

M氏とは今後の方向性を話し合い、次の日程の確認をして、支払いをした上で、この日はお別れした。今回も、裁判所を出る時は、もう午後の4時を過ぎていた。

駐車場から車を出す時に、危なっかしかったのか、兄さんたちに助けられる。こちらにもお世話になってばっかりだ(笑

家に着くと、一日中外に出ていた事と、裁判に関する緊張からか、ぐったりだった。裁判所なんてところは、臆病者の自分には全然向いていない。この件が落ち着いたら、今度こそ夏休みを取るんだ。

今後の方向性に光が射して来たように思えてきたが、なんと裏切り者の弁護士から連絡があったのは、次の日の事だった。

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